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» 2008年10月17日 12時00分 UPDATE

グリーンITコラム(7):実はグリーンITに超積極的なグーグル

いまやIT業界No.1企業ともいえるグーグル。全世界で検索機能などの各種サービスを提供するために、数十万台以上のサーバを抱え、世界中のデータセンターで運用しているという。そのグーグルがグリーンITに非常に積極的なようだ。

[栗原 潔,@IT]

 グーグルが、世界中で多数の大規模データセンターを運営していることは周知の事実だろう。同社が運用しているサーバは数十万台以上あるだろうといわれている。

 データセンターの数も継続的に増加している。「グーグルは、一般企業がサーバラックを買うような感覚でデータセンターを建設している」という某ITベンダ幹部の発言もあるくらいだ。

グーグルのデータセンターの脅威的な電力効率

 グーグルは自社データセンターにおいて、独自のハードウェアを多用していることでも知られている。

 もちろん、ハードウェアは基本的にインテル系プロセッサなどのコモディティ技術を使っており、ソフトウェアはオープンソースソフトウェア中心の基盤が稼働していることは確かななようだ。しかし、どうやらハードウェアの細かい部分については、独自仕様で外部業者に製造を委託しているようだ。「グーグルは全米第4位のハードウェアメーカーである」とは、『ウィキノミクス マスコラボレーションによる開発・生産の世紀へ』(日経BP刊)の著者であるドン・タプスコット(Don Tapscott)氏の発言だ。

 グーグルは、自社のITインフラの情報をあまり外部に出さないことで知られるが、最近、自社のデータセンターの環境適合性に関する情報を自社サイトに公表した(英文)。それほど詳細な情報があるわけではないのだが、データセンターの環境適合性を推進するうえで、重要ないくつかのポイントがまとめられている。

 これを読んで分かるのはグーグルがグリーンIT、特にデータセンターのグリーン化に極めて積極的であるという点だ。現時点におけるベストプラクティスを実行している企業の1つといってよいだろう。

 特に驚異的なポイントは、グーグルのデータセンターのPUEが、平均で1.21に達しているという点だ。

 PUE(Power Unit Effectiveness)とはデータセンター全体に供給される電力をサーバやストレージなどのデータセンター内の機器に提供される電力で割った値だ。理想的なケース、つまり、データセンターに供給される電力がすべてサーバやストレージに供給される状況ではPUEは1.0になる。

 しかし、実際にはこのような数値になることはない。マシンルームの冷却や電源の変換処理において、必ず損失が発生するからである。現実にはPUEの値が2を超えることも珍しくない。つまり、データセンターに供給される電力の半分以上が無駄になってしまっているという状況だ。

 多くのデータセンター事業者が、PUEの値を可能な限り理想的値である1.0に近づけるべく努力している。現在建設中の“グリーン化にフォーカスしたデータセンター”では、PUEの目標値を1.6〜1.8程度に置いているところが多い。また、米国EPA(環境省)のガイドラインでは、2011年におけるPUEの目標値として平均で1.7、ベストプラクティスで1.3と設定している。

 これを考えると、グーグルが達成しているPUEが驚異的な数字であることが分かる(この数字の信憑(ぴょう)性について外部からは検証のしようがないという批判はあるかもしれないが)。

独自仕様サーバを採用して積極的にグリーンIT化を図っている

 グーグルはこの極めて優れたPUEを、効率的なUPS(無停電電源装置)の採用、水の気化熱を利用した冷却などで達成しているようだ。

 そして、当然ながら個々のサーバ機器についても電力効率性向上の努力が払われている。具体的には、グラフィックチップの排除や、極めて電力効率性の高い電源ユニットの採用などである。これは、自社独自仕様のサーバハードウェアを採用しているグーグルだからこそ実行可能なことだ。

 グーグルは電力効率性以外の点でも、データセンターの環境適合性を推進している。例えば、冷却水のための工業廃水の活用、冷却水のリサイクル、サーバ廃棄時のリユースやリサイクルなどが十分に考慮されている。使用されなくなったサーバ部品の68%が別の目的に転用されており、アップグレード不可能なコンピュータ機器の多くが寄付されたり、販売されたりしているとされている。

 このように、今日の最も成功した企業の1つであるグーグルが、グリーンITに積極的であること、しかも、単にブームに便乗したというわけではなく創業時点からグリーンITに長期的に取り組んできていること、さらに、その点をマーケティングメッセージとして強くアピールし始めたことは注目に値するだろう。

 企業として高く評価されてきたグーグルも、最近はストリートビュー関連の問題などで批判の声が聞かれるようになってきた。しかし、同社のグリーンITへの取り組みはほかの企業がロールモデルとして模倣すべきものといえるだろう。

Profile

栗原 潔(くりはら きよし)

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株式会社テックバイザージェイピー(TVJP) 代表取締役 弁理士

日本IBM、ガートナージャパンを経て2005年より現職。ITと知財に関するコンサルティングと弁理士業務を並行して行う。専門分野は、ITインフラストラクチャ全般、ソフトウェア特許、データ・マネジメントなど。

東京大学工学部卒、米MIT計算機科学科修士課程修了。



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