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» 2005年07月13日 12時00分 UPDATE

目指せ!シスアドの達人(1):新任シスアドの理想と現実と自己満足……(第1話) (1/4)

[山中吉明(シスアド達人倶楽部),@IT]

はじめに〜編集部から

「あなたはシスアドを知っていますか?」

 システムアドミニストレータは、「企業において、部門単位〜全社レベルで業務改革のためのIT化を推進する人材の能力」を認定する国家資格であり、その資格を保持する人を指します。現在のほとんどの企業とIT化は切っても切れない関係です。従って、どの企業でも、少なからず1人はシスアド的な業務を請け負っている人がいると思われます。

 この連載では、IT化のまったく進んでいない部署に転勤してきた初級シスアドの坂口啓二を中心に、徐々にIT化が進んでいく様子を描いたフィクションです。坂口くんが、旧態依然とした体制や縦割り部署の横串などに苦労しながら、シスアドとして成長していく姿を通し、シスアドの仕事の重要性を理解していただければ幸いです。



新任地へ異動

浜崎 「みんな、おはよう。今日から一緒にやってもらう坂口くんだ」

 長身の男性を引き連れて、オフィスに入ってきた浜崎雅則課長がいった。

坂口 「初めまして、仙台支店から赴任してまいりました坂口啓二です。早く皆さんのお役に立てるように頑張りますので、どうぞよろしくお願いします」

浜崎 「坂口くんはな、仙台支店の営業成績を毎年塗り替えてきたスーパー営業マンだ。きっとわが営業1課の強力な戦力になってくれると思う。みんな、仲良くしてやってくれ」

坂口 「よろしくお願いします!」

 坂口は深々と頭を下げた。オフィスは温かい拍手に包まれた。

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 坂口は身長180cm以上の長身で、いかにもサーフィンを親しんでいるような日焼けした爽やかな笑顔が印象的だ。実際、ハワイ大学時代は4年間サーフィンざんまいだった。いまどきの若者には少ない、男気と爽やかさを感じる青年で、いわゆる“男前”といえるだろう。というと男性社員に憎まれそうだが、持ち前のばか正直さと体育会系のノリで男性社員からの人望も厚い。一方の浜崎課長は、いわゆる一般的な中年オヤジで、趣味は磯釣りとダジャレ。後者は部署中の女性社員の不評の的である。

 坂口が転勤してきたのは、中堅ビールメーカーサンドラフトビールの販売支援会社「サンドラフトサポート株式会社」の東京本社にある営業第1課だ。親会社のサンドラフトビールは、ヒット商品である「太陽のDRY・生」を武器に、果敢に大手ビールメーカーに戦いを挑んでいる成長著しい企業だ。サンドラフトサポートは、サンドラフトビール販売店の販促活動を支援するグループ企業として、国内に10か所の支店を持ち、従業員数は約500名だ。社長をはじめとした役員の半数が、サンドラフトビールからの出向者で構成されている。

 書類やノベルティが雑然と置かれたデスクが並ぶオフィスの中で、1つだけすっきり片付いているデスクが坂口の新しい席だ。仙台みやげの「笹かまぼこ」の入った袋を机上に置きながら、坂口は深呼吸して席に着いた。引き出しを開けると、黄色い付せんの付いた紙が1枚入っていた。付せんにはこんなコメントが書いてあった。

〜ようこそ、坂口さん、みんなで心から歓迎します。(^^)/

営業1課レディース一同より〜

 紙には今夜の歓迎会の場所と開始時間が書かれていた。

坂口に求められる役割

浜崎 「坂口くん、ちょっと来てくれ」

坂口 「あ、はい」

 坂口はオフィス内のミーティングブースで、浜崎課長から営業1課の組織概要の説明を聞き、自らの役割をいい渡された。東京本社・営業1課は、関東圏の販売店をテリトリーに持つ営業部署としての機能のほかに、新商品販促キャンペーンの企画・立案といった、全国の支店を統括する営業支援機能も兼ね備えている。経営企画部から下りてくる販促方針を、全支店に展開して具体的に実現していく役割を担っている。

 坂口にいい渡された役割は、来年度から導入を開始する「新営業支援システム開発プロジェクト」の推進委員だ。このプロジェクトでは、営業担当者が日々作成している各種報告書を電子化し、モバイル端末を導入して営業活動を支援するシステムを開発することになる。

 坂口は、本社への異動に大きな夢を抱いて上京してきたが、仙台支店在勤時に思い描いていた営業活動のIT化を、はからずも自分が舵取り役として進めていく立場になれたことを心からうれしく感じていた。

浜崎 「このプロジェクトは来月早々にスタートする予定だ……。まあ、まずは客先に顔を覚えてもらって、仕事の土台作りが先だな。プロジェクトはボチボチ始めてくれ。おい、聞いてるか?」

坂口 「……あ、すいません、頑張ります。ありがとうございます!」

 坂口が赴任してきた4月4日の夕刻、サンドラフトサポート社のオフィスビルがある西新宿から程なく歩くと、都庁やホテルが立ち並ぶ高層ビル街に出る。歓迎会場は、高層ビルの展望レストラン街の中にある居酒屋だ。坂口は浜崎課長の向かいの席に促され、新宿の夜景を背に腰を下ろした。浜崎課長の乾杯の後、営業1課メンバー7名が順番に自己紹介をしていき、最後に坂口があいさつした。

水元 「坂口さんって、いくつなんでしたっけ?」

坂口 「3月で30になりました」

 水元優香はまだまだ学生気分の抜けない、若手アシスタント。得意先に評判が良く、よく宴会に誘われては出撃している。大変な酒豪で、男性陣はみんな1度はつぶされた苦い思い出があるほどだ。ITにはあまり興味はないが、自分の仕事を楽にするために、無理な要請を突き付けてくる得意先に直談判して、円満に要請を退けてしまうといった営業社員顔負けの行動力で時折、周囲を驚かせる面もある。

浜崎 「独身が異動してくるって聞いてたから、女性陣も臨戦態勢だよな」

水元 「何いってるんですか課長、私たちはみんな純粋に歓迎したいだけですよ」

谷田 「そういえば、坂口さんは例の営業支援プロジェクトを担当するんですよね、システムとかって得意なんですか?」

浜崎 「坂口くんはシスアドの資格を持ってるんだよ」

坂口 「いや、まあ、初級ですけどね」

谷田 「へえ、すごいですね。初級シスアド持ってるんだぁ。……初級というからには、その上には中級とかあるんですよね?」

坂口 「いや、中級はなくて、上級シスアドってのがあります。でも、レベルがかなり高いみたいで、僕なんかはまだまだです」

椎名 「それで、シスアドを持ってると、何ができるんだ?」

坂口 「まぁ、一言でいいますと、職場のITお助けマンになれる。……かもしれないって感じっすかね」

 坂口は去年の秋に初級シスアド試験を受験した。大学時代、単位稼ぎに履修したプログラミング基礎講義を受講したことが、ITに興味を持つきっかけとなった。やがて、雑誌やインターネットから得た知識で、パソコンや周辺機器を一通り難なく扱えるようになり、仙台支店でもパソコン好きで知られるようになった。趣味だけではもったいないので形になるものを残そうと、初級シスアドを受験しようと思い立ったのだった。

 とはいえ、毎日得意先とのお付き合いで、酔って帰宅することが多く、受験票が手元に届いてから問題集を1冊買って、集中的に受験勉強すること2カ月。自分の業務成績の管理表をエクセルで作成したり、日常的に身に付いた知識も手伝って、坂口は見事一発合格を果たしたのだった。

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