ソニー、ビクター、松下――「HDV」をめぐる攻防(1/3 ページ)
もう先月の話になってしまうが、4月19日から22日まで、米ラスベガスで世界最大規模の放送機材展「NAB2004」が開催された。放送関係者、とくに技術系の人間にとって年に一度のNABは、江戸時代における“お伊勢さん参り”みたいなもんである。筆者も現場が忙しかった一時期、このお参りをさぼっていたが、2000年ぐらいから毎年行くように心がけている。
大手放送機器メーカーというのは、実はほとんど日米に集中している。したがってわざわざラスベガスまで行かなくても、日本にいてプレスリリースなどを読んでいれば、情報はあらかた分かってしまう。だがわざわざショーを見に行くのは、やはりそこでしかわからない人の流れや勢いみたいなもので、業界の今後がなんとなく分かるからである。
今回はNAB会場で感じた、業界における「ある流れ」をレポートしよう。
関心が集まるHDV
多くの人が何に興味があるか、というのは、本当に人を集めてみなければわからないものだなぁと感じた一つは、HDVに関する関心の高さだった。HDVをご存じない方に簡単に説明しておくと、民生用DVテープにHD解像度のMPEG-2を記録するフォーマットである。
ことの発端は、日本ビクターが昨年3月に発売した家庭向けHDTVカメラ「GR-HD1」にある。このカメラ自体はHD解像度の720Pしかサポートしていないが、HDVフォーマットではこれに1080iを加えて、昨年9月に策定された。規格の中心となっているのは、キヤノン、シャープ、ソニー、日本ビクターの4社。だがHDVロゴのライセンスは、ソニーと日本ビクターの2社が持っている。
もともとビクターとしては、コンシューマーでは720Pで十分という腹だったろう。確かにちゃんとした放送用記録フォーマットで比較する限り、720Pと1080iの差はほとんどない。画素数の少ない720Pなら、HDVでもエンコード次第では、かなり上質となるだろう。だが最終的に、規格としては1080iもサポートすることとなり、放送フォーマットとコンパチになった。
HDVはコンシューマー用のフォーマットだが、オフィシャルサイトをのぞいてみると「規格賛同メーカー」、すなわちカメラそのものではなく、編集などのアフターソリューションを提供するメーカーは、22社にも上る。この中にはプロ系メーカーも多く含まれている。
ノンリニア編集システムは、HD対応が今年の売りになるわけだが、AvidやAppleなど、HDVフォーマット対応を積極的にうたうところも多い。だが、まだHDV規格カメラと呼べるものは、ビクターの「GR-HD1」とその業務用バージョン「JY-HD10」しかないのである。そこにこれだけのメーカーが群がっていることになる。
HDVに期待する部分
HDV規格は、現状のSDTVにおけるDVカメラのような位置付けになるであろうことは、容易に想像できる。だがこのDVカメラに対する感覚も、日米では若干温度差があることを知っておいた方が、話が分かりやすいだろう。
日本の場合、操作の簡単さから、バラエティなどでタレントに持たせたり、ドキュメンタリー撮影でディレクターが撮ったりといった、「サブカメラ」としての用途が多い。中心となる撮影にはちゃんとした放送用カムコーダーを使うというのが常識であり、プロのカメラマンに「今日の撮影はDVで」というと、文句の一つも返ってくるのが普通だ。
だが米国では、意外にDVがメインカメラとして使われるケースが多い。長期ドキュメンタリーのようにじっくり腰を据えて撮影するようなものなど、ランニングコストと画質を天秤にかけて、これでOKというわけだ。特にキヤノンの「XL1S」のようにレンズ交換できるカメラは、人気が高い。
単焦点レンズをとっかえひっかえしながら撮影するというスタイルは、フィルム撮影では当たり前だ。日本ではそもそもフィルム撮影自体が少ないので、あまり一般的とは言えないが、元々フィルム撮りが多い欧米では、レンズは変えて当たり前、という考え方が根底にある。そんなことから、XL1Sを使って撮影することが一つのスタイルとして確立している。
欧米人が期待するHDVの姿は、このようなあり方のHD版というイメージなのである。だから現状のGR-HD1では、物足りなく感じていることだろう。今回NABのJVCブースでは、ハイエンドHDVカメラのプロトタイプが発表された。撮像素子にCCDではなく、C-MOSを使うというユニークな3CCDカメラだ。ガタイから見ればわかるように、完全に放送・業務向けである。
だがこの製品は、ちょっと業界人の思惑と微妙に外れているかもしれない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
「うんこ移植」でピーナツアレルギー改善、15人中6人が数粒食べられるように ヒトの実証は初 Science系列誌掲載
-
2
Gmail、他社メアドを送信元にできる機能を廃止へ
-
3
個人開発「家系ラーメンマニア」で利用者急増 対応追いつかず一部停止 「より信頼していただけるアプリに」
-
4
手術中の大地震、患者守る医療スタッフ……熊本総合病院の動画に反響 「プロの動き」「尊敬」
-
5
「ChatGPT」のデフォルトモデル、PlusとProは「Sol」に、無料版は「Luna」でテキストチャット無制限に
-
6
「プチプチ」の川上産業、「プチプチ株式会社」に社名変更 創業58年で
-
7
熊本地震で地面がずれた場所、35kmの線状に 衛星データで「変位境界」を判読 国土地理院
-
8
イーロン・マスク氏の「Terafab」、建設地決定 テキサス州グライムズ郡に168億ドル投資
-
9
写真加工アプリ「SNOW」にステマで措置命令 報酬付きでX投稿依頼、広告表示なし 消費者庁
-
10
「高学力=ストレスに耐えられる」ではない 秀才が苦しむ一方、収入・満足度が高いのは…… 医学生・医師1000人超を分析
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR