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» 2008年05月22日 12時00分 UPDATE

現場主導で進める業務改善の手法(1):業務改善は業務の可視化から始めよう (1/2)

[松浦剛志,株式会社プロセス・ラボ]

 読者の皆さんの中には、「業務改善」に取り組んだ経験のある方がいらっしゃると思います。この業務改善と呼ばれる活動は、非常に範囲が広く、規模や内容はさまざまです。

 例えば、規模では担当者個人が1人で取り組む日々の仕事の改善もあれば、多額のシステム投資を伴う全社的な改善=経営改革もあります。内容では顧客満足度を向上させるための改善もあれば、コストダウンを実現するための改善もあります。これらは、ほんのわずかな例でしかありません。

 しかし、規模や内容が異なっても、業務改善の基本的な考え方は同じです。この連載では、業務改善の考え方を分かりやすく解説し、現場で使える業務改善の手法を紹介していきたいと思います。

業務改善とは何か

 業務改善について考える前に、まず、「『業務』とは何か」「『改善』とは何か」を考えてみましょう。この2つの定義を明確にしてチーム内で共有することにより、人によってばらつきがちな「業務改善」のイメージが統一され、議論がスムーズに運ぶようになります。

「業務」とは何か

 業務改善の対象となる「業務」とは、「インプットをアウトプットに変換する活動」と定義することができます。

 それでは、「インプット」と「アウトプット」とは何でしょう。まずはイメージのわきやすい「アウトプット」から考えてみましょう。

 例えばお客さまへのアウトプットは、それに対してお客さまがお金を支払ってくれるもの、といい換えることができます。具体的には、皆さんの会社で何がお客さまに対するアウトプットかを考えると分かりやすいでしょう。アウトプットが自動車・パソコンなどの「モノ」の場合もあれば、修理・相談といった「サービス」の場合もあります。さらには、株価・賃貸物件などに関する「情報」の場合もあるでしょう。

 では、これらのアウトプットに対応するインプットとは何でしょうか。「モノ」を生み出すための「インプット」は原材料であり、「サービス」を生み出すための「インプット」はサービスが施される前の状態を指します。なお、本連載では、労働や生産機械などについては投下資本として定義し、インプットとは別の要素としています。

 例えば、壊れた自動車がインプットの場合は、修理された自動車がアウトプットになります。さらに、情報を生み出すためのインプットは、バラバラに散らばった現象や事実ということができます。

 会社では、人・モノ・お金という資本を投下して、インプットをアウトプットに変換する業務を行っています。上記の例は、全社的な活動を1つの業務としてとらえてインプットとアウトプットを例示していますが、さらに細分化し、部門単位で業務をとらえることもできます。自動車メーカーの開発部門を例にとれば、開発部の「業務」は、過去に製造した自動車やお客さまの潜在的なニーズという情報(インプット)を、新しい自動車の設計図という形(アウトプット)に変換する活動、ということができます。同様に、課、担当者個人という、さらに小さな単位で業務をとらえることができるということも、お分かりいただけるでしょう。

 だからこそ業務とは最初に述べたように、インプットをアウトプットに変換する活動なのです(図1)。

ALT 図1 業務とは、インプットをアウトプットに変換する活動である

「改善」とは何か

 次に、改善とは何かを考えてみましょう。業務はインプットをアウトプットに変換する活動でしたから、改善を業務と関連付けて考えると、インプットをアウトプットに変換する活動において、アウトプットの品質・アウトプット産出のための費用・インプットを、アウトプットに変換する過程において、より良い状態を作り出すことと定義できます。

 つまり、ある特定の業務に関して、品質向上(クオリティアップ)、費用低減(コストダウン)、納期短縮(スピードアップ、速さ)、といういずれか、または2つ以上を実現することが改善だといえるのです。業務が改善されたかどうかは、この3つの視点で判断することになります。

業務改善とは何か

 ここまで、業務改善を業務と改善とに分けて定義付けてきました。上司から「業務改善」を命じられたなら、どの範囲の業務を、どの視点から改善すべきなのか、定義付けを明確にすることからスタートすることが肝要です。

業務改善には現状把握が必須

 業務改善とは、インプットをアウトプットに変換する活動(すなわち、業務)において、品質向上(クオリティアップ)、費用低減(コストダウン)、納期短縮(スピードアップ)のいずれか1つ以上を図ることでした。

 では、業務改善はどのようなステップに分けることができるでしょうか。

業務改善の5つのステップ

 分け方に絶対的なルールはありませんが、ここでは大きく「問題発見」と「問題分析」「解決策立案」「実行」「評価」という5つのステップに分けて考えてみましょう。なお、業務改善プロセスの詳細については次回以降に説明する予定です。

 業務改善の5つのステップすべてに共通して必要とされるのが現状把握です。しかしこのようにいうと、違和感を覚える方がいるかもしれません。

 例えば、現状把握は問題分析のステップに含まれるのではないか、とか、そもそも現状把握は別のステップとして考えるべきではないか、と疑問に思う方もいるでしょう。

 しかし実際には、それぞれのステップで何らかの現状把握が必要であったり、あるいは現状把握が前提とされていたりします。そのため、それぞれのステップで現状把握の実施が必要なのです(図2)。

ALT 図2 問題発見から評価まで、すべてに共通して必要なのが現状把握である

各ステップでの現状把握の役割

 それでは、それぞれのステップで現状把握がどのような役割を担っているか、具体的に見ていきましょう。

 問題発見のステップでは、現状把握が問題発見の契機(トリガー)になります。たまたま見ていた月次売上推移表やお客さまアンケートというごく断片的な資料から、これはまずいのではないか、という問題点を発見することもあるでしょうし、詳細な業務プロセス図面を見ていて問題点を発見することもあるでしょう。いずれにしても、問題発見のステップでは現状把握がトリガーになるのです。

 問題分析のステップでは、問題発生のメカニズムを解明するため、仮説を持って、体系的・網羅的に現状把握をしていきます。

 解決策立案のステップでは、解決策を検討するに当たり、それを実行するためにどの程度の経営資源の投下が必要か、施策の効果はどの程度か、実現可能性はどの程度かを考える必要があります。その判断材料を現状把握から得ることになります。

 評価のステップでは、解決策を実行した結果、業務が改善されたかどうかを測定しますが、解決策実行前の状況と実行後の状況を比較することで評価が可能となります。すなわち、現状把握が評価の前提になるのです。

 このように、現状把握は業務改善を進めるうえで必要不可欠なのですが、非常に難しいのです。そこで、まずは現状把握とは、そもそもどのようなものか考えてみましょう。

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