スマホは働き方を変える企業のためのスマホ徹底“活用”術(4)(2/2 ページ)

» 2011年09月30日 12時00分 公開
[井上実,M&Iコンサルティング]
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離れた場所にいる複数の人が情報を同時に共有し一緒に働く

 一方、「離れた場所にいる複数の人が、いつでもどこでも一緒に働く」事例としては、医療機関における医療画像共有による遠隔共同診療や、セールスフォース・ドットコムの「Chatter Mobile」が挙げられる。

 医療機関における医療画像共有システムは、「病院内の医用画像をいつでもどこでも見られるシステム」だ。これにより、専門医のいない夜間などに、当直医と自宅などにいる専門医が同じ画像を見て患者の状態を把握し、適切な処置を専門医から当直医にアドバイスできる環境が整う。

 事例としては、「東海医療情報ネットワークコンソーシアム」による「携帯電話による医療画像共有システム」がある。これは名古屋大学大学院医学系研究科が、「脳卒中医療と情報技術(IT)の融合を実現するためのモデルケース」として確立した「愛知県脳卒中救急医療情報ネットワーク」を発展させたシステムだ(図3参照)。

ALT 図3 東海医療情報ネットワークコンソーシアムによる「携帯電話による医療画像共有システム」。当直医と自宅などにいる専門医が、同じ画像を見て患者の状態を把握し、適切な処置を専門医が当直医にアドバイスできる

 さらに、これをスマートフォンに適用したシステムが、KDDI研究所から製品化されている(図4参照)。

ALT 図4 KDDI研究所は「携帯電話による医療画像共有システム」のスマートフォン対応版を製品化した(クリックで拡大)

 脳卒中など、適切な処置を取るまでの時間が、その後の病状に大きな影響をもたらす病気は多く、専門医の適切なアドバイスを迅速に得られることが医療の質の向上に威力を発揮する。専門医のいない過疎地医療や、診療所と病院の連携した地域医療(病診連携)においても効果的だと思われる。

 一方、セールスフォース・ドットコムの「Chatter Mobile」は、モバイル環境における社内SNSツールであり、いつでも、どこでも、社内の誰とでも一緒に働くことを可能にする(図5参照)。見た目も機能もTwitterによく似ており、書かれた情報はフォローしているメンバーで即時、共有される。Twitterの場合には人を単位とした情報共有だけだが、Chatterの場合には、商談単位、取引先単位でも情報を共有できる。

ALT 図5 セールスフォース・ドットコムの「Chatter Mobile」は、モバイル環境における社内SNSツール。いつでも、どこでも、社内の誰とでも一緒に働くことを可能にする

 例えば、営業マンが顧客から引き合いを受けたが、提案すべき内容に関する専門的な知識がない場合、この取引先用のChatterに書き込めば、メンバー全員にリアルタイムに「この取引先についての知識がない」旨を伝えられる。これにより、その場で適切なアドバイスを得ることができる。

 さらに、Chatterはモバイル環境でも使用できるため、リアルタイムに情報を伝達できる確率はPCなどと比較して非常に高くなり、必要な情報を即時、確実に伝えられる。導入した企業では、社内メール数を削減できたという副次的効果も出ている。

 同社CEOマーク・ベニオフ氏は、2010年4月に行ったイベント「Cloudforce 2 Tour Tokyo」で、「Cloud 1ではGoogleが主役だったが、Cloud 2ではTwitterやFacebookが主役。ソーシャル+モバイル+オープンがキーワードになる」と述べたが、これがChatterのコンセプトになっているわけだ。


 これからも、スマートフォンの活用により、場所の制約を排除した、柔軟な働き方が実現されることを期待したい。

参考文献
「スマートデバイスが生む商機」(まつもとあつし著/インプレスジャパン/2011年5月)
「SoftBank Days 2010〜iPadが変えるワークスタイル〜」(孫正義氏のプレゼン資料/2010年10月)
「メディネット東海」の資料(pdf)
「SmartMIMASカタログ」(KDDI研究所)(pdf)
Salesforce Chatter

筆者プロフィール

井上 実(いのうえ みのる))

M&I コンサルティング代表・コンサルタント

MBA、中小企業診断士、システムアナリスト、ITコーディネータ。第4回清水晶記念マーケティング論文賞入賞。平成10年度中小企業経営診断シンポジウム中小企業診断協会賞受賞。 著書:『システムアナリスト合格対策』(共著、経林書房)、『システムアナリスト過去問題&分析』(共著、経林書房)、『情報処理技術者用語辞典』(共著、日経BP社)、『ITソリューション 〜戦略的情報化に向けて〜』(共著、同友館)。


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