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» 2007年04月23日 12時00分 UPDATE

実践! UMLビジネスモデリング(1):なぜ、ビジネスモデリングなのか? (2/2)

[内田功志,システムビューロ]
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ビジネス全体を俯瞰するビジネスユースケース図

 ビジネス全体を俯瞰する図は、ビジネスユースケース図と呼ばれています。これはシステムの要求を俯瞰するユースケース図を応用したもので、意味合いはシステムのユースケース図のそれに近いのですが、対象となる範囲がシステムからビジネスに広がっています。

ALT 図2 システムのユースケース図とビジネスユースケース図

 ビジネスユースケース図を使うことで、ビジネスを俯瞰することができます。ただし、これはあくまでもシステム化を前提としたビジネスの俯瞰であり、システムと切り離したビジネスの改善や厳密な定義という視点ではありません。

 どういう視点による見える化なのかといえば、ビジネスのどの部分をどのようにシステム化するかといった命題を解決するために適した粒度でビジネスモデルを定義できる単位です。このビジネスユースケースという単位でシステム化をスムーズに議論できるようなモデルが用意されています。

 これはJavaやC#などのベースになっているオブジェクト指向が、現実の世界をモデル化してシステムにマッピングすることができるという特性を持っているからです。オブジェクト指向というと、昔から敷居が高いと思われている開発方法論ですが、Javaの普及によってわれわれはすでにオブジェクト指向と共存しているのです。

 オブジェクト指向に由来するビジネスモデリング手法を用いると、ビジネスからシステムまでをシームレスに扱うことができます。それではレガシーな世界ではここで紹介するやり方が使えないのかというと、(シームレスとまではいきませんが)実は使えないことはないのです。機会があれば紹介したいと思いますが、ビジネスモデリングという点では共通なので、レガシーシステムを扱っている方も参考にしてください。

 オブジェクト指向はシステムの開発だけでなく、われわれが暮らしている現実の世界を見える化することができる優れた手法であるといえます。また、そのためだけに利用しても十分効果を発揮するでしょう。

ビジネスユースケースの中身

 さて、「鳥の目」でビジネスユースケース図を見た後は、「虫の目」でその詳細を検討していきます。

 大きくとらえたものを細かく見ていくのですから、当然ビジネスユースケースの中身を詳細に見ていくことになります。ビジネスユースケースの中身は、ビジネスワークフローです。ビジネスがどのように流れるのか、ビジネスユースケースを単位として検討していきます。

 ビジネスワークフローの記述には、UMLのアクティビティ図を使用します。ビジネスの流れを定義するにはアクティビティ図では不十分という話をよく耳にしましたが、UML 2.0ではかなり改良されてさまざまなシーンを表現できるようになりました。システム化を考える際には、UML 2.0のアクティビティ図で十分です。ビジネスの流れを記述する図としては最近、BPMN(Business Process Modeling Notation)もよく使われるようになりました。アクティビティ図とBPMNの違いについては、回を改めて触れる予定です。

 ちなみにRUPでは、ビジネスユースケース図とビジネスワークフロー(アクティビティ図)を併せてビジネスユースケースモデルと呼んでいます。

ALT 図3 ビジネスユースケースとビジネスワークフロー

 大抵の「ビジネスモデリング解説」は、ここまでで説明を終えることが多いようです。「ビジネスの流れが分かったのだから、あとはその流れを適切に変えさえすればビジネスを改善することができる」、というわけです。しかし、現実はそんなに単純ではありません。

 定義された流れを実現するためには組織はどうあるべきか、そこで扱われている対象物はどのようなモノなのか、それらの関係はどうなっているのか──、などなどまだ不透明なことがたくさん残っています。

 結論からいえば、ビジネスユースケースを実現するために必要なビジネスオブジェクト(ビジネスを実現するために必要なオブジェクト=人やモノや概念)の構造と振る舞いを検討することになります。

 ビジネスオブジェクトの構造はビジネス分析クラス図を使って表現し、ビジネスオブジェクトの振る舞いはビジネス分析シーケンス図を使って表現します。

 ちなみにRUPでは、このビジネス分析クラス図とビジネス分析シーケンス図を併せてビジネス分析モデルと呼んでいます。

ALT 図4 ビジネス分析クラス図
ALT 図5 ビジネス分析シーケンス図

 さらに現状のモデル(As is モデル)をいかに改善して、より良いモデル(To be モデル)にするかなども検討する必要があります。また、組織をいかに見える化するかといった点も重要です。

 駆け足でビジネスモデリングについて見てきましたが、次回からこれらの点を踏まえたビジネスモデリング手法を紹介していきます。さらに、書籍「戦略マップによるビジネスモデリング」のテーマである戦略マップとの絡み、UMLとBPMNの違いとその使い分け、システム化のポイントなどについて説明してきます。

筆者プロフィール

内田 功志(うちだ いさし)

システムビューロ 代表。日立系のシステムハウスで筑波博に出展した空気圧ロボットのメイン プログラマを務め、富士ゼロックス情報システムにてオブジェクト指向の風に触れ、C++を駆使して印刷業界向けのシステムを中心に多数のシステムを開発。現在、ITコンサルタントとして、システムの最適化や開発の効率化などの技術面、特にオブジェクト指向開発に関するコンサルティングやセミナーを実施してきた。最近ではビジネスに即したシステム化のコンサルティングを中心に活動している。


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