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“BRAVIA史上最高画質”「KDL-46XR1」で観る「ハンコック」の面白さ山本浩司の「アレを観るならぜひコレで!」Vol.33(2/2 ページ)

» 2009年02月04日 11時31分 公開
[山本浩司,ITmedia]
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液晶テレビに対する先入観を覆す画質

 デザイン、仕上げはソニー製品らしく、洗練されている。両サイドのスピーカーは、透明なアクリルを介してディスプレイ本体横に取り付けられていて、あたかもスピーカーが空中に浮かんでいるかのよう。このフローティング・デザイン、以前にもソニーテレビで試みられたことがあるが、ソニー製品ならではのポップで軽快な雰囲気があって、ぼくは大好きだ。

 しかし、その音質はあまり褒められたものではない。BD ROMの映画などを観るとラウドネスがじゅうぶんではなく、声がやせていてリアリティに乏しい。もちろん他社の製品に比べて大きく音質が劣るというわけではないが、ソニーだからこそ期待したい、“世界最高音質のテレビ”の登場を、と思う。

 さて、本機でさまざまな映像ソースをチェックしてみたが、その画質は、称賛されてしかるべきの完成度の高さだと思った。しっかりと沈む黒をベースに安定したホワイトバランスを実現し、そこに知的に抑制された鮮やかな色が描かれるというイメージ。従来の液晶テレビに対する先入観を覆す立派な画質である。

 前回触れたシャープLC-65XS1は、映像モードによってはRGBをそれぞれ独立させて駆動し、原色の鮮やかさを強調する画調を狙っていることが分かったが、XRシリーズのLEDバックライトの採用は、あくまで部分制御によるダイナミックコントラストの向上を狙ったもの、RGBのLEDであえて白色光源をつくり、色はコンテンツの本来の色になるべく忠実に、という思想で開発されているということが、映像をチェックしてみるとよく分かる。繰り返すが、“知的に抑制された鮮やかな色”なのである。

photo 「ハンコック」(Blu-ray Disc)。価格は4980円。発売元はソニー・ピクチャーズ エンタテインメント。102分(本編)

 そんなわけで、KDL-46XR1で楽しんだBD ROMの中でも、とくに「シネマ」系映像モードで観るBD ROM「ハンコック」が実に面白かった。

 「ハンコック」は、今や全米を代表する映画スターになった感のあるウィル・スミスが、超絶的なパワーを持つ「嫌われ者」のスーパーヒーローを演じるという、ちょっとヒネリの効いたアクション映画。彼が演じるハンコックを、陰りの見える世界唯一の超大国・アメリカのメタファーとして見ることもできる、なかなか興味深い作品である。

 舞台は、現代のロサンゼルス。太陽の光がさんさんと降り注ぐ街にふさわしい、明快でカラフルな画調で統一されている。本機で見る黒人俳優ウィル・スミス、共演する白人美人女優シャーリーズ・セロン(よく陽に焼けている)、両者のスキントーンは実に安定していて、ミディアム〜アップショットでは、思わずハッとさせられるディティールの彫り込みを実感できる。

 さて、本機KDL-46HR1の映像モードをチェックしてみると、「シネマ」モードが2種類用意されていることが分かる。ソニーの企画担当者にたずねると、どちらも50ルクス近辺のやや暗めの視聴環境を想定した映像モードだという。そこで、白熱灯のシーリングライトを調光して50ルクス環境で「シネマ1」「シネマ2」を見比べてみた。

 まずどちらの映像モードも黒がよく沈み、実にしっかりしたハイコントラスト映像を表示することが分かる。色温度の初期設定は両者とも6500ケルビン。LED光源は、階調を犠牲にすることなく、ホワイトバランスのトラッキングを精密にとることができるが、さすがに本機もそこは丁寧にチューニングされており、6500ケルビンの設定でも暗部が緑がかったり、ハイライトが赤みがかったりすることなく、安定したグレートーンが得られている。

 色再現もよく似ており、モニター調を基本としながら、そこにわずかにエンターテインメント色を加えたというべき画調である。では何が違うか。じっくり見比べていくと、「シネマ2」のほうが暗部階調の描写が細かいことが分かった。

 例えばラスト・シーン。シャーリーズ・セロンとジェイソン・ベイトマン演じる夫婦が、アイスクリームをなめながら夜の遊園地を歩く場面などの暗部のグラデーションなど、「シネマ2」のほうが豊かに表示されるのである。

 ところで、エンディング近くで2人が夜空に浮かぶ月を見上げるところがあるが、その月の周囲がほんのり明るくなる現象が見られた。確認のためにパイオニアのプラズマモニター「KRP-500M」で見てみたが、やはり本機ほど月の周囲が明るくなることはなかった。このへんにLEDバックライトのエリア制御特有のクセが出ているのだろうが、その瑕疵はほんのわずかなもの。全編を通して気になったのはこの場面だけだった。よくここまで部分点灯によって生じる不自然な光り方を抑えたものだと思う。

 この優れたコントラストの資産を生かし、今年はぜひコンテンツと照度環境に合わせてオートマティックに高画質を提供する、ソニー流“おまかせモード”に挑戦してほしい。

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