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メモリプレーヤーの“音質評価”は難しい!?(2/2 ページ)

» 2005年04月14日 05時22分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]
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 実際に音質を評価したのは、JEITA加盟企業11社から選ばれた220人。いずれも音に関係した仕事を持つプロフェッショナルだ。検証方法はいたってシンプルで、最初に音源(CD)を聞き、その後で音源と圧縮音楽がランダムに流れる。基準となるCDとの差をチェックして、違いを「わからない」「わかるが気にならない」「気になるが邪魔にならない」「邪魔になる」「非常に邪魔になる」の5段階で評価した。時間制限などはなく、被験者は何度でもソース音(CD)に戻ることができる。また個人のプライバシーを尊重し、テストは原則無記名とした。

 この方法で、ビットレートの違いから生じる音質を検証したところ、100Kbpsを境にして原音との差が如実に表れるという結果が出た。320Kbpsや256Kbpsでは「わからない」がほとんどで、128Kbpsまでは「わかるが気にならない」レベル。しかし96Kbps以下は「邪魔になる」という。「100Kbps以上なら“まずまず”だが、100Kbps未満になると“野放しにはしておけないレベル”だった」(同氏)。

photo 出典はJEITAのセミナー資料

 一方、音質を機械的に検証したものと、人の感性による検証結果には、傾向は同じであるものの、数値に若干の差異が認められた。これを反映して評価モデルを作成。メモリオーディオ機器を検証する際には、一般的に符号化が難しいといわれる楽器(カスタネット、トライアングル、ハープシコードなど)で演奏した8曲を使い、「0」(わからない)から「-4.0」(非常に邪魔になる)までの5段階で評価するという。

 検証結果として採用されるのは、8曲の平均値だ。これが「-2.5」以上であれば、メーカーは「コーデック音質:標準」という表記を製品パッケージに入れることができる。「-2.5」以下の場合でも特に表記する規定はないという。ただし、前述のようにCPX-2601が実際に使用された例はない。

 実際、現在のメモリプレーヤーは複数のコーデックをサポートしているのが普通であり、単一の評価を与えるのは無理がある。またビットレートはエンコード時(CDからリッピング)に柔軟に設定できるのが一般的。ユーザーが任意に変更できるものを“製品のスペック”として表記するのが適切かどうかは、意見が分かれるところだろう。さらに、製品評価として考えた場合は、プレーヤーのアナログ部が評価対象から除外されている点も不十分。評価が2段階しかない点や、表記の義務がない点も含め、一般ユーザーからみれば物足りない規格といえるのかもしれない。

 結局、さまざまな事情によって、JEITAが定めた「CPX-2601」は未だに日の目を見ずにいる。横田氏は、メモリオーディオ製品における実施を推進するとしたが、同時にいくつかの課題を挙げ、改善していく方針を明らかにしている。

 「今後は、表示の形を現在の2段階から3段階へ表示方法を変えること、小型HDDなどメモリ以外のメディアを使った機器にも適用することなどを検討していく。さらに、メモリオーディオに関しては、“最大何時間分の楽曲を記録可能”といった表記が問題になることから、記録時間とリンクする形で実施を推進していきたい」(同氏)。

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