ITmedia NEWS >

次は600万回線 〜“強気の攻め”継続を選んだソフトバンク

» 2004年02月13日 01時32分 公開
[杉浦正武,ITmedia]

 ソフトバンクは2月12日、2004年3月期第3四半期の決算説明会を行った。第3四半期の連結売上高約1366億円に対し営業損失は66億円。当期損益も163億円の赤字だったものの、前四半期から見れば赤字幅は大きく縮小した。この結果に、孫正義社長は「大変順調だ」と満足の表情を見せた。

Photo 営業損失は、2002年第4四半期を頂点として回復傾向にある。「新年度はどのような姿になるか、多くのみなさんは容易に想像がつくのではないか」(孫社長)

Yahoo!BB事業は順調

 同社は既に、BBインフラ事業を除けば113億円の営業利益を上げている。問題はBBインフラ事業で、今四半期は営業損益ベースで179億円の赤字だった。

 もっとも孫社長は、BBインフラ事業の今後を楽観視している。理由としては、まず売上増に直結する回線数の増加が、比較的順調であること(記事参照)。2004年1月末時点で約382万回線を達成しており、今年度末までに400万回線を突破するのは確実な情勢だ。

 IP電話サービス「BB Phone」も、1月末時点で358.4万回線に到達した。「市場の9割のシェアをとっている」(記事参照)。無線LANサービスをセットにした「無線LANパック」の加入者は、約56万回線に達している。こうした高付加価値サービスを提供することで、顧客あたりの平均収入(ARPU)も月額4000円を突破している。

Photo サービスメニュー別に見た、接続回線の変化

 一方、固定費はこの1年ほど、40億円前後と横ばいに推移している。多いときは300億円を超えた顧客獲得費(初期設定費を含む)も、今四半期は250億円以下に抑えた(下写真参照)。こうした運営を続ければ、加入者が増えた分だけ、そのままBBインフラ事業の赤字が改善される構図になる。

Photo 同社が顧客獲得につぎこむ費用は巨額。もっとも、今四半期は控えたほうだ

次の目標は「600万」

 孫社長は以前から、連結での黒字化は時間の問題であることを主張してきた(記事参照)。四半期ベースでの営業黒字化が、現実のものとして見えきてた今、同氏はさらに一歩踏み込んで、「1000億円単位の営業利益を、永続的に上げる」ことを目標に掲げる。

 そのために、必要となる回線数はどれほどのものか。試算の結果、出た答えは“600万回線”だった。これを、2005年9月までに達成したいという。

 「600万回線あれば、営業利益は1200億円、EBITDAベースで1600億円の黒字が見込める」(同氏)。

 そして、この600万回線という数字は「まず間違いなく届くもの」だという。この1年間、Yahoo!BBは月間増加数が12万回線を下回ったことがない。今年度末に400万回線を突破したとして、残り18カ月で200万回線を獲得することは「特別のことをしなくても、巡航速度で可能」(同氏)と予測する。

 もちろん、FTTHの普及スピードが速まるなどすれば、Yahoo!BBの月間増加数が急激に鈍ることも考えられなくはない。しかし、孫社長はあえて「脅威は、ほとんど考えられない。(今年度末で)400万回線を宣言したときは、多少どきどきしたが、今回は全然どきどきしない」と自信を見せた。なお、600万回線を達成した後のことは、それから状況を見て考えるという。

まだ“攻め”の姿勢を継続

 孫社長は、上記のように事業の順調さをアピールした上で、今後もさらに “攻め”の姿勢を継続することを強調する。具体的には、多少の費用増につながろうとも、積極的に加入者を増やしたい考えを示した。

 「さきほどは、巡航速度で達成できる……と言ったが、当たり前のことをやったのではつまらない。どうせなら、1日も早く、前倒しで600万加入を実現したい」。“1日も早く黒字を達成したい”という考えは、孫社長の頭にはないようだ。ここ何日かは、この件をテーマに経営会議を行っていたという。

 このため、次の四半期での営業黒字化は、特に狙わない方針。「みなさんは“黒字化”と書きたいかもしれないが、事前に認識しておいてもらいたい」と、孫社長は報道陣を牽制した。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.