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BDの「ソニー」対HD DVDの「東芝」――それぞれの主張2007 International CES(2/4 ページ)

» 2007年01月13日 01時29分 公開
[本田雅一,ITmedia]

――20世紀フォックスの発表では、昨年の最終週にBDの販売がHD DVDを超えたとなっていました。その後の予測は大変に強気でしたね。これはBD関連各社の共通の予測なのでしょうか?

Victor松田氏: その点に関して、もう議論はほとんどありません。昨年までの数字は予測や見積もりではなく、ニールセンが集計した実数です。この調査は12月24日で終わり、次は翌年の第2週から発表です。24日までの数字で+21%というのは、数字的にはあまり意味がありません。ここで逆転したという事実が大きい。PS3が登場し、各社のプレーヤーも一通り出そろってきたことで、ソフトがやっと動き始めたことを示しているだけなんです。

 12月25日以降の年末年始では、さらに売り上げが伸びているでしょう。この期間の数字は近く発表されますが、PS3はクリスマスプレゼントとして使われていますから、ニールセンの数字には“クリスマスプレゼントで開封されるPS3の分”が入っていません。その分は25日以降に効果が出てくることになります。もうゲームオーバーですよ。

 私は過去1年、なぜBDが勝つと考えているのか? と米国のプレスに何度も質問されました。しかし、フォーマット戦争うんうん、規格の優位性うんぬんといった難しい話をする必要がない状況なんです。子供のためにHDコンテンツを買う父親が、どこのレーベルを主に買うのか? 当然、ディズニーでしょう。昨年のアカデミー作品賞の映画が欲しい? ならばライオンズゲートのクラッシュがBDから発売されています。さらに発売予定を見れば、昨年、人気を博したパイレーツ・オブ・カリビアン2、カーズ、カジノロワイヤルなどのタイトルはほとんどがBDで見れるんです。まずこの事実がある。

 加えてサポートする映画スタジオの数が違うということは、単純にひと月で出せるタイトル数が多くなります。どちらの規格を支持しているかといった話ではなく、スタジオの数×発売数で毎月のビジネスを重ねていけば、タイトル数で圧倒的になるのは時間の問題です。

――LGの両互換プレーヤーに関して、どのように捉えていますか?

Victor松田氏: ソニーだけでなく、多くの会社が同じ反応をしています。映画スタジオのマーケティング担当者は、“これでもう1台BDプレーヤーが増えたから良かった”としか言いません。HD DVDプレーヤーが増えたとは捉えられていないんです。BDAとしてはBDプレーヤーが増えてハッピーなだけです。しかし、別の見方をからすれば、こういう製品が出てくるとフォーマット戦争が長くなり、消費者にとっての利益にならないと思います。

 ただ、現実にLGのブランド力を考えたとき、似たような価格でソニー、松下、フィリップス、サムスンのプレーヤーがあるのに、さらにLGの新製品が店頭に並ぶかと言えば難しいでしょう。米国の販売店は非常にシビアです。個人的な意見ですが、LGが極端な安売りなしにビジネスをしようと思っても、すでに隙間がない。両互換プレーヤーはマーケティングの要求から生まれたものではないでしょうか。

――ワーナーのTotal High Defについてはいかがですか?

Victor松田氏: これはコンシューマーのためのものではありません。両規格をサポートする映画スタジオが、流通のトータルコストを安くできるのではないか? とのアイデアから生んだものです。また彼らの調査によると、少し高くとも両互換ディスクの方が良いと考える消費者がいるそうです。平均単価を落とさないための対策という意味合いもあるでしょう。

――最後にこれからの動きをどのように予測していますか? HD DVDに対応した中国製の安いプレーヤーも登場してきます。

Victor松田氏: 日本でHDパッケージが再生可能な家電製品のうち、BDをサポートしている機器は96%です。これに加えてPS3もあります。北米ではそこまで極端な数字にはならないにしても、トレンドとしては同じ。日本市場の方が先に結果が出ただけです。

 つまり、こういうことです。HD DVDはプレーヤーをBDよりも先に商品化できました。しかもプレーヤーの価格は安い。十分な先行期間があったわけですが、その間、BD側は焦らずじっと我慢して準備を進め、やっと第4四半期に各社がBDプレーヤーを発売し、PS3が出荷されて対応の準備が整いました。ビジネスがスタートすると、ほんの2カ月で逆転できたというのが流れです。

 コストに関しても、実はHD DVDプレーヤーが高価であり、中身のコストは第2世代でもBDプレーヤーと変わらないことが米国では報道されています。東芝が戦略的に安い値段を付けただけで、実はコストは同じなんです。では今後はと言えば、売れれば売れるほど部材が安くなる。PS3が売れるほどピックアップが安くなり、BDプレーヤーの値段が下がっていきます。

 今まではこうしたシナリオを“未来形”で予測としてしか言えませんでした。しかし、今ならば“現在進行形”で語れますし、実際の数字も出てきている。あと1年もかからず、数カ月で北米でも決着が付くでしょう。

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