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“ドラえもん”を開発することの難しさ 〜バンダイ(1/2 ページ)

» 2004年03月05日 13時41分 公開
[杉浦正武,ITmedia]

 2010年までに本物のドラえもんを作る――。バンダイが打ち上げた「リアル・ドリーム・ドラえもん・プロジェクト」(RDDP)の最初の成果が、いまベールを脱ぐ。

 バンダイは3月下旬から、会話型ロボット「ドラえもん・ザ・ロボット」を販売する予定。ファンにはおなじみの声優・大山のぶ代さんの声で、約750語を話せるのが特徴だ(記事参照)。価格は、1万9800円となる。

 子供たちが夢見た“未来の世界の猫型ロボット”は、いかにして作られたのか。開発に携わったバンダイの新規事業室、愛・エンターロボチームの大江雅之サブリーダーに、開発上の苦労などを聞いた。

Photo 愛・エンターロボチームの大江氏

基本はコミュニケーション

 大江氏は、バンダイとして“コミュニケーションロボット”を作ろうという話は、前からあったと話す。

 「どんなものがいいか、と話しあった際、浮かんだのが『ドラえもん』だった。ドラえもんがうちに来て、一緒に遊んでくれる――というコンセプトで、開発することになった」。

Photo これがドラえもん・ザ・ロボット(クリックで拡大)。仕事に行き詰まったときなど、「どぉらぁえもぉ〜ん」と泣きつきたくなる?

 ドラえもん・ザ・ロボットの特徴は、やはり会話機能にある。ユーザーの音声を認識し、「ネズミ!」と言うと、「嘘でもネズミは恐いんだよな〜」と返事をする。「タヌキ!」と言うと、「やっぱりタヌキに見えるかなぁ……」と、落ち込んだりもする。

 さらなるコミュニケーションを実現するのが、体中に配備されたセンサーだ。たとえばドラえもん頭をなでると「僕も君をなでてあげたい」と返してくる。強く叩くと「痛いじゃないかー」と話すなど、強弱の区別もつく。

 目の前で大きな音を立てると、音センサーで知覚し「びっくりするじゃないか」と不満げなリアクション。傾斜センサーも付いているため、寝かせると「助けて〜、起こして〜」と叫ぶ。起こしてあげると、「うあー苦しかった」とコメントする……といった具合だ。

 付属のドラ焼き型リモコンを使えば、ドラえもん・ザ・ロボットを操縦できる(記事参照)。リモコンではまた、ゲームを楽しむことも可能。旗揚げゲームの要領で、指示に従ってドラえもんの両手を上げ下げするゲームや、大山のぶ代さんの音声を真似る「ものまねゲーム」などが用意されており、バリエーションに富んだ楽しみ方が可能となっている。

Photo 一見ドラ焼きだが、開くとリモコンになっている
Photo ドラえもんの体内。首輪の部分が、リモコンの赤外線を受ける受光センサーだ

 本体に時計を内蔵するため、「今何時?」と聞くと時刻を教えてくれる。また、ひとしきり動かして遊ぶと、直後は「体が痛いー」と訴えるが、2、3日すると「体がなまってきた」と話すなど、時間の概念を持っているという。

“ドラえもん”であることのメリットと、難しさ

 ロボットを開発する上で、“ドラえもん”であることのメリットは大きい。一番の利点はやはり、知名度の高さ。大江氏は、「ユーザーに共通認識があり、親しみやすい」と話す。

 反面、難しさもある。ユーザーのイメージを壊さないよう、なるべく原作に忠実に制作する必要があるからだ。「たとえば、頭にアンテナがぴよーんと付いていたら、それはもうドラえもんではないですよね」(笑)。

 漫画のドラえもんでは、「しっぽを引っ張ると、全機能が停止する」という設定がある(*姿が消える、とする説もあるが、本稿では機能停止するものとして扱う)。製品でも、電源のオン/オフはしっぽを引っ張ることで行うようになっている。

Photo しっぽを引くと「おやすみをもらうよ」といって機能停止する

 原作にはまた、「ドラえもんの足には反重力装置がついていて、わずかだが地面から浮いている」といった、実現困難な設定もある。

 これに対して大江氏は、「よく見てください、ちょっと浮いているでしょう?」(次ページ写真参照)。

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