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Webキャスト放送は“放送機関”か?――文化庁、著作権分科会国際小委員会を開催

» 2004年09月03日 00時07分 公開
[渡邊宏,ITmedia]

 文化庁は、法制問題小委員会に続き、文化審議会著作権分科会に属する小委員会の一つである国際小委員会の第1回審議を公開で開催した。

 この国際小委員会は、著作権に関する国際的なルール(条約など)作りへの参加や、アジア地域との連携強化、海外生産される海賊版対策について審議を行う委員会。今年度の第1回となる今回は主査の選出が行われたほか、WIPO(世界知的所有権機構)で議論されている「放送機関に関する新条約」(以下 放送条約)や、アジア諸国との著作権に関する連携をどのように進めていくのかなどについて、意見が交わされた。

 このうち放送条約に関しては、今年4月にSCCR(WIPO 著作権および著作隣接権に関する常設委員会)から「各国提案をまとめた条約案」(以下 条約案)が提示されており、その後のSCCR会合で、さらにいくつかの論点が洗い出されている。

 その論点とは、「“放送機関”をどう定義づけるのか」「放送機関が受ける保護の適用範囲をどう定めるか」「“再送信権”の対象をどう定めるか」「放送における暗号解除技術を条約として保護すべきか」など。今回の審議でも、こうした論点について各委員が意見を述べた。

 「Webキャスト放送局など、いわゆる放送機関以外の放送局をどう見なすかには熟考が必要だ」(石井亮平・日本放送協会マルチメディア局著作権センター担当部長)。

 「2000〜3000人のアクセスでパンクするかもしれないWebキャスト放送局と、何十万人、何百万人を相手にする放送局に同じ権利や義務を与えるのはおかしい」「暗号解除技術の保護については、まず前提としてアクセス権について議論を重ねるべきだ」(山地克郎・ソフトウェア情報センター専務理事)

 「欧州と米国で温度差があるなど、IPマルチキャスト放送の普及度合いはまちまち。“新しい放送スタイル”がこれから育つことを視野に入れた議論を望みたい」(橋本太郎・ソフトバンク・ブロードメディア代表取締役)

 このように、参加委員からは慎重な議論を望む声が多く聞かれたほか、「文化庁は、著作権上において通信と放送を明確に区別してきたはずだ。しかし、条約案では双方を融合させる方向にある」と、条約案と文化庁の方針にズレが生じていることを指摘する委員の声も聞かれた。

 なお、国際小委員会の主査には道垣内正人氏(弁護士・早稲田大学教授)が選出された。委員会は同氏を含め19人で構成されている。道垣内氏以外の委員は以下の通り。

 石井亮平氏(日本放送協会マルチメディア局著作権センター担当部長)、上野達弘氏(立教大学助教授)、上原伸一氏(朝日放送東京支社総務部専任部長)、奥邨弘司氏(神奈川大学助教授)、久保田裕氏(コンピュータ・ソフトウェア著作権協会専務理事・事務局長)、児玉昭義氏(日本映像ソフト協会専務理事・事務局長)、菅原瑞夫氏(日本音楽著作権協会業務本部副本部長)、大楽光江氏(北陸大学教授)、高杉健二氏(日本レコード協会法務部部長)、田嶋炎氏(日本民間放送連盟デジタル推進部主幹)、茶園茂樹氏(大阪大学教授)、橋本太郎氏(ソフトバンク・ブロードメディア代表取締役)、前田哲男氏(弁護士)、増山周氏(日本芸能実演家団体協議会実演家著作隣接権センター法制対策室室長)、松田政行氏(弁護士・弁理士/青山学院大学教授)、森田宏樹氏(東京大学教授)、山地克郎氏(ソフトウェア情報センター専務理事)、山本隆司氏(弁護士)

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