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Appleの支持を得たBD――HD DVDはどうなっている?CeBIT 2005

» 2005年03月11日 21時21分 公開
[本田雅一,ITmedia]

 Apple ComputerがBlu-ray Disc Association(BDA)の幹事メンバーに加わったことを発表したBD陣営に対して、HD DVDの普及促進を行うHD DVDプロモーショングループは、CESで大きな発表(参考記事)を行ったこともあり、今回のCeBIT 2005では一休みといった印象。欧州メディア向けにHD DVDの現状を説明する記者会見は催すようだが、基本的に新しいニュースはない。

 HD DVD陣営に属する東芝と三洋電機のブースでも、CESで展示されたHD DVDプレーヤーの試作機を用いたデモを粛々と行っている状況だ。セルビデオのビジネスをきっかけに普及を狙う戦略をとることもあり、現在は次世代光ディスクにおける著作権保護の枠組みである「AACS」の動向を見据えつつ、製品化に向けた準備を進めている段階だからだ。

photo 東芝の展示していたHD DVDプレーヤーの試作機
photo 同じく三洋電機が展示していたHD DVDプレーヤーの試作機

 全体的におとなしいHD DVD陣営の中にあって、NECはPC向けHD DVDドライブの積極的な展示を行っていた。PC向けに限れば、AACSの決定を待つことなく出荷できるという事情もあるだろう。展示されていたドライブはシングルレンズでCD/DVD/HD DVDの3メディアに対応する。

photo NECのPC向けHD DVDドライブを使用したデモ

 ただし、9月に投入される予定のドライブはCD/DVDの記録は可能だが、HD DVDは読み取りのみをサポートする。NECで次世代光ディスクの開発を統括している早津亮一氏によると、投入当初、読み取り専用となる理由はレーザーダイオードの調達コストにあるようだ。シングルレンズによる3メディア対応でHD DVDの記録を行うには100ミリワット程度の出力が必要になるので、このクラスの出力を持つ青紫レーザーダイオードが安価になってくれば採用する方向に動くだろう。なお、2月に行われたDVD Forum幹事会ではHD DVD-Rの仕様がほぼ決まり、関係各社によるラウンドロビンテストも問題なく終了したという。

 一方、HD DVDを記録型メディアとして普及させる際に指摘される問題点として、1層15Gバイトという容量の少なさ(HD DVD-Rの場合)が挙げられている。これまでの歴史を振り返ると、ユーザーは繰り返し利用可能な書き換え型ではなく、メディア単価の安いライトワンスメディアを選ぶ傾向が強い。

 この点に関して早津氏は「15Gバイトが少なすぎる事は認識している。最終的に記録型はライトワンスへと収束していくだろうし、メディアメーカーも数が売れるライトワンスを作りたがる。ただ、HD DVD-Rの2層記録に関しては、1層とは異なる特性の色素が必要になるため、実用化にはもう少し時間がかかるかもしれない」と話した。

 なお、デモンストレーションではワーナー、ユニバーサル、パラマウントのHD DVDを支持する3スタジオのコンテンツに加え、20世紀フォックスも「ムーランルージュ」のHD映像を提供していた。ただし、これは20世紀フォックスが次世代メディアに対して中立の立場を守っていることを示すためのもので、HD DVD向けのタイトル発売につながるという意味合いを持つものではない。20世紀フォックスは以前、インタビューの際にBD寄りの意見を出しつつも、中立の姿勢を強調していた。

 各デモ映像はH.264を用いたものだが、いずれもやや甘い解像感。おそらく東芝のソフトウェアエンコーダを用いたものだろうが、解像感の甘さについては近く完成するH.264圧縮用のアクセラレータの高速化(実時間の約100倍だったものが約2倍まで高速化されるそうだ)で解決する見込み。現在は圧縮パラメータの最適化を行っていないそうだが、圧縮速度が向上することでパラメータの最適化が容易になり、画質を上げることも可能になるのだという。

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