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» 2006年03月21日 12時00分 UPDATE

IT戦略トピックス(1):「情報システム部」が消える日

企業がコンピュータ利用を始めた黎明期、コンピュータを担当する部署は「EDP(電子的データ処理)部」「電算室」などと呼ばれた。その後、「情報システム部」と称することが多くなったが、この部門に再び変革の秋が訪れているという。ガートナー ジャパンの山野井氏に聞いた。

[垣内 郁栄,@IT]
●IT部門の3つの役割

 「個人的には、『情報システム部』という名前は将来、なくなるかもしれないと思っている」──。

 ガートナー ジャパンのガートナー リサーチグループ バイスプレジデント 山野井聡氏は、ユーザー企業の情報システム部門(IT部門)の将来をこう解説する。企業内におけるIT部門の役割やポジションが変化し、“情報システムを統括する部門”の名称はふさわしくなくなるという。

 山野井氏が考えるIT部門の役割は、(1)チェンジ・エージェント、(2)アプリケーション・プロバイダ、(3)インフラ開発・運用管理の3つだ。

 (1)チェンジ・エージェントは「ITを駆使してビジネスモデルの変革や新市場を創出し、競争優位性の原動力となる。社内経営・業務コンサルティング」という役割を持つ。また、(2)アプリケーション・プロバイダは、自らアプリケーション開発やSIプロジェクトを指揮して、ITを活用した利用部門の現場のプロセスの継続的な効率化や省力化を実現する。

 (3)のインフラ開発・運用管理は(1)、(2)の仕組みを下支えするインフラを提供する役割。求められるのは安定し、セキュアで低コストなインフラを構築し、運用すること。山野井氏は「いろいろなベンダと組みながら最適なインフラを提供する。ユーティリティ・ブローカーともいってもいい」と話す。

3つの役割のうち、いずれかへシフト

 多くの企業のIT部門が担っているのは(2)と(3)の役割だろう。しかし、(2)と(3)が果たす役割は経営層やエンドユーザー部門からは不透明。コストだけが掛かって利益を生まない、と指摘されることもある。ただ、この3つの役割は明確に分かれているわけではないというのが山野井氏の考えだ。「いまのIT部門は3つの役割のいずれも持っている。しかし、現状の限られたリソースのうちでは、どれかにシフトしないといけない」と説明する。では、IT部門はどこにシフトすることで、企業に最も貢献できるのか。山野井氏の答えは「いま一番弱いチェンジ・エージェント」だ。

 「(ビジネスプロセス改善などの)アプリケーション・プロバイダの役割はエンドユーザーの部分に移るかもしれない。インフラの開発・運用管理は、運用を丸々アウトソーシングしてもよいということになる。組織改革やアウトソーシングが進んで、最後にコアとして残るのはチェンジ・エージェントの部分だ」。

 主としてチェンジ・エージェントの役割を持つ組織は、IT部門とは呼ばれないかもしれない。このチェンジ・エージェントが冒頭の「個人的には『情報システム部』という名前は将来的になくなるかもしれないと思っている」という山野井氏の発言につながる。「IT部門が担ってきた役割は別の組織が担うようになり、IT部門は“I”の部分、つまり情報を扱う方向にいくのではないか」と山野井氏は考える。 

IT部門に求められる「ビジネス機会の創出」

r3yamanoi02.jpg ガートナー ジャパン ガートナー リサーチ グループ バイス プレジデント 山野井聡氏

 実際に山野井氏が接する日本企業のCIOからは「経営からはビジネス機会の創出が一番求められる」との声が聞かれるという。ITのお守りではなく、情報を使った新しいビジネスモデルの創出、これがIT部門の将来のあるべき姿といえそうだ。

 理想は理想として語られるが、ITのお守りにきゅうきゅうとしているIT部門は多い。「前向きの新規投資にIT予算を振り分けていきたいが、そのためにはお守りの経費をいかに下げるかが問題」(山野井氏)。日本企業の多くでは、既存ITの運用管理に予算の6〜7割が割り当てられ、新規のIT開発は3〜4割といわれる。

 理想的なIT部門に移行するためには、運用管理のコストを削減し、新規開発の予算を増やす必要がある。山野井氏は「(運用管理コストを削減するためには)サーバ統合、アウトソーシング、インフラの効率化を進める必要がある」と説明し、「この流れは今年も継続するだろう」と予測する。「運用管理コストの削減にめどがついた企業から新しいソリューションに再投資する流れが強まる」。

 ただし、IT部門があるべき姿に脱皮するのはまだ障害がある。「ユーザー部門との意識のギャップ」(山野井氏)だ。経営層やユーザー部門はIT部門の業務内容が分からず、ITの活用が会社にどう貢献するのかが不明だ。一方、IT部門は経営層、ユーザー部門が求めるITシステムの姿をつかみ切れない。「テクノロジをどう使えばハッピーになるのか分かっていない」のだ。


ユーザー部門への歩み寄りでギャップ克服

 このギャップを解消するには「コミュニケーションの頻度を上げるしかない」と山野井氏はいう。IT部門と、経営層、ユーザー部門には相互のギャップがあるが、山野井氏の考えでは「恐らく経営層、ユーザー部門の分からないレベルの方が高い」。そのためIT部門から積極的にアプローチをして歩み寄ることが必要だという。「日本企業のあるCIOは経営層と定期的な説明会を開いている。CIOが率先して歩み寄るのも1つの方策だ」というのが山野井氏のアドバイスだ。

 歩み寄りのコツは、経営層やユーザー部門はITシステムに興味があるのではなく、いまの業務を改善し、新しい価値を生み出すことに関心があるということを理解すること。ITシステムの話を前面に出すのではなく、いまの業務においてどのような情報が必要で、ビジネスプロセスのどこにひずみがあるのかという、ユーザー部門だけが知っている情報を聞き出すことがポイントになる。「IT部門と経営層、ユーザー部門がうまくかみ合えば、IT部門の価値をアピールできるようになる。それがスタートラインだ」。

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