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ダビング10時代のエアチェック考麻倉怜士のデジタル閻魔帳(1/3 ページ)

» 2008年07月10日 11時00分 公開
[渡邊宏,ITmedia]
photo ダビング10に対応する、ソニー「BDZ-X90」

 紆余(うよ)曲折あり当初予定から送れること約1カ月、7月4日午前4時からの開始となった「ダビング10」。昨年冬モデル以降の各社レコーダーの多くが対応しており、利用することで、これまで以上に柔軟な番組録画と運用が可能となった(各社レコーダー、ダビング10対応予定一覧)

 このダビング10、ただ単純に使うと、HDDに録画した「ダビング10」コンテンツのディスクが10枚作れるだけだが、うまく使えばコピーワンス時代では実現しなかった楽しみ方も可能だ。

 デジタル・メディア評論家 麻倉怜士氏の月イチ連載『麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」』。今回はエアチェック歴40年以上という麻倉氏にダビング10、そしてダビング10時代にのエアチェックについて尋ねた。

求められる「ダビング10-2」の考え方

――当初は6月開始の予定だったダビング10がいよいよ開始されましたね。

麻倉氏: 本当に難産でしたが、急転直下の開始となりました。Blu-ray Discに対する課金が決定されたのが大きな要因でしょう。眺めていると、著作権団体とJEITA、そしてメーカーの論争には、総務省/経産省/文化庁の代理戦争的なニュアンスも含んでいるとように思えました。開始こそはされましたが、オリンピック前の緊急避難というニュアンスが多分にあることは確かです。

 10枚作られたハイビジョンディスクが流通してしまうといった事態も想像できるだけに、いまは休火山状態で、2011年までにはまた一悶着(ひともんちゃく)あるかもしれません。ユーザー視点からすれば、セカンドベストですらなく、フォースベストともよぶべき状態で、根本的な解決はしていませんから。

 これまでにも何度か言及しましたが、コピーワンスの問題点は(1)ムーブの失敗の可能性、(2)ハイビジョンでHDDに保存しているのに、ムーブ先によってはスタンダードになってしまい、ハイビジョンのマスターが失われてしまうこと、(3)孫メディアが作れない(バックアップが取れない)ことの3点でした。

 これらの不便さに対して検討が進められたはずですが、できあがったのはダビング10です。1番目に対してはある程度の解決になっていますし、2番目についてもBDが普及すれば問題は小さくなっていくでしょう。ただ、3番目については解決されていません。人とコンテンツの文化的な関係を考える必要がありますね。

 メディアに書き出してまで保存したいコンテンツとは、そのひとにとって非常に大切なものであるはずです。人生の節目となるコンテンツであるかもしれません。ですが、ダビング10環境下では再生装置が壊れてしまうとなくなってしまいますし、フォーマットチェンジが起これば、永久に失われてしまうかもしれません。メディアへ書き出すとコピーネバーになってしまいますから、コピーワンスのディスクが10枚できるだけです。書き出した後は、行き場がない状態です。

 これはとても大きな問題だと思います。HD時代の放送コンテンツは内容が非常に良くなってきたので、4K2Kや8K4Kへの移行といったメディアチェンジに対応するだけのマージンが欲しいところです。それに、積極的に編集をするマニア層にとって、書き出したものが編集できないのはどうしようもありません。ダビング10にはコンピレーションが作りやすいというメリットもありますが、HD映像は容量が大きいので、HDDに入れっぱなしという訳にもいきません。

 そこで提案したいのは、孫コピーとHDDへの書き出しが可能な「ダビング10-2」ともいうべき規格/考え方です。iVDRに利用されている著作権管理技術「SAFIA」ならば世代管理も可能ですし、技術的な改善は今後も進めるべきでしょう。ダビング10の10回という回数は3人家族がそれぞれ3回というのが理由のようですが、家族全員が同じ内容をそれぞれ3回もコピーするでしょうか? 「1つのコンテンツを複数回コピー」というだけではなく、「1人が複数世代のコピーを数回」といったアプローチも検討されるべきではないでしょうか。

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