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「プレステージ」のHDオーディオをパイオニア「SC-LX90」で山本浩司の「アレを観るならぜひコレで! 」Vol.5(3/3 ページ)

» 2008年01月09日 14時51分 公開
[山本浩司,ITmedia]
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音場のドルビーTrue HD、音像のリニアPCM

 一方、同じくHDMI接続で聴くリニアPCM音声で好ましいのは、1つ1つの音のリアリティの確かさである。2人のマジシャンのセリフや放電の効果音などが、浸透力のある彫りの深い音像で描かれる。「音場のドルビーTrue HD、音像のリニアPCM」。この違いはとても興味深い。

 今世紀に入った頃から、ハリウッドでは映画の5.1chマスターが48kHz/24ビット仕様で仕上げられることが多いようだが、本作の場合、ドルビーTrue HDはそのマスター音源をそのままロスレス圧縮、リニアPCMは24ビット音声をなんらかの手法で16ビットデータに丸め込んでいるわけである。制作手法の違いによる音の差なのか、そもそもコーデックにそういう音のキャラクターがあるのか、そこのところは判然としないが、とにかく先述したような音の違いをぼくは2つの音声に感じた。

 また、本作のようにドルビーTrue HDとリニアPCM5.1chという2つのHDオーディオ音声が収録されたBDソフトが、昨今増えつつあるのも興味深い。高圧縮ロッシー・コーデックのAAC音声が採用されたHD放送に比べて、ハイビジョン・パッケージソフトの圧倒的なアドバンテージは、その高音質にあるとぼくは考えるが、HDオーディオ音声が2種類入っていることで、それぞれハイクオリティな音のキャラクターの違いを楽しむことができるのは、とてもありがたいことだと思う。

 さて、SC-LX90には、従来のオーディオの常識を覆すような、たいへん興味深い必殺機能が搭載されている。それが「フルバンドフェイズコントロール」である。

 これは、クロスオーバーネットワークを介して帯域分割を行なうマルチウェイ・スピーカーに不可避な群遅延を測定検出し、逆補正を加えて位相特性の乱れを正すというもの。これを使えば、3ウェイ・ホーン型システムのうちのJBLが、広帯域なフルレンジスピーカーのような自然な音で鳴ってくれるかもしれないわけで、興味津々でその効果を試してみた。

photo 「フルバンドフェイズコントロール」による補正(出典はパイオニア)

 確かに音がすっとまとまり、たいへん整いのよいサウンドになることが確認できる。サラウンド・チャンネルのリンUNIKにまでこのフルバンドフェイズコントロールをかけてみると、本機特有の音離れのよい、緻密で広がり感豊かなそのサラウンドサウンドのよさが、よりいっそう強調されるのが分かった。

 しかしじっくり聴いていくと、JBL「S9800SE」のエネルギッシュなサウンド、その勢いのよさがやや減退しているように思えないでもない。なんか優等生すぎる音というか、ジャイアンツに移籍し、ヒゲを剃った小笠原のような、というか……。

 いやいや、ちょい聴きで結論を下すのは早かろう。じっくり取り組んで、しっかりこのフルバンドフェイズコントロールの効果を見極めたいと思う。そんなわけで、わが家への本機の導入を決めたのだが、このAVアンプでちょっと気に食わないのが、スピーカー出力端子の間隔の狭さとその形状。10ch分の端子を用意しなければならないのだから仕方ないのかもしれないが、端子間が狭すぎるうえにガードで覆われているために、ぼくが愛用しているワイヤーワールド製のような端末をY ラグ処理しているスピーカーケーブルがどうしても入らないのだ。こういうところも、ぜひハイエンド流儀を貫いてほしい。

 なお、本機は12月下旬の発売が予定されていたが、シリコンプレーヤーとの接続の仕様変更に伴い、部品調達が遅れ、2月初旬に発売が延期されるとのこと。首を長くして発売を待ちたい。

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