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「小手先のテクニックは必要ない」  米Shureの開発者に聞いた「SRH1840」(2/2 ページ)

» 2011年12月09日 19時56分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]
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 同じことはデザイン(外観)にもいえる。デュアルフレーム構造や6061-T6アルミ合金製のヨークは高い耐久性や機能美を感じさせるが、スタイルやカラーリング自体はオーソドックスかつシンプル。自己主張は控えめだ。「例えば『SM58』というマイクは音楽制作の現場で長らく使われているが、これを例えばiPhoneのようにグロッシー(光沢)な黒にしても音質は変わらない。スタジオで使い続ければ、きっと塗装は10年ももたないだろう。シュアはクオリティーをデザインするのであり、小手先のテクニックは必要ない」(Johns氏)。

デュアルフレーム構造のヘッドバンド部(左)。6061-T6アルミ合金製ヨーク。航空機にも使われる“エアクラフトグレード”の素材だ(右)

ケーブルはMMCXコネクターによる着脱式。既存のイヤフォン製品と互換性はないというが、コネクター自体は共通で、周囲の干渉さえクリアできれば共用ケーブルは作れそうだ。実際、手持ちの「SE535」に「SRH1840」のケーブルを取り付けることができたが、その逆は不可だった。ただし、実際の使用には適さないと思われるので、サードパーティーに期待したいところだ(左)。6角形パターンのステンレス製グリル(右)

 こうしたプロユース前提の実用本位なデザインや音は、オーディオファンを中心とするコンシューマーに受け入れられる重要な要素だ。ただ1つ気になるのは、インピーダンスが65オーム、音圧感度は96dB/mWというスペックにより、使用時にはヘッドフォンアンプが必須になるという点。ハードルを高く設定することで、市場を狭くしてしまうとは考えなかったのだろうか?

 Engstrom氏は、「日本ではコンシューマーの市場も大きいが、世界中が同じかと言えばそうではない。しかし、プロフェッショナルのエンジニアがほしいものを作れば、少なくともマーケットの規模は確保できる」と話す。「コンシューマー用とうたった製品をプロが購入することはない。しかし、『これはプロ用』とうたったものなら、プロはもちろん、コンシューマーも手に取ってくれる。もちろん、われわれはプライドを持ってプロの方々も満足できるものに仕上げた」。

 ちなみに、SRH1840を駆動するヘッドフォンアンプについては、「最適なアンプを探し、見つけることも楽しみの1つと考えてほしい」と、いかにもオーディオファン視点の答が帰ってきた。「SRH1840は、最大1ワットの入力を許容できるため、大抵のヘッドフォンアンプは問題なく試すことができる。インピーダンスをマッチさせるなど基本も重要だが、実際にいろいろと試してほしい。ただ、ポータブプル用のヘッドフォンアンプはイヤフォン向きの製品が多いため、据え置き型のほうが望ましいかもしれない」(Engstrom氏)。

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