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» 2011年12月09日 19時56分 UPDATE

「小手先のテクニックは必要ない」  米Shureの開発者に聞いた「SRH1840」 (1/2)

SHUREの「SRH1840」は、同社が初めて投入する開放型(オープンバック)型ヘッドフォンであり、新しいフラグシップでもある。製品発表のために来日した米Shure Incorporatedの開発担当者に詳しい話を聞いた。

[芹澤隆徳,ITmedia]

 シュア・ジャパンが12月6日に発表した「SRH1840」および「SRH1440」は、同社が初めて投入する開放型(オープンバック)型ヘッドフォンだ。これまで、密閉型ヘッドフォンや“耳栓型”といわれるカナル型イヤフォンなど遮音性に優れた製品をラインアップし、市場での評価も高い同社だけに、今回のニュースについては意外な印象を受けたユーザーも多いのではないだろうか? 製品発表のために来日した米Shure Incorporatedの開発担当者に詳しい話を聞いた。

ts_shureint01.jpgts_shure02.jpg 米Shureのアソシエイト・プロダクト・マネジャー、Michael Johns氏とモニタリング・カテゴリー・ディレクターのMatt Engstrom氏。Engstrom氏は現役のミュージシャンであり、44台ものヘッドフォンを所有するコアユーザーでもある。新製品の「SRH1840」(右)

 まず密閉型と開放型の違いについてたずねると、「どちらの方が良いとはいえない。密閉型は遮音性に優れているため、さまざまな場所で利用できるが、音の逃げ場がなくて中にこもってしまうこともある。開放型にはそれがなく、ニアフィールドモニターのような音が得られる」(Engstrom氏)という。ニアフィールドモニターとは、レコーディングスタジオなど音楽制作の現場でミックスバランスの確認などに使用される小型のスピーカー。家庭で再生したとき、意図した音が得られるようにコンシューマー向けオーディオシステムに近い環境で確認するためのものだ。

 自らもサウンドエンジニアの仕事をしていたというJohns氏は、「アーティストがレコーディングの時に(音漏れのある)開放型を使うことはない。しかし、ミキシングの際には家庭環境を意識してオープンバックでマスタリングすることもある。市場調査の過程でスタジオユースで開放型のニーズがあることに気づいた」と話す。「シュアには、競合他社がやっているから作ろうという発想はない。あくまでも市場の声を聞いて製品を開発している」(Engstrom氏)。

 とはいえ、過去に経験がないだけに開発はゼロに近い状態でスタートしたようだ。「これまで手がけて来た密閉型の設計が役立つ部分もあったが、当初は他社製品をたくさん購入し、学びながら開発を進める必要があった」。開放型のメリットを生かしながら、目指す音を実現するために、開発にはおよそ1年半の時間を要した。

 SRH1840のドライバーは、ネオジム磁石を採用した40ミリ径ダイナミックタイプで、振動板は軽さが特長のマイヤー素材。決して珍しいものではないが、センター・ポールピースに通気孔を設けてドライバー前後の均一性を確保したり、ドライバーの背面にスクリーンを配置するなど、振動板が起こす空気の動きに気を配った設計になっている。また振動板をよく見ると、表面に放射状の線が入っている。これは、「剛性の確保に加え、段差をつけることで常に同じ動きをするようにした。左右のマッチングも良くできる」というものだ。

ts_shureint03.jpgts_shureint04.jpg SRH1840のドライバーユニット。振動板に放射状の凹凸が見える

 出来上がったSRH1840は、“モニター”と呼ぶにふさわしい周波数特性を備えていた。発表会の場でJohns氏は、周波数特性のグラフを指しながら「ダンプはまったくない。中域はあくまでフラットで、高域にかけて伸びがある」と胸を張ったが、思い起こせば従来製品の評価でも同じようなフレーズをよく耳にした。もちろん偶然ではなく、目指しているものが常に同じだからだ。

 「シュアのゴールは、原音を忠実に再生すること。アーティストやエンジニアの仕事に正確な表現を与えるためにデザインされており、音に色付けをしたり音を変えるものではない。自宅でひいたピアノの音とヘッドフォン越しに聞いた音、この2つをいかに同じにするかを常に考えている」(Engstrom氏)。

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