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» 2004年08月13日 16時00分 UPDATE

劇場がある暮らし――Theater Style 液晶プロジェクターの常識覆す高画質――エプソンD5パネル (1/3)

プロジェクター導入/買い替えを狙うユーザーにとって気になるセイコーエプソンの次世代液晶パネル「D5」。諏訪にある同社のデバイス開発拠点を訪ね、D5シリーズの進化のポイントを追ってみた。

[本田雅一,ITmedia]

 セイコーエプソンは先日6月28日に、プロジェクターおよびリアプロジェクションテレビ(リアプロTV)で利用される高温ポリシリコン(HTPS)液晶パネルの次世代技術「D5」シリーズの開発に成功し、今年第3四半期からサンプル出荷を開始するとアナウンスした。多くの現行液晶プロジェクター/液晶リアプロTVに採用されているD4シリーズの後継となり、スペック上の値はコントラスト比で50%、開口率で20%の性能向上を果たしている。

 量産出荷は来年3月以降なので、今年年末商戦の各社新製品には間に合わないものの、プロジェクター向け液晶パネルの生産で74%ものシェアを持つエプソンの次世代デバイスは、プロジェクターの導入/買い換えを検討しているユーザーには大いに気になる存在だろう。長野県・富士見町にあるセイコーエプソン南諏訪事業所のHTPS液晶パネル生産拠点での取材を交えながら、D5シリーズの進化のポイントを追ってみたい。

液晶プロジェクターの常識が通用しない高画質

 まだサンプル出荷も行われていないD5パネルだが、エプソン南諏訪事業所には既に試作パネルを用いた試作機が用意されていた。

photo D5試作パネルを搭載したEMP-TW200ベースの試作機

 エプソンはプロジェクター製品の事業も行っているが、プロジェクター製品の開発は長野県松本市の島内事業所で、南諏訪ではコンポーネントデバイスとしてのHTPS液晶パネルの開発・生産が行われている。両事業は完全に分離されており、エプソン製デバイスを利用する他社製品とエプソン製プロジェクターは、同時期に同じ情報、同じ取引条件でビジネスを行っているという。今回、取材したのは、製品としてのプロジェクターではなく、あくまでもD5パネルを開発している南諏訪の部隊だ。

 デモはEMP-TW100(D4の前世代にあたるD3パネル採用ホームシアター向けプロジェクター)と、現行モデルEMP-TW200にD5パネルを組み込んだ改造試作機の比較で行われたが、それは従来の液晶プロジェクターの常識を完全に覆す、驚くほどの高画質だった。

 HTPS液晶パネルはランプの光をカラーフィルターに透過させて投影するが、これまでは液晶シャッター部からの光漏れを遮断することが難しく、高いコントラストが得られないとされてきた。このことはビジネス向けで利用されるデータプロジェクターでは問題とならないが、映画など映像作品を投影する家庭向けでは“液晶プロジェクターの問題点”として常識になってきた。

 ところが、デモルームで見たTW200改は見事にブラックが深く沈み込み、暗部が光漏れで明るくなる、いわゆる“黒浮き”がほとんど感じられなくなっている。取材に応じてくれたセイコーエプソンTFT事業部TFT設計技術部長の小池啓文氏によると、試作段階で実測1500:1のコントラスト比を実現しているという。

 TW200の光学系はD4パネル時で1000:1となっており、デバイスレベルのコントラスト比が1.5倍(D4の500:1がD5では750:1)になっていることを考えれば、意図した通りの性能が試作セットでも出ていることがわかる。小池氏は「最終目標はEMP-TW500の1.5倍となる1800:1」と話す。その高コントラスト比は、スクリーンに映写された映像を見るだけでもわかるだろう。難解なリクツや感想文よりも、D5の凄さは写真で見るに限る。

photo 左がTW100の映像、右がTW200改の映像

 来年春のD5出荷以降は、液晶プロジェクターのバイヤーズガイドを書き換える必要があるかもしれない。液晶プロジェクターにおいて、黒浮きを最大の欠点とする必要がなくなるからだ。

 加えて光漏れによるコントラスト低下が抑えられたことで、漏れた光がスクリーンを照らし、色純度が低下する問題もクリアできる。実際、高彩度領域における色相の再現性は、一見してD4採用機よりも上がっていることが見て取れた。開口率の向上による透過率アップは、ランプ発熱の抑制、もしくはより平坦に光源スペクトルを整えるためのプリフィルターなどに割り当てることも可能だ。

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