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» 2008年02月08日 10時41分 UPDATE

DVDレビュー:れこめんどDVD:「ベクシル−2077 日本鎖国−(特別装幀版)」 (1/2)

「APPLESEED」「ピンポン」で映画ファンを驚かせた曽利文彦監督の最新作「ベクシル」。“3Dライブアニメ”とうたわれる脅威の映像表現はもちろん、そのテーマ性にも注目したい。

[飯塚克味,ITmedia]

鎖国=コミュニケーションの喪失!?

「ベクシル−2077 日本鎖国−(特別装幀版)」

発売日:2008年1月25日
価格:10290円
発売元:エイベックス・マーケティング
上映時間:109分(本編)
製作年度:2007年
画面サイズ:ビスタサイズ
音声(1):ドルビーデジタル/5.1ch/日本語
音声(2):ドルビーデジタル/2.0ch/日本語

 「ピンポン」で日本中の映画ファンを驚かせた曽利文彦が、5年ぶりに手掛けた監督作「ベクシル−2077 日本鎖国−」。3Dライブアニメーションとして製作された本作は、改めて日本の映像技術が世界に誇るものであることを証明してくれた。DVDはアニメファンの多様なニーズに応えて、3種類発売されたが、今回は最強仕様である4枚組(HD DV&スタンダードDVDツインパック+特典ディスク2枚)で本編クオリティや特典の中身をチェックしてみた。

 昨年夏の話題作として劇場公開された「ベクシル−2077 日本鎖国−」。アメリカであの「タイタニック」にVFXスタッフとして関わり、帰国後も「ピンポン」や「APPLESEED」など映像技術を効果的に使用した作品を発表し続けてきている曽利文彦監督だけに、世界に通用するスケールの大きな作品となっている。すでに世界129カ国での公開も決定しており、スイスのロカルノ映画祭では何とオープニング作品に選出されている。

 物語は、近未来の2077年が舞台となる。大企業・大和重鋼が国家を牛耳るようになり、2067年から鎖国状態に入った日本。国土は完全に電磁波で覆われ、衛星から写真を撮影することも不可能になっている。そんな日本だが、テクノロジーの進化は著しく、海外には大和重鋼の商品があふれ返っているという状況になっている。日本は国際協定に反するアンドロイドの開発を進め、アメリカの特殊部隊「SWORD」は日本の状況を探るため、数名の隊員を潜入させることにするのだが……。

 ここまで書けば大体お分かりだと思うが、この映画における日本は、現在、核武装して世界を恐怖に陥れている北朝鮮を彷彿させる存在である。こうした設定は実に微妙な問題で、そこに反感を覚える人もいるかもしれない。

 実は昨年夏の公開では「トランスフォーマー」「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」「オーシャンズ13」などと公開がぶつかり、期待されたほどの観客層を獲得することはできなかった。これは日本が鎖国するという設定が日本人そのものにはピンと来なかったことが理由に挙げられよう。日本は明治維新の開国以来、いいも悪いも国際化に突進してきただけに、一般の人はその設定に現実味を感じられなかったのかもしれない。

 監督自身も特典のインタビューで「こうしたことは99%起きないと思う」と語っているが、その一方で「まったく起きないとは言えないはず」とコメントしている。加えて言うと曽利監督が伝えたかったのは現代におけるコミュニケーションの喪失であり、その最たる象徴として“鎖国”というキーワードが出てきたとは考えられないだろうか?

 筆者も最初見たときはその奇抜な設定にばかり頭がいってしまったが、繰り返し見直すうちにだんだんとテーマが身に染みてくるようになった。恐らく海外の人であればもっと素直にこの作品に接することができよう。そういう意味ではDVDを手にして繰り返し見直すことは本作にとって必要不可欠なことなのかもしれない。

限りなく実写に近い映像表現

 本作の最大の見どころは“3Dライブアニメ”とうたわれているように、その映像表現だ。限りなく実写に近づいたその質感はピクサーなど海外のCG作品にまったく引けを取らない。これまでの日本のアニメは宮崎アニメに代表されるように、極めて2次元的な作品が中心で本作のような立体感を伴うものは、やはり曽利監督が製作を手掛けた「APPLESEED」などわずかに留まる。

 ユニークなのは普通のアニメなら実写でできないようなカメラアングルやカメラワークを使うはずなのに、あえて実写で撮れる可能性のある映像になっている点だ。モーションキャプチャーで撮影されたデータをベースにCGで加工を加えていくので、キャラの動きは自然だし、編集のリズムも実写映画的に処理されている。

 映画をこう作った意図を曽利監督は「予算さえあれば実写でも同様のことができる」とアピールするためだと語っている。曽利監督は現在、実写映画で女版座頭市である「ICHI」を製作中だが、どのような作品に仕上がるのか期待せずにはいられない。

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