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三菱がDVDレコーダー市場に再参入、「楽レコ」5機種を発表

» 2004年03月10日 18時09分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]

 三菱電機は3月10日、HDD/DVDレコーダー「楽レコ」シリーズ5機種を発表し、DVDレコーダー市場に再参入することを明らかにした。同社は、2002年11月にハイエンドのハイブリッドレコーダー「DVR-DS10000」をリリースしたが、その後撤退。しかし、需要の期待できるアテネオリンピック前に、フルラインアップを揃えて再度挑戦する構えだ。

photo ラインアップは、ハイブリッドレコーダー×3機種、VHS一体型DVDレコーダー1機種、DVDレコーダー1機種、そのほか、DVDプレーヤー一体型ビデオと単体型DVDプレーヤーも揃えた

 同社リビング・デジタルメディア事業本部の大草文夫本部長は、「三菱はブランドイメージの割にAV機器が少ない。一部のAV機器から撤退した後、三菱電機のプレゼンスを示すべきだと常々感じていた」と述懐する。もちろん、現在の市場シェアはほぼ0%だが、「話題性のある商品を戦略的に投入し、数年以内に“ある程度の地位”を確保したい」と意欲を示している。

photo 三菱電機リビング・デジタルメディア事業本部の大草文夫本部長

 なお、デジタル家電の開発・製造に関する船井電機との協業と、7月のオリンピック開幕前にリアプロジェクションテレビを投入することなども明らかにしている。

ハイブリッド型は3モデル

 「楽レコ」ラインアップの中心となるHDD&DVDのハイブリッドレコーダーは、3モデルを用意した。基本機能、デザインともほぼ共通で、異なるのはHDD容量と前面パネルの色、そして最上位モデルの「DVR-HE700」だけがBSアナログチューナーを搭載している点だ(下表を参照)。

製品名 DVR-HE700 DVR-HE600 DVR-HE500
HDD容量 250Gバイト 160Gバイト 80Gバイト
録画メディア DVD-R/-RW&HDD
EPG G-GUIDE
地上波チューナー アナログ(〜62ch)
アナログBSチューナー
実売予想価格 13万円前後 10万円前後 8万円前後
発売日 5月21日
photo 写真は上位モデルの「DVR-HE700」。ほかの2機種も基本デザインは同じで、前面パネルの色だけが微妙に異なる。本体サイズは425(幅)×330(奥行き)×72(高さ)mm
photo DVR-HE700の背面。映像出力は、D2×1、コンポジット×2、S映像×2。光デジタル音声出力もある

 DVDの録画メディアはDVD-R/-RW。録画モードは、XP/SP/LP/EPの4モードがあり、EPモードで記録した番組を8倍速記録対応のDVD-Rにダビングする場合なら「36倍速」になるとしている。先日、松下電器産業が発表した新「DIGA」の32倍速を超える数字だ。また、DVD-RW機としては初めてDVD-RAM(カートリッジなし)の再生もサポートした。

録画モード XP SP LP EP
画像サイズ フルD1 フルD1 ハーフD1 SIF
平均ビットレート 10Mbps 5Mbps 2.5Mbps 1.75bps
DVD-Rへのダビング 10分 5分 2分30秒 1分40秒
DVD-RWへのダビング 15分 7分30秒 3分45秒 2分30秒
各モードで録画した1時間番組をダビングしたときの所要時間。メディアはDVD-R(8倍速記録対応)とDVD-RW(4倍速記録対応)

 地上波チューナーはアナログ。ただし、CPRMに対応しているため、DVD-RWにならコピーワンスのデジタル放送番組も記録可能だ(ムーブ)。またEPGには、米Gemstarの「G-GUIDE」を採用しており、番組情報のなかからキーワードで番組を検索したり、過去の録画履歴からユーザーの好みを学習して表示する「おすすめ番組検索」機能などもある。

 ユニークな機能としては、「バーチャルライブラリー」が挙げられる。これは、録画した番組のデータを本体内に保持しておき、簡単に検索できるというもの。HDDだけではなく、DVDメディアも含めた点が新しい。なお、DVDメディアを識別するために、通し番号を記しておく必要がある。

photo バーチャルライブラリーの画面。番組名の左側に「HDD」「001」など録画先の情報が表示される。DVDメディアに「001」という番号を書いておけば、すぐに目的の番組を視聴できる
photo 一度検索などに使ったキーワードは「登録」しておくと、EPGの番組検索、ライブラリ内の検索のどちらでも再利用できる

電源投入後1.5秒で録画可能に

 「36倍速ダビング」や「バーチャルライブラリー」もさることながら、楽レコ最大の特徴は、“操作レスポンスの向上”だろう。特に起動の遅さは、ハイブリッドレコーダーを使っている人なら、一度は気になったことがあるはず。楽レコでは、電源投入後1.5秒で録画が可能になるという。

 「従来のDVDレコーダーでは、電源を入れてから操作が可能になるまで、10秒程度の時間が必要だった。オリンピック中継の短距離走なら、起動中に競技が終わってしまうほどのタイムラグだ。楽レコなら、電源を入れて1.5秒後には録画を開始できるため、録り逃すことが少ない」(同社)。デモンストレーションでは、他社製レコーダー(隠されていたが、田村さんの家にある機種だった模様)と並べて同時に起動させ、その速さをアピールした。

 同社によると、レスポンスの改善には、大きく分けて2つの技術が関わっているという。一つは、電源投入時の“立ち上げシーケンスの改善”。「録画やメニューなど、起動後にすぐ使う機能だけを選び出し、必要なソフトウェアを先にロードする仕組みを作った。デモの例で言えば、録画開始した後も、内部では並行して起動作業を続けていることになる」(同社)。

 ただし、ソフトウェアは動き出しても、HDDのスピンアップ時間は別だ。そこで、「スピンアップ中、録画するデータを一時蓄えておく仕組みが必要になる」(同社)。これが二つめの技術だが、詳細は明らかにされなかった。なお、三菱はこの技術の特許を出願中だ。

1枚のDVDに10時間記録

 一方、VHS一体型の「DVR-S300」やDVD単体レコーダー「DVR-T100」にもユニークな機能が盛り込まれた。たとえば、DVD一枚に最大10時間の録画が可能な新しい長時間モードだ。「HDD非搭載のモデルでは、長時間録画に対する要望が多い。そこで、従来のEPモードは6時間だったが、今回は8時間モードと10時間モードを追加した」(同社)。

photo VHS一体型の「DVR-S300」
photo DVD単体レコーダーの「DVR-T100」(左)とDVDプレーヤー「DJ-P230」

 10時間モードの場合、映像解像度はCIFサイズ、平均ビットレートは1Mbps程度にまで落とさなければならない。気になるノイズは、3次元Y/C分離や3次元DNR、デジタルTBCなどを使って抑える。

 「MPEG特有のブロックノイズやモスキートノイズをなくすためには、エンコードの前処理やフィルタ処理が重要になる。結局、画質を底上げするのは“総合的なアプローチ”であり、基本的な考え方は他社と同じ。“〜エンジン”という名前が付いていないだけだ」(同社)。

製品名 DVR-S300 DVR-T100
概要 VHS一体型DVDレコーダー DVDレコーダー
録画メディア DVD-R/RW、VHS DVD-R/RW
地上波チューナー アナログ(〜62ch)
Gコード予約
予約番組数 8番組/一年
実売予想価格 6万円前後 5万円前後
発売日 6月21日 5月21日

 そのほかのモデルの概要は下記の通り。

photo VHS一体型DVDプレーヤー「DJ-VG130」。「DJ-VG130」と「DJ-P230」は、DVD-VideoフォーマットならDVD-R/RWの再生も可能だ
製品名 DJ-VG130 DJ-P230
概要 DVDプレーヤー一体型ビデオ DVDプレーヤー
録画メディア VHS
地上波チューナー アナログ(〜62ch)
Gコード予約
予約番組数 8番組/一年
実売予想価格 3万円弱 1万3000円前後
発売日 4月26日 3月26日

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