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オプティキャストの新展開が持つ「意味」西正(1/2 ページ)

» 2006年01月20日 08時47分 公開
[西正,ITmedia]

新会社のミッション

 新会社名は「オプティキャスト・マーケティング」で、オプティキャストの営業部門を分離して設立した。2006年1月25日に新株発行を行い、3社がそれぞれ引き受ける。出資比率は、同社が51%、NTT東34%、同西15%となる。新会社は、家電量販店、NTT東西などの代理店を通じ、「光パーフェクTV!(以下、ピカパー)」の販売を行う。

 IP電話、高速インターネットに加え、オプティキャストの親会社であるスカパー!のコンテンツなど約300チャンネルを持つピカパーのサービスをBフレッツで受けられるようにして、顧客獲得を図る。マンション向け営業から始め、今春以降は一戸建てサービスの販売も行う。

 ブロードバンドは光の時代を迎え、新たな利用者の増加だけでなく、既存のADSL等からの乗り換えも見られ始めている。光ファイバーに乗り換わっていく新たなインフラの登場には相応の時間を要しそうなだけに、光ファイバーの敷設は早い者勝ちの様相を呈している。

 NTTは中期計画で3000万世帯に光ファイバーを引き込む方針を打ち出したが、電話、ネット、放送をワンセットで提供するトリプルプレイのサービスが競争に勝つための条件となる。ライバルとなる電力系の光サービス、MSOを中心に急速にデジタル化を進めているCATVでは、既にトリプルプレイが実現しているが、NTTの場合にはNTT法の規制があることから、放送事業には3%以上の参画は認められない。そうした制約を超えていくために、オプティキャストと組んでいくこととしたのである。Bフレッツだけを売るよりも、それに放送サービスがセットになっていた方が売りやすいからだ。

 地上波放送をIP方式で同時再送信するための実験も始まったが、それが商用化されるのには今しばらく時間がかかりそうである。それを待っていたのではライバル事業者に先を越されてしまうだろう。

 光ファイバーを地上波放送の伝送路とするためには、主として2つの方法がある。1つは光ファイバーを2本引いて、1本はIP系の通信サービス、もう1本を放送サービスの伝送路とする方法(光の二芯)であり、もう1つは光波長多重技術(WDM)を使い、1本の光ファイバーの中で放送と通信を切り分けて伝送する方法である。

 現状の光の普及レベルでは、光の二芯の方が低コストだ。利用戸数がまとまってくればWDMの利用が本格化するだろうが、WDMを利用した例は今のところ、中国電力系のエネルギアコムとオプティキャストが広島県福山市でサービス展開した一例しかない。

 オプティキャストは有線役務利用放送事業者の典型とも言える存在である。他の有線役務利用放送事業者は、特定の大手通信事業者の回線だけを利用する形になっている。見方によっては、通信事業者が放送事業に進出するための手法として採られる形態と言える。オプティキャストの場合には役務として利用する通信インフラは、NTTの物でも電力系の物でもCATVでも何でも構わない。

 それだけに、オプティキャストの場合には、特定の通信インフラを普及させるミッションを持たない。NTTがオプティキャストとの合弁で営業会社を立ち上げた理由はそこにある。オプティキャストにもピカパーを売るための営業部隊はあったわけだが、あるユーザーにピカパーを売り込むためには、その前にそのユーザーが光ファイバーを利用する意向を持っていなければならない。

 オプティキャストが戸建て展開に踏み出していくに当たって、仮にNTTのBフレッツとセットで売っていく方法を採るとする。光ファイバー自体を拡販している最中であり、Bフレッツを売る手段としてピカパーをセットにしていく以上、両者のセット販売には相応のコストが必要になる。ライバルも強力であり、宣伝費、人件費、広告費なども、今は惜しみなく投入していく時機である。

 オプティキャストがそれを応分に負担していくことは難しい。どの世帯も必ずBフレッツとピカパーをセットで購入してくれれば良いのだが、Bフレッツだけで構わないというユーザーもいるであろう。その場合、NTTにはBフレッツが売れたことによる収入が入るが、オプティキャスト側には一銭も入ってこないことになる。

 また、オプティキャストは放送事業者であるため、NTTとしては放送サービスを売るための経費を拠出するわけにもいかない。

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