自動化で変わる次世代の運用管理レポート 運用自動化イベント(2/2 ページ)

» 2011年03月25日 12時00分 公開
[唐沢正和,@IT]
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自動化へのアプローチは“3つのP”が重要

 3番目のセッションでは、株式会社野村総合研究所 システムマネジメント事業本部 主任の寺井忠仁氏が、同社データセンターにおける事例を交えながら、具体的な運用自動化の方法などを紹介した。

株式会社野村総合研究所 システムマネジメント事業本部 主任 寺井忠仁氏 株式会社野村総合研究所 システムマネジメント事業本部 主任 寺井忠仁氏

 同社では、20年間無停止の実績を持つ横浜第1データセンターの運用自動化に積極的に取り組み、大きな成果を上げているという。

 「自動化へのアプローチは、ピープル、プロセス、プロダクトの“3つのP”が重要だと考える。ピープルは運用現場から改善活動を行う。プロセスは自動化する前に標準化を実施すること。そして、プロダクトは自動化ツールを活用することである。横浜第1データセンターは、このアプローチをベースに運用自動化を進めた」と寺井氏は説明する。

 具体的には、自社開発したサービスデスク自動化ツール「Senju Service Manager」を活用し、サービスサポートプロセス管理の自動化を実現。「従来まではユーザーからの問い合わせ窓口は一元化されていなかったが、ツールの導入によって、問い合わせ窓口をサービスデスクに一元化した。また、ランブックオートメーション機能によって、オペレータを介さず障害メッセージを自動切分し、自動連絡する仕組みを構築した」という。このほか、新機能の仮想環境管理機能により、仮想ホストや仮想マシン、ゲスト環境の管理も効率化している。

 こうした運用自動化を実施したことで、2005年度は1システム当たり0.65件だったトラブル発生率が、2009年度には1システム当たり0.37件まで低下。さらに、「従来は、進捗確認やマニュアルの整理、社内連絡に時間が取られていたが、運用自動化後は、リリース案件や特定顧客へのスペシャル対応といった重要な業務に多くの時間を割けるようになった」と、運用自動化によってプロセスも改善し、成果が得られたことをアピールした。

2000台のサーバを運用するコツは自動化への投資

 特別講演には、NHN Japan株式会社 情報システム戦略室の佐野裕氏と手呂内大輔氏が登壇し、国内有数のオンラインゲーム「ハンゲーム」を中心とした数千台のサーバを運用管理するための自動化のポイントを紹介した。

NHN Japan株式会社 情報システム戦略室 佐野裕氏 NHN Japan株式会社 情報システム戦略室 佐野裕氏

 同社が「ハンゲーム」をサービスインしたのは2000年。当時のサーバ台数はわずか3台だったが、2003年頃から会員数が急増し、現在では約2000台のサーバが稼働しているという。

 オンラインゲームの事業規模が急拡大する過程において、システム運用管理では、(1)扱うハードウェア数の増大、(2)セキュリティ対策の強化、(3)膨大な分析データへの対応?という3つの課題を抱えていたと佐野氏は振り返る。そして、これらの課題を解消するために、重要なポイントになったのが自動化であったと言う。

 佐野氏は、「扱うハードウェア数が増大する一方で、運用管理の人員は増やすことができず、きめ細かい対応が行えない状態が数年間続いた。そこで、まずシステム全体を見える化したうえで、自動化ソフトの導入や外注業者の活用により、運用管理の自動化に取り組んだ。これによって、1万台、さらには10万台でも対応できるスケーラビリティのある運用管理体制を実現した」としている。

 2つ目の「セキュリティ対策の強化」については、従来まで属人的に行っていたセキュリティチェックを、市販のハードウェアやソフトウェアを導入することで自動化。さらに、セキュリティ専門部隊を設置し、日常的にセキュリティ対策を実施するとともに、定期的に外部からのセキュリティチェックを受ける体制を整えている。

NHN Japan株式会社 CPM室 手呂内大輔氏 ≪NHN Japan株式会社 CPM室

手呂内大輔氏≫

 3つ目の「膨大な分析データへの対応」に関しては、手呂内氏が説明。「ハンゲームのユーザーデータは3800万件、ゲーム履歴データは15億件以上にものぼる。この膨大なデータを集計する本番サーバの負荷を軽減するため、新たに分析用DBを用意し、多次元分析環境を導入した。これにより、サービス事業者からの多彩な分析ニーズに応えられる自動集計を実現した」という。

 このように、事業規模の急拡大にともなうシステム運用管理の課題を、「自動化」によって対処し、国内有数のオンラインゲームサイトへと成長した「ハンゲーム」。佐野氏は、「外部サービスも活用しながら、運用管理自動化への投資を積極的に行ってきたことが、今の成長につながっている」と締めくくった。

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