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「Engadget」って何だ?小寺信良(2/3 ページ)

» 2006年11月13日 05時35分 公開
[小寺信良,ITmedia]

ただの翻訳サイトではない魅力

 日本は、ガジェット系のニュースには比較的不自由しない国だろうと思う。世界に通用するメーカーは日本に集中しているし、台湾、香港、や韓国の製品や情報はアキバに集まる。そういう意味では、ぶっちゃけWebでここITmediaとImpress Watchを見れば一通りのことはわかるというところは、他国とは事情が違う。

 ただこれらのサイトのベースは雑誌的な体質なので、試しましたみたいなレビュー記事というのは、どうしても話題性のあるものが中心となる。小さいものや定番のものはなかなか手が回らず、リリース文の掲載程度の扱いになることも多い。

 例えば韓国企業のMP3プレーヤーなどは、今やモノとしてはそれほど珍しいものではなく、普通に売られ、普通に買われるものになってきた。もちろん新製品であればそれなりに新機能などが搭載されてはいるのだが、じゃあ改めてそれ単体でページビューが取れる1本の記事になるか、と言われれば、内容としては足りないということになる。

 一方Engadgetのようなブログ形式のサイトでは、記事1本分の体裁というのはあまり問題にならない。トップページからすべての内容が最初からズラズラと出てくるので、ニュースそれぞれの量があまり問題にならないということもあるだろう。

 「Engadget本家は、ちょっと紹介というかナゲット化というか、元ネタサイトの内容を一口サイズにするというのが芸なんですね。紹介だけして後はリンクを読んでくれというのができるんですけど、日本だとそもそも元ネタサイトが日本語じゃないとか、日本で出てない製品だとかになってしまう。したがって本家の記事を翻訳するだけではダメなので、ソースの元ネタサイトを読んで、それも記事の中に盛り込んでいます。ですから記事は単純な翻訳ではなく、本家よりも増えてる場合も結構あります」(Ittousai氏)

 ただ「Japan」ではなく、「Japanese」という翻訳サイトのような名称なので、誤解もあるようだ。

 「だいたい同じアイテムを扱ってますから翻訳サイトみたいに見られるんですけど、純粋な翻訳というのはないです。向こうの記事スタイルってタイトルも言葉遊びみたいな感じでしゃれてますし、また向こうは一人称がWeで、編集部全体としての記事になっている。それをそのまま持ってきても何にもならないので、体裁を変えたりするんです。そうすると本家の記事とは違ってきますので、ねつ造じゃないかという批判されることもあります」(Ittousai氏)

 もう1つBlogというスタイルが強いのは、ゴシップやリーク情報も普通の記事と同列化して記事にできるというところがあるだろう。きちんとした商業媒体では、なかなか知っていても記事にしづらい部分だ。だがこれらのあいまいな情報も、以前とは変わってきた。デジカメやカメラ付きケータイの普及で、情報源が単なる話だけでなく、画像になってきている。かつて一般週刊誌ができない部分を写真週刊誌がやって趨勢を極めた現象と、似ている部分はあるかもしれない。

 ただEngadgetの場合は次第に大手になるにしたがって、リーク情報に関しては警戒感を強めているという。

 「本家だと最近は、読者に対して『リーク情報を送る前に自分のことを考えてください』って書いてある。うちとしてはうれしいんだけど、首になるとか社内で処分とか上の人の首が飛ぶとかだとやってられないので、ということなんです。特にNDAを結んでいた場合、悪くすると刑務所入っちゃうかもしれないからホントに考えろ、と。また名前とか勤務先がわかるような写真を送るのも頼むからやめてくれ、と警告しています」(Ittousai氏)

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