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「プレステージ」のHDオーディオをパイオニア「SC-LX90」で山本浩司の「アレを観るならぜひコレで! 」Vol.5(1/3 ページ)

» 2008年01月09日 14時51分 公開
[山本浩司,ITmedia]

 前回は、ヤマハAVアンプのこの冬のフラグシップ・モデル、「DSP-Z11」の“シネマDSP HD3”についてリポートしたが、'08年最初に本欄で取り上げるのは、同じくパイオニアの旗艦モデル「SC-LX90」である。

photo 「SC-LX90」は2月初旬に発売予定。価格は88万円

 さて、パイオニア製AVアンプは、これまで型番のアタマに「VSA」が付くのが恒例だったが、本機のアタマに冠されたのは、SCの見慣れない2文字。同社企画担当者に聞くと、これは“サウンド・クリエーター”の頭文字だという。意欲的な提案が盛り込まれたこのAVアンプに正面から向き合い、HDオーディオの超高音質を引き出そうというサウンド・クリエーター指向のユーザーに使ってほしいというメッセージが、このSCの2文字に込められているのだろう。

 総重量35.5キログラム。ヘアライン処理されたアルミフロントパネルが採用された、黒漆調仕上げの威風堂々たるルックスが頼もしい。この冬発売された一体型AVアンプの中で、ぼくは本機の仕上げにいちばん魅力を感じる。フロントパネル中央には、5インチ・ワイド液晶ディスプレイが配されており、外部ディスプレイを用いることなく、すべての情報を表示できるのも本機ならではだ。

 SC-LX90は、上にAVコントロールセンター部を、下に10chパワーアンプ部を配した2階建て構造である。厚みのある黒色鋼板の堅固なシャーシに上下各ブロックのパーツが載せられ、絶縁体を介して両者は強固に結合される。上下のAVコントロールセンター部とパワーアンプ部が物理的・電気的に分離された構造なので、上下ブロックごとに最適なグラウンド設計が可能になり、高音質追求を徹底できる。いわば本機は見た目は一体型AVアンプだが、構造的にはセパレート構造というわけである。

photo 背面を見るとセパレート構造であることがよく分かる

 本機でまず注目すべきは、パワーアンプ・ブロックだろう。HDオーディオ時代にふさわしい鮮烈なサウンドを、常識的なサイズの筐体に10チャンネル構成で実現するため、同社開発陣は従来のアナログアンプではなく、高効率なデジタル増幅ユニット「ICEパワー」を使った「ダイレクトエナジーHDアンプ」を開発、新採用した。

 ICEパワーは、'90年代にデンマーク工科大学とバンク&オルフセン(B&O)が産学協同で開発をスタートさせた北欧生まれのクラスDアンプ。多重帰還をかけてS/N向上と動作の安定を図るこのアンプソリューションは、小さな筐体からハイパワーが取り出せることから、昨今ハイエンド工房を含む数多くのアンプメーカーで採用例を見ることができる。

 パイオニアは、約2年間に渡ってICEパワー社と協業、フィードバックをかける出力段のローパスフィルターの周波数を100kHzに上げ、歪み率をICEパワー製オリジナル・モジュールに対して約10分の1に抑えるなどして、ICEパワー史上最高の高音質を獲得、10ch同時出力で140ワット(8オーム)を保証している。

 実際その音は、非常に若々しくフレッシュ。巨大な電源部を積んだアナログアンプのゆったりとした音を聴き慣れたぼくの耳には、ちょっと戸惑ってしまうほどハイスピードでキレのよい音に聴こえる。阪神の下柳投手のタマに目が慣れてきたところに、日ハムのダルビッシュが出てきたようなオドロキといえばいいだろうか(野球ファン以外の方、タトエがわかりにくくてすいません)。

 自室で本機の量産試作機を聴くチャンスがあり、さまざまなHDオーディオ収録ハイビジョン・ソフトを試してみたが、なかでもとりわけその鮮烈な音に感激させられたのは、ドルビーTrue HDとリニアPCM5の両5.1ch音声が収録されているBD映画ソフト「プレステージ」であった。

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