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» 2005年06月06日 16時51分 公開

クラスターイオンは“トリインフルエンザ”にも有効――シャープ

シャープの空気清浄化技術「プラズマクラスターイオン」が、致死率の高い浮遊高病原性「H5N1型トリインフルエンザウイルス」の働きを抑えることが実証された。空気清浄化技術は多くあるが、同ウイルスへの効果が確認できたのは初めて。

[ITmedia]

 シャープは6月6日、プラズマクラスターイオンが致死率の高い浮遊高病原性「H5N1型トリインフルエンザウイルス」の働きを抑えることが実証できたと発表した。空気清浄化技術は多くあるが、同ウイルスへの効果を実証したのは初めて。検証を担当したのは、ロンドン大学医学・歯学部のジョン・オックスフォード教授と同氏が設立したCLP適合機関レトロスクリーン・バイロロジーだ。

photo シャープ、電化システム事業本部電化商品開発センターの中川泰仁所長(左)と第3開発室の池防泰裕室長(右)

 シャープの「プラズマクラスターイオン空気清浄化技術」は、空気中にプラスとマイナスのイオンを放出して除菌や消臭を行う技術だ。汚れた空気中にイオンを放出すると、浮遊する臭いのモトを分解されることが知られているが、通常のイオン発生ユニットなどで生成したイオンは、空気中では非常に不安定。そこで同社は、プラズマ放電によってイオン粒子のまわりに複数個の水分子をブドウの房状(クラスター)に凝集させ(クラスターイオン化)、イオンを空気中でも安定させることに成功した。

 2000年に発表された同技術は、空気清浄機をはじめ、エアコン、冷蔵庫、掃除機、衣類乾燥機、シャワートイレなど10品目の家電製品に応用されており、採用デバイスの累計販売台数は2004年度実績で800万台に上る。「もはや空間除菌技術のデファクトスタンダードといっても過言ではない。2005年度は累計1200万台を目指す」(シャープ、電化システム事業本部電化商品開発センターの中川泰仁所長)。

 またシャープでは、この5年の間に細菌やカビ菌、アレルゲンなど全26種の有害物質に効果があることを実証してきた。昨年11月には、「細菌の表面細胞膜のタンパク質を破壊し、死滅させるメカニズム」を解明し、表面にタンパク質を持つ広範囲の浮遊有害物質への効果が期待できることを科学的に証明している。

 ウイルスの感染機能をなくすメカニズムも、表面のタンパク質を破壊する効果によるものだ。空中に噴霧された+イオン(H+)とーイオン(O2ー)は、浮遊ウイルスの表面タンパク質を取り囲み、化学反応を起こして強力な活性物であるOHラジカルに変化する。OHラジカルは、ウイルス表面からH(水素)を抜き取り、科学反応を起こしてH2O(水)に変化。「ウイルスの表面構造は分子レベルで破壊されるため、人間の体内に入っても感染できない」という。

photo 浮遊ウイルス作用のメカニズム

 一方、高病原性トリインフルエンザウイルスは、感染したトリのほぼ100%が死ぬとされる致死性の高いウイルスだ。とくに今回実験に使われた「H5N1型」は、ヒトへの感染事例もあり、変異してヒトからヒトへ感染するようになる危険性が指摘されている。

 「たとえば、1918年のスペイン風邪ウイルスは、低病原性トリインフルエンザの変異によって発生した新型ウイルスであることが判明している。仮に高病原性トリインフルエンザウイルスのヒトーヒト感染が起きれば、世界的に流行して5億人以上の被害をもたらすという説もある」。

99%を不活化

 検証は、実空間を模した1立方メートルのボックスの中で行われた。ボックスの中を1立方センチあたり7000個のプラズマクラスターイオンで満たし、トリインフルエンザウイルスを飛沫噴霧する。5〜15分後に取り出したウイルス含有液を培養細胞にくわえ、一定の温度で培養。培養した細胞のうち、どの程度がウイルスに感染しているかを検証する。

 評価は、一般的な「50%細胞感染量測定法」(TCID50法)と「免疫蛍光抗体分析法」(IF法)の両方で行われた。「その結果、TCID50法では、5分から15分のイオン処理により、細胞感染率が99%減ることがわかった。また、免疫蛍光抗体分析法でも、プラズマクラスターイオンがトリインフルエンザウイルスの感染機能がなくなることを実証した」という。

photo 「免疫蛍光抗体分析法」で検証した感染4日後の感染状況。緑色に染色されている部分がウイルスに感染しているところ(左)。イオン処理した右側は、細胞がしっかりと正常な形を保ち、石垣状に並んでいる
photo トリインフルエンザウイルスの感染力が99%低下した

 シャープでは今後、プラズマクラスターイオンを空気清浄機などの空気浄化装置を中心に製品への応用を進める構えだ。「完全に(ウイルス感染を)防げるというわけではないが、感染の確率を減らし、地球レベルの拡散を防ぎたい」(同社)。

 また、共同研究者であるジョン・オックスフォード教授もビデオレターで登場し、「この実験で99%の細胞感染率をなくすことがわかった。より多くの成果を期待する向きもあるかと思うが、大きな一歩だ。家族を守るための対策として何ができるかを考えたとき、シャープの技術は1つの回答になる」と話している。

photo 共同研究者であるレトロスクリーンのジョン・オックスフォード教授

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