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東芝「RD」はホームサーバに進化する?2004 International CES

» 2004年01月10日 03時11分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]

 CESの東芝ブースの中で、もっとも目立つ場所に展示されているのが、「Advanced Digital Media Server」(ADMS)のコンセプトモデルだ。HDTVの録画サポート、全く新しいユーザーインタフェース、そしてPCやネットワークオーディオレシーバーにコンテンツを配信する機能を持つ、本格的なホームサーバとなる。

photo 「Advanced Digital Media Server」のコンセプトモデル。筐体はRDシリーズのものを流用している

 外観こそ同じだが、ADMSとHDD&DVDレコーダ「RDシリーズ」はコンセプトから仕様まで、大きく違う。ADMSは、Celeron/733MHzに835チップセットを組み合わせたインテルアーキテクチャを採用し、ZoranのMPEG-2エンコーダチップを搭載。HD動画の録画再生にくわえ、SD品質の動画を有線/無線LAN経由で配信できる。また、ユーザーインタフェースは、HD動画に操作画面をブレンディングするCPU負荷の高い方式だが、それでも「ソニーのPSXよりもレスポンスがいい」という。

 配信機能では、UPnP/AVとオンキヨーのNetTUNEをサポート。Windows PCや「NC-500」など対応端末に楽曲を配信できる。つまりADMSは、異なるプロトコルと複数のアクセスメソッドを統括し、相互に運用するためのブリッジとして動作するわけだ。

 それだけではない。ADMSは、ホームネットワーク上にあるNASなども認識し、中にあるコンテンツをデータベースに格納する。これにより、ユーザーはコンテンツの置かれた場所を意識することなく、1つのGUIの上でシームレスに利用できるという。東芝コアテクノロジーセンター、ホームブロードバンドシステム開発部の石橋泰博グループ長は、「キーワードは“コンテンツシェア”だ。1カ所で録画したものを複数の端末で利用できる。逆に家の中にある複数のストレージを、まるで1つの大容量ストレージとして扱える」という。同社はこれを“Mega-Disk”と呼ぶ。

photo ネットワークの概要図

同軸ケーブル&UWBでホームネットワークを構築

 また東芝は、ホームサーバと並行して、HDコンテンツを複数の端末に配信するためのネットワーク手段を開発した。CESで初めて公開された同社のUWBネットワークアダプタは、最大100Mbpsの伝送レートで見通し10メートルの伝送が可能だという。デモンストレーションでは、2つのHDTVストリームを1台のアダプタから送信し、2台の端末でそれぞれの動画を受信してみせた。

photo 使用する周波数帯やバンド幅は非公開。低消費電力と高い伝送レートが特徴で、消費電力は「製品化時にはBluetoothと同レベルにまで抑えたい」(同社)としている

 さらにもう1つ、新しいネットワーク手段として紹介されていたのが、テレビとアンテナを結ぶ同軸ケーブルを使う“Coax LAN”だ。同社は1月5日に発足したばかりの「Multimedia Over Coax Alliance」(MoCA:モカ)に参画し、宅内に敷設済みの同軸ケーブル(Coax)を最大270Mbpsの大容量伝送手段に変えようとしている。

 「HD動画配信を前提としたネットワークを考えたとき、問題になるのはやはり伝送手段だった。ワイヤレスも良いが、現行の仕様では帯域の制限があり、HD映像を同時に何本も送信することはできない。そこで、必ずTVの近くにあるアンテナケーブルに目をつけた」(石橋氏)。

 住宅の多くは1階にリビングルームがあり、当然アンテナは屋根の上だ。つまり、宅内を縦に貫く同軸ケーブルをホームネットワークのバックボーンとして利用し、その先はUWBなどの無線で繋ぐ。これにより、新たな配線の必要ない、広帯域ホームネットワークができあがるという寸法だ。

photo Coax LANとイーサネットを仲介するアダプタ

ADMSの国内投入は?

 CES開幕前日に行われた東芝アメリカ(Tohiba America Consumer Products)のプレスカンファレンスでは、同社デジタルAVグループ担当副社長のYOSHIAKI UCHIYAMA氏が「(ADMSは)2005年の市場投入を目指す」として大まかながら発売時期を示していた。ただし、日本での販売に関しては否定的な見方を示した。「現在販売されているRDシリーズは、編集機としての色が濃く、またそれが販売の推進力となっている。ADMSを米国だけの製品とは考えていないが、RDシリーズとは根本的に異なるだろう」。

 しかし、日本での販売が全くないとは言い切れないようだ。実はこのADMS、同じくCES開幕前日に行われたイベント「digital experience」のIntelブースに出展されていたが、その説明文には「Available in Japan later this year」と記されていたのだ。

photo 証拠写真

 石橋氏によると、説明文に記載されたこと自体はミスだが、検討しているのは事実だという。「われわれ開発部門は、いつでも製品化できるように準備を進めている。しかし、国内市場では“サーバ”“ネットワーク”などと難しいイメージのある製品は敬遠される傾向にあり、市場投入のタイミングを決めかねている状態だ」。製品化のスケジュールは立っていないという同氏だが、一方では「可能なら、2004年末に出荷したい」とも話していた。

 ハイブリッドレコーダーというジャンルを築き、コアなユーザー層を中心に支持されているRDシリーズ。それがADMSのような本格的なホームサーバに進化するのか。東芝は、市場を注視しながらタイミングを窺っている。

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