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BD版「オペラ座の怪人」をデノン「A1HD」で聴きたい!山本浩司の「アレを観るならぜひコレで! 」Vol.6(3/3 ページ)

» 2008年01月23日 19時59分 公開
[山本浩司,ITmedia]
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 ドルビーTrue HD のマスタートラックも48kHz/16ビット仕様のようだが、リニアPCM 音声と聴き比べると、明らかに音のキャラクターが違う。しなやかで響きの肌理が細かいドルビーTrue HD、メリハリ調でパワー感のあるリニアPCMという印象なのである。この違いはSACDとCDの違いによく似ている気もするなあ。

 それから、米国盤HD DVDとこのギャガ版BDでは、画質も明らかに異なる。後者のほうが、S/N感がよく、ホワイトバランスも適正でスキントーンも自然、画質がよく練られている印象だ。米国盤の圧縮フォーマットはVC1、ギャガ版はMPEG4AVC。両者で同一マスターが使われているのかどうかは知らないが、コーデックでこんな差が出るのだろうか。解像感を含めてギャガ版おおむね勝利という画質だが、色のパワー感、コントラスト感では米国盤HD DVDのVC1もよいなあという印象もある。MPEG4AVC画質、映像の力強さに乏しいと思うのは、ぼくだけだろうか。

photophoto 「オペラ座の怪人」(c)2004 Scion Films Phantom Production Partnership.

 我が家のシステムでこのBDソフトを観ていて、毎回必ず身を乗り出すシーンが3つほどある。1つ目がチャプター5、クリスチーヌがオペラ座でプリマドンナとしてデビューする場面である。彼女のぴちぴちした若さが弾けるような横顔も美しいが(自然にプロジェクターのリモコンに手が伸び、画質調整態勢に入るぼく)、リハーサル風景からキャメラがくるりとパン、本公演にワープし、満席のオペラ座の響きが加わるその音響設計の見事さに毎度シビれてしまうのだ。

 2つ目が、ファントム(=怪人。演じるのは、ジェラルド・バトラー。いい男です)がクリスチーヌの前に姿を現し、彼女を自分の地下の王国に連れて行くチャプター8から10にかけて。LFE(サブウーファー)を目一杯効かせて不穏な音楽とともに登場するファントム、鏡の中に表れるまでフロント・チャンネルからサラウンドへと彼の声がぐるぐると回り、視聴者もめくるめく陶酔の瞬間を迎える。地下へと降りていく場面は、軽快な8ビートの音楽で満たされるが、それはクリスチーヌの等身大フィギュアもある究極のオタク・ワールドともいえるファントムの世界へ誘う「歓喜の歌」でもある。

 3つ目が、クリスチーヌが幼なじみのラウル伯爵(パトリック・ウィルソン)と愛の歌を交わすのをファントムが物陰からじっと見つめ、嫉妬心を爆発させるチャプター18から19である。この場面のクリスチーヌとラウルのデュエットも素晴らしいが、復讐を誓うファントムの歌の迫力も凄い。情欲の炎で身を焦がしながらの彼の歌を聴いていると、その心情がひしひしと伝わってきて、観ているこっちも落涙を禁じ得ない。これこそ上質な映像と音が一緒になって迫りくるAVの快楽、無上の瞬間である。

 現状ではAVアンプがHDオーディオ・デコードに対応していないため、BDプレーヤーのパイオニアBD-LX80でドルビーTrue HDをデコード、HDMIでAVアンプにPCM 伝送している我が家のシステムでも、こんな感じで楽しめるギャガ版BD「オペラ座の怪人」。HDオーディオ・デコード時のジッター低減対策を本腰を入れて行なったこのデノンのセパレート型AVセンターで体験したら、どんな感覚が呼び覚まされるのだろうか。いち早く体験してみたい。

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AVアンプ | デノン | Dolby | Blu-ray


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