コラム
» 2005年07月25日 01時00分 UPDATE

小寺信良:PCの高速化を巡る“果てしない追いかけっこ” (1/3)

「PCの進化」は、ユーザーニーズに対する問題解決……ではなく、実は高速化/大容量化に見合うタスクを作り出すことで成り立っているのではないだろうか? 昔話を交えながら「PCの進化とタスクの逆転現象」について述べよう。

[小寺信良,ITmedia]

 PCの進化とは要するになんなのかと考えてみれば、小型化、薄型化、耐久性などいろいろな要素があるにしても、最終的には「高速化」と「大容量化」ということになるだろう。ユーザーは常に、あーもっと速くならないかなぁとか、もっといっぱい保存できないのかなぁと思っているのである。

 ……あーすまん、それはウソだ。

 PCやプロセッサの広告を見ると、常に何か困っている現状があって「それを解決するのが高性能の○○○です」みたいなソリューションを提示してあるわけだが、むしろ実態はその逆なんじゃないかと筆者は思っている。今回は昔話を交えながら、「PCの進化とタスクの逆転現象」について話を進めてみたい。

スピードに見合うタスクを作る

 プロモーションの仕事に長いこと関わっていると、しばしば妙な依頼に遭遇することがある。たしかあのときはまだWindows 95が出てなくてWindows NT 3.5を使っていたから、1994年頃のことだったろう。某PCメーカーから、今は亡きDECのCPU「Alpha」を搭載したマシンのプロモーションデータ作成の依頼を受けたことがある。

 当時筆者は、いろんなメーカーの新製品プロモーション用3DCG制作を生業としていたのだが、その経験を生かして、IntelプロセッサよりもAlphaのほうがレンダリングが速いという結果が出るCGシーンを作ってくれ、というのである。

 折しも当時はAMIGAを作っていたCommodore社が倒産し、AMIGA OS上で動いていた3DCGソフトがこぞってマルチプラットフォームに移植されていった時期であった。同じソフトでもIntel版、Alpha版、Mac版、MIPS版などがあったものだ。

 一応同じソフトを使えば、比較として格好がつく。しかし当時のマルチプラットフォームソフトというのは、ソースコードから各プロセッサ用にどうにかコンパイルし分けたぐらいのもので、それぞれのプラットフォームに対して最適化してプログラミングを変えていくようになるのは、もう少し後のことだったろう。

 各プロセッサ用に最適化されていれば、その部分での差は出しやすい。だがそれほど最適化されていないソフトウェアでの比較では、ここが速いはず、という触れ込みの部分が大して速くなく、クロックの比率からすればまあこんなもんか、というような平凡な結果にしかならなかった。それでは困るので、まずAlphaに対してまじめに最適化されていると思われる3DCGソフト探しから始まって、そのソフトの使い方を覚えて、それから作品を作る、という段取りになるわけだから、もう大変である。

 重たい処理(タスク)が先に存在して、その解決策としてPCの性能が上がっていくという状態だったら、非常に健全なのだ。だがムーアの法則をロードマップに置き換えるという矛盾を抱えながらPCの性能向上が定常化していくと、時として現実に存在するタスクを、PCのスペックのほうが追い越してしまう。

 そしてそういう時にPC業界から、「何か重いタスクはありませんか」という妙なリクエストが、映像関係者に舞い込んでくるというわけだ。その後1〜2年でPC業界は空前の3DCGブームを迎えるわけだが、それはPCユーザーのクリエイティビティが急激に向上したからではなく、自分のPCのパワーを体感できる恰好のタスクだったから、というのが実態ではなかったか。

容量に見合うタスクを作る

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