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こげばこぐほど楽しい電動自転車「B PLUS」に乗ってみました

» 2004年05月10日 18時28分 公開
[渡邊宏,ITmedia]

 これまで電動アシスト付き自転車というと、ママチャリにバッテリを付けたいかにも「買い物に便利」的なデザインが多く、敬遠する向きもあったと思う。

 この「B PLUS」はひと味違う。タカラとヤマハが共同開発したという経緯もあり、「バイクから生まれたバイシクル」というコンセプトを持つ。「乗っていて楽しい」という感覚を追求した電動アシスト付き自転車だ。

 昨年12月には、ヤマハのオフロードバイク「DT 200 R」をイメージした限定車「B PLUS DT(ビープラス・ディーティー)」が発売され、3月からは通常モデルの市販も開始された。COREDO日本橋にあるタカラの直営店「GARAGE」で試乗できると聞いたので、早速試してみることにした。

見た目はかわいいけど本格派

 B PLUSはニッケル水素電池を搭載した電動アシスト機構を持ち、1回の充電で最大31キロメートルの走行が可能。電動アシスト付きとはいえ、車両区分では軽車両(自転車)にあたるから、もちろん免許などは必要ない。だが、そのスタイルはオフロード用バイクを連想させるものだ。

 全長は約1.4メートルと小柄で、最低適応身長は139センチと子供でもOK。小柄な車体に合わせてタイヤもフロント18/リア20インチが使用されている。このサイズは折りたたみ自転車に多く使われるサイズよりもやや小さめで、多くの自転車が採用している26インチや27インチのタイヤと比べるとかなり小さく感じる。

photo B PLUS(グリーンメタリック)。サドル高は710ミリ〜870ミリの間で調整可能。一見小さく見えるが、身長175センチの筆者が乗って苦にならない 

 アシスト機構の操作はハンドル左側のスイッチで行う。「ON」「OFF」「HIGH」の切り替えが可能で、「ON」よりも「HIGH」の方が強力にアシストしてくれる。ハンドルの右側はギアチェンジ用のグリップが設けられている。

photo ハンドル周り。ハンドル自体の高さ調整も可能で、これなら大人から子供までバッチリ
photo バイクのタンクをイメージした小物入れ。スズキのACROSSみたい(バイク好きしか分かりませんね。ごめんなさい)
photo ペダル・ハンドル・サドルを下げればこんな感じに折りたたみも可能。車のトランクにも十分入る大きさだ

 左グリップ下部にはバッテリの充電状態を示すランプが設けられている。ユニット自体はヤマハの電動ハイブリッド自転車「New PAS」と同一のものを使用しており、信頼性も高い。

 フル充電までの充電時間は約1.8時間で、電気代は約10円。1回の充電で最大31キロの走行が可能なので、約30キロ/10円。バイク的に考えてみると、ガソリン1リットルが100円として約300キロ/リッター。“おそば屋さんのカブ”どころではない脅威の低燃費だ。

 もっとも、人間がこぐことも必要なわけで(自転車なんだし)、疲れて道中ジュースを飲んだりするだろうから、実際の燃費はこれより下がるかもしれないが……。 

自然なアシスト力にビックリ。想像以上に楽しい

 では、早速ペダルを踏み込んでみる。実は筆者、限定解除までしているくせに自転車は3年前に盗まれてから全く乗っておらず、電動アシスト自転車に至ってはまったくの初体験。いざ試乗となったら、ちょっとドキドキしてしまった。

 まずはアシストOFFで走り出す。一般的な自転車と比べてホイールが小径なためか、踏み込んだ量に比べて前に進む量がやや少ない気がする。しかし、普段から折りたたみ自転車に乗っている人ならば違和感なしに乗れるだろう。

 アシストのスイッチを「HIGH」に入れ、ギアを3速(高速側)に入れつつペダルを踏み込む。すると予想外のスピードが自然に出る。踏み込んでいる感覚と出ているスピードが感覚的にはかみ合わないのだが、それが非常に楽しく、自然と顔がほころぶ。

 スピードが出るといっても過剰なアシストではなく、誰かが後ろを軽く押してくれているような感じだ。これは文句なしに楽しい。

photo 日銀の近くで一休み。ツツジに映えるB PLUS

 アシストには「ON」と「HIGH」が用意されているが、平地や下り坂では「ON」を、上り坂では「HIGH」を選択するとよいそうだ。ONとHIGHを切り替えながら試乗してみると、はっきりとアシスト力の違いを感じる

 一番違いを感じるのが発進時。HIGHに入れておけば、ギアが3速のままでもこぎ出した瞬間に「グンッ」とアシストが働いて、ペダルを踏み込む足をサポートしてくれる。「ほんとに3速入ってる?」と思ってしまうぐらいだ。ONだと「重いかな?」という感じで、OFFだと普通の自転車と同じく重い。

 HIGHよりもONのほうが消費電力が少ないので、普段乗るときにはONにしておき、道の状態によってギアを切り替えていくのがよいようだ。もちろん坂を上るときやバッテリの残量を気にしないでいいときにはHIGHを選択すればよい。

 アシスト機能の使い勝手を確かめながら、さらに試乗を続ける。

 スピードを出すとコーナリング時にやや不安定な感じがするが、これは自転車自体が小柄なのと、筆者が普段自転車に乗り慣れないせいだろう。10分もしないうちに慣れることができた。

 ただ、フロント18/リア20インチというタイヤサイズや車体の大きさ(全長約1.4メートル)、バッテリの最大航続距離を考えると、長距離のサイクリングや本格的な自転車ツーリングに向く製品ではないだろう。

 今回試乗したように、町中でのちょっとした移動や、最寄り駅までの通勤手段、休みの日に車に積んで出先でサイクリング、といった用途に向く自転車だと感じた。車体が小さいので、オフロードバイクに乗った経験がある人ならば、“リーンアウト”しながら車体を振り回すのも楽しいかもしれない。

photo 銀座まで足を伸ばしました

“楽しい乗り物”を形にしたらB PLUSになった

 なぜ、B PLUSはオフロード用のバイクを丸くデフォルメしたようなスタイリングになったのか。

 同社の池辺陽一氏は「電動アシスト自転車というとメインユーザーは主婦や女性で、市場としてはニッチなもの。B PLUSは既存のユーザー以外の男性や子供も視野に入れ、将来的にはマスを狙った製品です」と述べ、「新しいユーザー層を開拓するため、乗り物としての楽しさを伝えることを形にしたらあの形になりました」と説明してくれた。

 つまり、B PLUSは「楽に運転できる」という機能面からのアプローチではなく、「運転自体が楽しい」という感覚を前面に押し出し、これまでの電動アシスト自転車が対象としていない層へアピールする製品なのだ。

 その「運転自体が楽しい」という感覚に加え、「子供も乗れる」「大人の所有欲も満たす」という条件を備えるべくデザインされたのが、バイクのようなルックスの小型車体に9色のカラーバリエーションを持つ電動ハイブリッド自転車「B PLUS」というわけだ。

photo カラーバリエーションも豊富。塗装はヤマハによって行われており、同社製バイクと同様の塗装が施されている

 B PLUSは現在、全国170店舗(5月10日現在)で取り扱いされているほか、ヤマハのPAS取扱店でも購入することができる。出足は好調だそうで、販売店も今後随時増加するそうだ。GARAGEでは随時試乗できるほか、公式サイトでは試乗イベントのスケジュールがチェックできる。

 価格は11万3400円。自転車と考えるとやや高価だが、バイクの楽しさと自転車の気軽さを兼ね備え、そのスタイリングから所有欲も満たしてくれる1台。原付買おうと思ってたけど、こっちの方が欲しいなぁ……。

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