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» 2004年06月21日 20時16分 UPDATE

PCを「おもちゃ」と見る韓国人、「情報ツール」と捉える日本人──ネットゲーム普及のカギとは

オンラインゲーム先進国・韓国で第一線の研究者として知られる魏晶玄氏は、各国の市場の発展性を3つのキーワードから測ることができると講演。日本は成長著しい韓国や中国と正反対の状況になっており、「オンラインゲームが普及しない理由が一目瞭然だ」と話す。

[中嶋嘉祐,ITmedia]

 「オンラインゲームは、韓国や中国、台湾を中心に成長した新しい産業。日本や欧米といった先進国よりも、アジアや南米で早期に浸透するのではないだろうか」──ブロードバンド推進協議会が6月19日に開催したオンラインゲーム専門部会特別講演会で、ソウル中央大学経営戦略学科の魏晶玄(ウィ・ジョンヒン)助教授は、そう指摘した(関連記事参照)。

 「世界で一番オンラインゲーム業界を知る研究者」と紹介された魏助教授。いまだ限られた規模にとどまる日本のオンラインゲーム状況を、第一線の研究者らしく具体的に分析してみせた。

photo 魏晶玄氏(ソウル中央大学経営戦略学科助教授)

 縮小気味ながら日本のゲームソフト市場は約3000億円と巨大。しかしそのうち、オンラインゲーム市場は150億円と、5%を占めるに過ぎない。

 これに対し、韓国や中国はそれぞれ800億円、400億円ほどの市場を形成しており、さらに成長中。世界に誇るゲーム大国の日本だが、中韓のオンラインゲーム熱に比べると温度差は明らかだ。

 現状を読み解くカギとして、魏助教授は3つのキーワード「先行する家庭用ゲーム機市場の規模」「PCの操作能力」「海賊ソフトの流通具合」──を挙げる。日中韓を比較すると、この3項目で違いが際立ち、「日本でオンラインゲームが普及していない理由が一目瞭然だ」という。

photo 日中韓の3国比較

韓国人は家庭用ゲームの操作がめんどくさい

 その理由とはこうだ。

 まずユーザーは、一度何かに慣れてしまうと、新しいものになじみにくいという傾向がある。魏助教授はこれを「経路依存症(path-dependency)の問題」と呼ぶ。日本では1980年代以降、家庭用ゲーム機が広く普及。1990年代に始まったPC中心のオンラインゲームが浸透しない理由になっているという。

 例えば家庭用ゲーム機に慣れた日本のユーザーは、キーの数が多いPCの操作を難しいと思いがちだ。逆に韓国ユーザーは、少ないキーを組み合わせて操作する家庭用ゲームこそ面倒だと考える。韓国では最近になるまでPlayStation 2などの日本製家庭用ゲーム機の輸入が制限されており、複雑な操作をショートカットキー一発で指示できるPCゲームに慣れていたという背景もある。

韓国では「PC=おもちゃ」、日本では「情報ツール」

 このため日本でオンラインゲーム市場を普及させるには、「ネットワークに接続する家庭用ゲーム機の数が増えるのを待つか、あるいは若年層に対するPC教育を見直さねばならない」という。

 韓国ではPCがゲーム用の玩具として使われており、自然にPCと触れ合う環境が整っている。子供はゲームを遊ぶためにPCを使い始め、宿題の調べ物をするためにWeb検索を学び、次第にメールなどもできるようになる。韓国ユーザーにはPCに対する恐怖感がなく、「不具合が発生するのは当たり前」だと考え、新しい使い方にも積極的に飛びつく。

 一方の日本では、PCは「情報ツール」。仕事や勉強を効率的かつインテリジェントに行うためのツールとして普及してきた。PCに対する恐怖感も強い。不具合を恐れ、ミスを起こさないことを第一に考える。

 魏助教授によると、この違いはネットカフェで顕著にあらわれる。韓国では友達と大騒ぎするゲームセンターのような場だが、日本人は黙々と検索やメールにいそしんでいる。

 「韓国のような自然にPCになじませる仕組みが必要だ」(魏助教授)。

欧米よりも南米の方が普及の見込みあり?

 さらに海賊版ソフト市場の規模も関係してくる。

 海賊業者が横行する国では、パッケージソフト販売を中心とする家庭用ゲーム機市場が育ちにくい。パッケージソフトは海賊版が横行しやすく、ゲーム会社が参入に慎重になるためだ。

 このため「経路依存症」の壁が生まれにくくなり、PC用オンラインゲームも受け入れられやすくなる──ということになる。

 日本では海賊版ソフトはあまり大きな問題になっていないが、韓国では1980年代後半に社会問題化。中国では現在、店頭販売されるソフトの96%が海賊版だという。

photo 中国の海賊版市場(IIPA 2004年CHINA REPORT)

 最近、ラグナロクオンラインなどの有力オンラインゲームが南米への進出を始めた。南米も韓国や中国と同様、海賊版が問題になっている地域だ。

 「先行する家庭用ゲーム機市場の規模」「PCの操作能力」「海賊ソフトの流通具合」。3つのキーワードから考えると、「南米は韓国や中国と似た環境。対して米国やカナダ、欧州は日本と同じような状況だ」と魏助教授は指摘する。このため欧米より南米のほうがオンラインゲームが普及する可能性が高いのではないかとみている。

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