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対談 小寺信良×津田大介(1)――「CCCDはみんながやめたいと思っていた」特集:私的複製はどこへいく?(1/3 ページ)

» 2004年10月14日 16時53分 公開
[渡邊宏,ITmedia]

相次ぐCCCD離れは、行き過ぎた著作権保護への反動の象徴か?

――エイベックスがCCCDの弾力運用を発表しましたね(注:対談が行われたのは9月17日)。

津田大介氏:エイベックスの依田さんが退任して松浦さんを中心とした新体制になるとき、CCCDから撤退する方向に行くということは聞いていたんです。でも、こんなに早く弾力的運用という話になるとは思ってませんでした。今後、段階を置いて徐々に撤退するのか、このまま(弾力的運用で)いくのかはまだ分からないですけれど。

小寺信良氏:僕も前社長の辞任を聞いたとき、かなり状況が変わるだろうなと予想しました。彼は日本レコード協会の会長もしていましたからね。

津田:レコード業界的には、CCCDをやめたくてやめたくて仕方がないという雰囲気になっているんだと思いますよ。売り上げは伸びないし、ライセンス料も払わないといけない。イイコトなんてないですよ。本当に。それなのに、消費者の反感買っちゃってますから。

 一番の問題は、レンタルCDをMDへコピーすることが問題なしとされていることでしょう。CCCDを導入しても、結局は意味がないんですよ。MDしか使っていない(カジュアルコピー)ユーザーには関係のない話なので。

――完全撤退ではなくて、アルバムタイトルごとにCCCDにするかしないかを考えていくとのことですが。

津田:売れ筋アーティストはほぼCCCDをやめるみたいですね。ただ、原盤権の問題やアーティストや事務所が希望した場合、CCCDでリリースされるものもあるみたいです。基本方針としては撤退ということなんでしょうが。

 (CCCDを運用しないという方向は)喜ばしいことではあるんですが、一番最初にはしごを掛けておいていろいろなところが乗っかったら勝手に外すのか、と(笑)。ちょっと無責任ですよね。CCCDに賛同してたくさんの作品をCCCD化したほかのレコード会社はどうするんでしょう。

小寺:最近の裁判(の判例)とかでもそうなんですが、著作権保護がやや行き過ぎた状況から戻ってきているところなんだと思います。(エイベックスの一件は)そんなところを象徴する事件なのかなとも思いますね。

津田:レコード会社的には、輸入権の問題がおこったとき、インターネットを利用した、まっとうな形での反対運動が盛り上がりましたよね。反発の仕方はいろいろでしたけれど、高橋健太郎さんらが先頭に立って附帯決議をつけたり、(還流盤ではない)洋楽の輸入盤を売れなくなったら輸入権を廃止するという口約束も取り付けました。

 あれにはレコード会社としても相当ヘコんだというか、「俺ら、こんなに嫌われてまで輸入権を推進したり、CCCDをリリースしたりすることはないいんじゃない?」という空気が生まれたみたいです。インターネット上の意見と大多数の意見はイコールではないですが、気にはなるみたいですよ。

小寺:調査しやすいし、統計も取りやすい。

津田:昔と違って、普通の人もインターネットをしてますし。

――声が届きやすい状態になっているんでしょうね。

小寺:僕もコラムの中で問題提起をしたことがあるんですが、ユーザーからの意見の吸い上げっていうのは大事だと思いますね

津田:CCCDにしても輸入権の問題にしても、消費者団体というのは力がないものなんですよ。なぜかと言えば、彼らにはもっと大切な問題があるからです。著作権というのは、ある意味、最も消費者運動とは遠いところにある問題ですから。仕方のないことなんですが、こうした問題に対して不勉強な部分が出てきてしまう。

 そうなると、懇談会に呼ばれても用意されている想定問答でかわされちゃうんですよ。だから、音楽ファンは消費者運動的なものに期待するのではなくて、Blogとかでゆるやかな情報交換を行っていって、自分達からジワジワと見えない圧力をかけていくほうが効果的じゃないかと思いますね。

――Blogerの人たちが状況を監視していこうという動きを見せています

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