インタビュー
» 2006年09月01日 20時56分 UPDATE

次世代光ディスクの画質を上げるPHLエンコーダーとは? (1/2)

11月の「プレイステーション3」発売に合わせ、Blu-ray Discのパッケージソフトウェア展開が国内でも本格的に始まる。中でも注目は、各展示会で素晴らしい画質を見せていた松下電器開発のH.264/MPEG-4 AVC High-profile採用タイトルだ。

[本田雅一,ITmedia]
photo 8月29日のBlu-ray“決起集会”の様子

 Blu-ray Disc(BD)のパッケージソフトウェア展開が、11月の「プレイステーション3」発売のタイミングに合わせ、国内でも本格的に始まることが発表された(関連記事)。すでに北米ではサムスン製プレーヤーの発売に合わせてソニー・ピクチャーズがBDソフトの販売を開始しているが、国内ではパソコンである「VAIO」シリーズでしか再生が行えない。

 現在、北米で発売されているBDソフトは、まだ次世代らしい画質を見せていないが、今後発売されるものの中には高画質なものも増えてくるだろう。長編作の中には2層50Gバイトディスクを使うものもある。

 中でも注目は、さまざまな展示会で素晴らしい画質を見せていた松下電器産業開発のH.264/MPEG-4 AVC High-profile採用タイトルだ。現時点で明らかになっている中では、20世紀フォックスが一部のタイトルでH.264HPの採用をアナウンスしている。

 国内発売が決定しているものの中では、「エネミー・ライン」「スピード」「リーグ・オブ・レジェンド/時空を超えた戦い」の3作品が該当する。これらは、松下電器産業の研究開発組織であるパナソニックハリウッド研究所(PHL)で開発されたオーサリングシステムを使い、PHLと同じ場所に新設したオーサリングサービス拠点でオーサリングされるものだ。

 では、松下のH.264HPは他社のH.264と、どのような点が異なるのだろうか?

 デジタル映像の高画質化を実現するための研究開発を行う松下電器産業・本社R&D部門AVコア技術開発センター知覚AVグループ・グループマネージャーの高橋俊也氏に話をきいた。

H.264で画質が向上しない理由はない

photo 松下電器産業・本社R&D部門AVコア技術開発センター知覚AVグループ・グループマネージャーの高橋俊也氏

 松下電器が業務用のH.264HPエンコーダーを開発した経緯については、以前にもPHLの柏木吉一郎氏(現在はPHL副所長)にインタビューを行ったことがある。SD映像では有効なH.264がHD映像では高画質にならないことに疑問をおぼえ、上司に相談し、1年という期間限定でHD映像+H.264で高画質を実現するための研究開発を行った。

 そのときの上司こそが高橋氏である。同氏はMPEG委員会にも参加し、MPEG-2の策定にも尽力したMPEG技術のエキスパートでもある。

「MPEG-4 AVC/H.264はMPEG-2に比べ、圧縮ツール(圧縮要素や動き予測のバリエーションなど)が大幅に増加しているだけでなく、算術演算符号化など基本的な部分での効率が向上しています。低ビットレートで効果的なツールが多いのは確かですが、かといって高ビットレート時にMPEG-2よりも画質が落ちることは、理論的にあり得ません。H.264の高画質化作業を命じたのは、関係者全員、もちろん私自身も“何か大きな間違いがあるに違いない”と確信していたからです」と高橋氏は振り返る。

 その後の経緯は今年1月に柏木氏を取材した記事を参照していただきたいが、BDの大容量という長所を生かせない可能性があるH.264の開発を、松下電器の研究開発組織全体でバックアップしていたと高橋氏は話す。H.264の画質が上がる可能性を放棄して高ビットレートのMPEG-2を前面に押し出す小手先の事業戦略で規格を立ち上げるよりも、根本的な部分での高画質化をきちんと行った方が、長期的な業界の発展に寄与するとの判断からだ。

 ハリウッドでの柏木氏の開発を日本側でもサポートし、シンガポール研究所ではMPEG委員会に提供するためのソースコード開発や実装評価を並行して作業。さらにドイツ研究所では開発したコーデックのシミュレーション評価やJVT(H.264の検討を行った標準化チーム)への提案活動などを担当。松下の研究開発組織全体がH.264の高画質化に取り組み、活動期限の1年を待たずして、HD映像の高品質圧縮技術の確立と標準化を実現した(MPEG標準への採用に関して、多くの会社のサポートがあったことは当然だが)。

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