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搭乗できる巨大ロボット「LAND WALKER」が生まれるまでインタビュー(1/3 ページ)

» 2005年05月16日 10時48分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]

 「LAND WALKER」をご存じだろうか? 人が搭乗し、すり足ではあるが、立派に2本の足で移動できる“巨大ロボット”だ。全高は3メートル40センチ。重量は1トン。アニメの世界から出てきたような外観を持ち、しかも圧縮空気を使ってクッションボールを打ち出す“武装”まで施されている。早速、群馬県にある榊原機械を訪ね、「LAND WALKER 01」誕生の秘密を聞いた。

photo 見よ。「LAND WALKER」の勇姿

 インタビューに応じてくれたのは、LAND WALKER 01の企画から製作までを担当した南雲正章氏。どうやらLAND WALKER 01は、単なる趣味の産物という“だけ”ではなく、実は技術とビジネスモデルに“も”裏打ちされた正当派エンターテイメントロボットのようだ。

photo 特車一課……ではなく、榊原機械・開発課の南雲正章氏

――まず、「LAND WALKER」開発のきっかけから教えて下さい

 「自分が乗って見たかったからです。私もアニメは見てましたから、こういうものがあったら、乗ってみたいと思っていました。40歳くらいまでの男性なら、誰でも一度は考えたことがあるでしょう?」

――あります(きっぱり)

 「アニメというのは人が乗り込むロボットが中心ですよね。誰でも乗ることができて、遊べたら楽しいだろうと……それがきっかけですね。

 そして、新しい分野に進出していくためです。弊社の事業は環境設備や農業機械の開発、製造ですが、実際はあまりコダワリのない会社なんです。実は、もともと「すり足歩行」の基本技術を会社が持っていたのですが、それを初めてみたとき、これは使えると思ったんです。

 でも今のロボット作ってるメーカーさんに対抗しても仕方ないですし、ウチは大きい機械が得意ですから、すり足できて、さらに人が乗れるロボットのほうがウケルのではないかと。作ろうと思った当時は、どこの会社も搭乗できるロボットは手がけてませんでした」

――会社のWebサイトを見ると、「ぐんまちゃん」「キュリーちゃん」という知能ロボットも作っているようですが、以前からロボット開発を手がけていたのですか?

 「知能ロボットは、20年程前に社長が作ったものです。赤外線誘導装置や超音波センサーが内蔵されていて、障害物を回避しながら自律走行ができます。音声認識も可能で、人がいるとちょっとした会話もする。そしてUターンして戻っていく――というロボットでした。

 その技術は、現在製造している環境設備や農業用機器に活かされています。たとえば堆肥を作る機械は、80〜100メートルという長いビニールハウスの中で移動しながら堆肥を攪拌する作業を行いますが、土の上ですから普通は真っ直ぐに移動できません。しかし、弊社の製品はレールなどを使わず、自律的に方向修正しながらタイヤでまっすぐ移動できます。つまり産業機械もロボットなんです」

――ロボット開発の下地は十分にあったわけですね。では、LAND WALKERの企画はいつ頃から動き出したのですか?

 「設計にとりかかったのが、一昨年の5月頃です。そして、LAND WALKERの前に、すり足歩行の実験機を作りました。今回のものと少し方法は違うのですが、それも人を乗せて歩くことができます」

――零号機……いやプロトタイプですね。

 「……ええ。その後、LAND WALKERの製作に取りかかり、ひとに見せられるものができたのは今年の2月上旬ですね。動いて、それなりの形にはなっていましたが、最初は塗装をしていませんでした」

――動力は250ccのエンジンということですが、すり足歩行の仕組みを教えて下さい。

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