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ソニーの「QUALIA 001」って何?インタビュー(3/3 ページ)

» 2005年02月07日 13時45分 公開
[本田雅一,ITmedia]
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 もっとも、QUALIA 001の価格(税込み52万5000円)を考えれば、同じDRC-MFv2を搭載したベガHVXシリーズに買い換えても結果は同じかもしれない。画質向上だけが目的ならば、一部の代替が効かない機器を持っているユーザー以外は、買い換えの方が効率はいいだろう。

 しかし近藤氏は、QUALIA 001は単に画質を上げるだけでなく、HDソースやHD対応ディスプレイを用いて新しい映像の楽しみ方を提案する商品だと話す。そのためにQUALIA 001には、映像を自由にズーム、パン、チルトできるクリエーション・ビューという機能が搭載されている。

 この機能は、DRCの機能を用いて高品質に映像の一部を拡大したり、その位置を動いたりといった処理をリアルタイムで操作するもの。HD映像にはSD映像よりも多くの情報が記録されているが、その一部分を拡大することで新しい発見ができる場合もある。

photo 普通どおりの演奏会に見える映像(左)だが、クリエイション・ビューで拡大するとバイオリンの女性が笑っているのが発見できる(右)

 「HD映像は見える風景の一部を切り取ってカメラに収める必要がない。元々、情報量が多いため、風景全体を広角で収めればそこに見える多くの情報が収まってくれる。固定画角で全体を撮影しておき、後からクリエイション・ビューで必要な場所を拡大してみるといった使い方も可能だ」(近藤氏)

 また、高画質化や映像に対してインタラクティビティを付加させる機能を“クリエイションボックス”として抜き出し、進化可能なものとすることで、継続的に価値を提供できるとも近藤氏は述べる。

次世代でも継続的に高い付加価値を

 映像を取り巻く状況は、決して連続的に変化しているわけではない。SD放送からハイビジョン放送へ、アナログテレビから固定画素のデジタルテレビへ、DVDから次世代光ディスクへ、DVからHDVへ。また映像機器を構成する各機能は、すべてが同じ速度で変化するわけではない。たとえば映像処理のアルゴリズムや解像度が不変でも、映像機器を接続するインターフェイスのトレンドは変化する。

 これらに対応していくため、QUALIA 001には機能拡張を行う端子が設けられ、追加的に機能を増やせる構造になっている。たとえばQUALIA 001にはHDMI入出力が設けられていない。ところが次世代光ディスクにおけるパッケージコンテンツは、HDCPに対応したデジタルインターフェイスへの出力しか許していない。つまりQUALIA 001はそのままでは使えない事になる。

photo QUALIA 001の背面端子部。HDMI入出力は設けられていない

 しかし拡張ボックスのサポートで、HDMI入出力を追加したり、あるいは1080/60iの映画放送を1080/60pに変換出力するといったファンクションを追加可能になると近藤氏。映像の質を高め、リアルな映像美に近付きたいというユーザーの投資に対して、今後も決して揺らがない価値を提供し続けるとも話す。

photo 機器の内部にあるインターフェースに拡張ボックスをつないで、さまざまなファンクションを追加することが可能

 また、クリエーションボックスという新しい商品ジャンルに挑戦する一方で、映像処理技術としてのDRC-MFv2は、今後様々なソニー製品の中に入り込んでいく。DRC技術は、一般的なスケーリング補完やI/P変換とは動作がかなり異なるため、一般的な映像プロセッサでは同様の品質を実現できないという。映像処理アルゴリズムそのものを、ハードウェアアーキテクチャとして実装し、それに対してリコンフィギュアブルLSIの手法で柔軟性を持たせているからだ。逐次処理型のプロセッサで実現するには、何倍、何10倍ものバースト処理性能が必要になる。

 1997年開発のDRCはその後、似たような高画質化効果をうたう映像回路が登場しつつも、その絶対的な品質に対する評価が揺らぐことはなかった。“画質”という切り口におけるDRCのアドバンテージは、今でも生き続けているといえるだろう。それが今後、あらゆるソニー製品に入り込むとすれば、ユーザー側の認知次第ではかつての“トリニトロン”などと同じように、高画質な映像機器を示すひとつのシンボルとして定着するかもしれない。

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