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» 2005年05月24日 15時07分 UPDATE

コントラスト比10000:1で“漆黒の黒”を――エプソンがHTPS向け新技術 (1/2)

セイコーエプソンが、高温ポリシリコンTFT液晶パネル(HTPS)に無機配向膜を使った新技術を開発。DLPやLCOSに負けない高コントラストなフロントプロジェクターやリアプロTVが作れるという。

[西坂真人,ITmedia]

 セイコーエプソンは5月24日、フロントプロジェクターおよびリアプロジェクションテレビ(リアプロTV)で利用される高温ポリシリコンTFT液晶パネル(HTPS)に、無機配向膜を使った新技術「クリスタルクリアファイン」を開発したと発表した。

 無機配向技術「クリスタルクリアファイン」を用いたHTPSは、コントラストを従来比で4〜5倍以上に高めることができるほか、黒の再現性向上、配向むらの低減などのメリットを確保。同技術による高開口化/高精細化/高画質化を進めることで、より高性能なプロジェクション製品が開発可能になるという。

 特に注目したいのが、コントラスト比の大幅な向上だ。

 液晶パネル方式のプロジェクション製品は、ランプの光をカラーフィルターに透過させて投影するのだが、これまでは液晶シャッター部からの光漏れを遮断することが難しく、高いコントラストが得られないとされてきた。

 明るい場所でプレゼンテーションなどを行うために輝度を優先するビジネス向けプロジェクターでは、このような光漏れはさほど問題にならない。輝度のアドバンテージをアピールしてきた同社製液晶パネル(Dシリーズ)が、ビジネス向けで圧倒的なシェアを確保している理由がここにある。

 だが、暗い環境で映画などを投影する家庭向けではこの光漏れが液晶方式の最大の欠点といわれ、映画ファンにはコントラスト比が高いDLP方式やLCOS方式の製品が“高画質の代名詞”になっていた。このコントラスト比の問題はフロントプロジェクターだけでなく、近年急速に市場を拡大しているリアプロTVにまで波及し、液晶陣営がリアプロTVで今後シアター派を取り込むためには、コントラストの改善は急務だったのだ。

“垂直配向”でコントラスト向上

 配向膜とはHTPSなど液晶表示素子において、液晶を挟み込むガラスなど基板の表面上に形成する膜のこと。液晶分子を所定の方向に配向させる役割を持つ。クリスタルクリアファインではこの配向膜を垂直にした。

photo

 「従来の配向膜を水平に寝かせるTN方式では、電圧がONの時に黒表示となるのだが、このとき液晶分子が十分に立たない部分が発生し、そこで光が透過してしまうことで光漏れが発生していた。新技術ではこの配向膜を垂直にするVA方式にして、黒表示が電圧をOFFにした時に変更。液晶分子がしっかり揃っている時が黒表示になるので、光漏れがほとんどなくなり、結果として高コントラストになる」(同社)

photo TN方式(左)とVA方式(右)

 また、液晶の配向膜には一般的にはポリイミドなど有機材料を用いるのだが、クリスタルクリアファインではこれを無機材料に変更。この無機材料を分子レベルで堆積させていく成膜方法により、成膜と配向処理を同時にしかも非接触で行うことができる。

 「有機配向膜をロールでこすることで薄膜を形成していた従来方式に比べて配向ムラのない配向膜を作れる。さらに無機材料は有機材料に比べて長時間露光による劣化が少なく、長寿命になるというメリットもある」(同社)

photo ロールを使う従来の配向膜形成方法では配向ムラが発生
photo 無機材料を分子レベルで堆積させていく成膜方法で、ムラのない配向膜を作れる

 新技術の発表会場では、従来モデル(720p)と新技術を用いた試作機(1080p)2台の57V型リアプロTVを並べて画質の比較が行われた。

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