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» 2005年06月06日 18時46分 UPDATE

インタビュー東芝・藤井氏に聞く――次世代DVD統一交渉“決裂”の背景(前編) (1/3)

前回は次世代光ディスク統一交渉の一方の当事者であるソニー、西谷清常務にインタビューしたが、東芝の交渉代表となっていた東芝上席常務の藤井美英氏に話を聞いた。「まだ完全に決裂したわけではない」というが、両者の溝は予想外に深いようだ。

[本田雅一,ITmedia]

 先々週、次世代光ディスク統一交渉の一方の当事者であるソニー、西谷清常務のインタビューを掲載したが、今回はもう一方、東芝の交渉代表となっていた東芝上席常務の藤井美英氏に話を伺った。

 統一に際して一番大きな障害だったディスクの基本構造を0.1ミリとし、東芝側から始めたといわれる今回の交渉。その始まりは藤井氏が、ホームネットワーク社を担当していたソニー・久夛良木健副社長(当時)に話を持ちかけたのがきっかけとされている。

 しかしその後、5月18日の交渉を持って区切りが付き、現時点では“決裂”という結論が出ている。自らが話を持ちかけたように、当初は積極的0.1ミリ構造への歩み寄りの姿勢を見せていた東芝。ところが、関係者に取材を重ねていったところ、5月9日にソニー・品川西テクノロジセンターで行われた交渉の翌日、つまり5月10日を境に、東芝は急速に0.1ミリを否定する方向へと進んだようだ。

 なぜ、東芝は急に方針転換したのか?

 もともと、交渉の中で東芝でHD DVDの開発に関わる技術陣は、0.6ミリ構造の優位性、0.1ミリ構造の弱点解決が難しいことを主張していたという。交渉に立ち会った東芝・HD DVD事業推進室長の佐藤裕治氏は、「発売1年前にはディスク複製の歩留まりぐらいは解決しているのが普通だ。しかし、想像していたよりもBD側の作業は進展していなかった」と主張する。

 だが両社の視点や技術的な見解が異なることは、交渉前からわかっていたはず。基本構造の統一という前提がなければ、そもそも交渉自体が始まっていなかった。交渉のきっかけが技術的な理由ではなく、経営の視点から統合が望ましいと判断したのであれば、なぜ東芝は急に方針を転換したのだろうか。

 東芝側の視点で、今回の次世代光ディスク統一交渉を追ってみた。

まだ完全に決裂したわけではない

――今回の統一交渉は、5月15日の段階で事実上の決裂となってしましました。東芝、そして藤井さんの立場から見て、今回の決裂に至った経緯を話していただけますか?

 「今回のような交渉は企業利益だけでなく、エンドユーザーにも直接的な利害が関わります。それだけに非常に高度な判断が必要になるデリケートな交渉です。今回に関しては、まだ完全に決裂したという認識ではありませんし、詳細について語る事はあまりしたくありません。時間が経過しなければ発表できないこともあります」

――東芝は0.1ミリ構造への変更を許容し、0.1ミリ構造を基礎に統一規格を練っていたということでした。それがこのような形で決裂に近い結果が出たことで、東芝が“一方的に蹴った”という印象も与えているようです。

 「いったい、どこから情報が流れているのか。本気で統一について考えている時に、話し合いで決めかけていた内容が新聞に掲載される。しかもすべてではないが、意図的とも思える嘘が多い。交渉を進める中で、これは相当なフラストレーションでしたし、疑心暗鬼にもなりました」

――交渉のきっかけは、旧知の久夛良木氏との話から出たものだったのですか?

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