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「プレステージ」のHDオーディオをパイオニア「SC-LX90」で山本浩司の「アレを観るならぜひコレで! 」Vol.5(2/3 ページ)

» 2008年01月09日 14時51分 公開
[山本浩司,ITmedia]

リニアPCMとドルビーTrue HDを聞き比べる

photo (C) Touchstone Pictures. All rights reserved.

 「プレステージ」は、19世紀末のロンドンを舞台に、大がかりな装置を使いこなす2人の若いマジシャン(ヒュー・ジャックマンとクリスチャン・ベイル)の魂の相剋を扱った作品で、原作は、世界幻想文学賞に輝いたクリストファー・プリーストの「奇術師」。マジシャン2人が互いに繰り出す瞬間移動のトリックの探り合いを、ケレン味たっぷりの演出で描いていく。

 監督は、「メメント」「インソムニア」「バットマン ビギンズ」のクリストファー・ノーラン。時間軸を一度解体し、映画的都合に合わせて時制を再構築していく独自の演出スタイルが興味深い。何度か観返すうちに、新しい面白さが発見できるその作劇法は、本を読むように映画を楽しみたいというホームシアター派にピッタリだろう。

 さて、このBDソフトで注目したいのは、5.1chのオリジナル音声が、リニアPCMとドルビーTrue HDの両方で収められていることである。リニアPCMは、非圧縮の48kHz/16ビット/5.1ch。ドルビーTrue HD は、圧縮解凍時に情報欠落することなくオリジナルのPCMデータに完全に戻るというロスレス・コーデックだが、そのオリジナルPCMデータは、48kHz/24ビット/5.1chである。

 SC-LX90の聴かせるサラウンドサウンドの最大の特徴は、音がスピーカーにまとわりつかない、音離れのよい、浮遊感のある音場表現にある。わが家では、フロントスピーカーに15インチ・ウーファーを採用したJBL の大型ホーン・スピーカー「S9800SE」を、サラウンドスピーカーにリンの小型スピーカー「UNUK」を4本使った6.1ch システムを組み上げているが、そんなサイズも形式も異なる組合せでも、非常にまとまりのよい濃密なサラウンドサウンドを実現できることが確認できた。やはり、この冬最高レベルのサラウンド表現力を持ったAVアンプであることは間違いないだろう。

 とくに、同社が培ってきた自動音場補正機能「MCACC」を用いて、フロントスピーカーの周波数特性をターゲットカーブにしたEQ(イコライザー)をかけてみると、非常に緻密で雄大なサラウンドサウンドを聴くことができた。

 そんなキャラクターを持つSC-LX90で聴き比べる「プレステージ」のリニアPCMとドルビーTrue HDの音の違いが興味深い。

 パイオニアのBDプレーヤー「BD-LX80」と本機をHDMI接続し、ドルビーTrue HDのビットストリーム出力を受けて本機でデコードしてみたが、リニアPCM音声に比べて、各チャンネルの音のつながりがより向上し、天井の高さ、空間の広がりが強く印象づけられる音となる。とくに実在の伝説の電気技師、ニコラ・テスラが発明したマシンによる放電風景のダイナミックなサラウンドサウンドは、ドルビーTrue HDの音の魅力をひときわ鮮やかに伝え、印象深い。

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