レビュー
» 2012年06月15日 19時58分 UPDATE

“置く”だけで音の悩みを解決? ヤマハの調音パネル「ACP-2」に驚いた (1/2)

パネルを1枚、部屋に置くだけでオーディオの音が変わる。にわかには信じがたいかもしれないが、理屈を知り、実践してみると認識が大きく変わることもある。今回はそんな事例のお話だ。

[野村ケンジ,ITmedia]

 オーディオにとって、製品選び以上に大切なのが「環境を整えること」、良質なリスニングスペースの構築だ。これがしっかり作り上げられていないと、せっかくのオーディオシステムが本領を発揮できない。だが、現実問題としてオーディオに最適な空間を理想的なカタチで作り上げられるのはごく少数の話だろう。マンションやアパートでは間取りが限られるし、一念発起して一軒家を建てたとしても、凝りだしたらコストに際限がなくなってしまうリスニングルーム作りは、同居者に共感を得られにくい存在ではある。

 とはいえ、決してあきらめることはない。間取りが多少悪くても、反響音が盛大なマンションであっても、何とか解決する方法は巷にごまんとある。また、壁に穴を開けまくったり、べたべたと吸音材をはりまくったりと、音質優先のあまり“いかにも”な状態にすることなく、あくまでもスマートに、見た目も“いい感じ”に仕上げることができる製品もいくつか登場してきた。その1つが、この4月にヤマハから発売された、調音パネル「ACP-2」だ。

ts_choon025.jpgts_choon06.jpg ヤマハの調音パネル「ACP-2」シリーズは3色展開。価格は、ホワイトが4万7250円、ブラウンとナチュラルは6万3000円。大きさは幅が約60センチ、高さ約120センチ、厚さは3センチ

 こちらの製品、一見すると厚手の板(実寸は28ミリ厚)にスリット状の穴を開けただけのように見えるが、その内部は縦長に仕切られたボックス構造となっており、自身が音響共鳴管として働き、吸音作用をもたらすようになっている。同時に、硬い表面を持つパネル形状とすることで、吸音とともに適度な散乱効果も得られるという。

ts_yamahapanel012.jpg 調音パネルは長短2本の音響共鳴管を縦につなぎ、それを横に連結してパネル状としたもの(ヤマハの技術資料より)

 単に効果だけ羅列しても分かりにくいかもしれないので、少し技術的な解説をさせてもらおう。まず音響共鳴管とは、狭いパイプのなかに音を取り込むことで、音を増幅したり、減衰させたりする仕組み。一般的にはパイプオルガンやスピーカーボックスのパスレフポートなど、増幅する方が一般的だが、開口部が1つしかない閉じた共鳴管は、入り込んだ音を減衰する効果を持っている。また、共鳴管はその長さで増幅/減衰する周波数が決まってくる仕組みとなっているのも特長だ。ACP-2ではこの仕組みを利用し、内部に10本の音響共鳴管を用意、スリット状の開口部の位置を1つ1つ変えることで、広い帯域に渡って吸音効果をもたらしているのだ。

 なお、ヤマハは2010年にも同じ構造を持つ調音パネル「TCH」を発売しているが、ACP-2では長さが80センチから120センチに拡大した分、より幅広い帯域の吸音効果を実現しているという。

 実はこちらの製品について、以前にヤマハのデモルームでデモンストレーションを受けてたことがあった。そのときに確かな手応えを感じたため、改めて一般の家庭での効果を検証してみたいと思い、今回のレビューを企画したのだ。というわけで、より読者の参考になるよう、筆者の「ミニマムシアター」ではなく、全く音の対策を行っていないマンションで取材を行うことにした。

音に恵まれないオーディオルーム

 場所は都内某所。一般的な作りの、鉄筋コンクリート造りのマンションだ。そのうち、仕事部屋として使っている6畳ほどの部屋と、12畳ほどのリビング・ダイニングという、2部屋でのテストを行うこととした。

 まずは仕事部屋から。こちらには、ブックシェルフスピーカーのクリプシュ「RB-51」と小型アンプ(CAROT ONE ERNESTOLO)、USB DAC(HRTのMusic Streamer II)というとてもコンパクトにまとめ上げられたPCオーディオシステムが設置されている。

ts_choon012.jpgts_choon013.jpg 窓側の天井から大きく張り出した梁(はり)。下で手を叩くと反響して聞こえるほどだ(左)。「ACP-2」を箱から出す。手前に見えるのが付属のスタンド。縦に並べて梱包(こんぽう)されているため、長さはあってもあまりかさばらない(右)

ts_choon01.jpgts_choon02.jpg ブックシェルフスピーカーのクリプシュ「RB-51」と小型アンプ(キャロット・ワン ERNESTOLO)、USB DAC(HRTのMusic Streamer II)というシステム

 まずはそのままの状態で音を聴いてみると、角部屋(壁紙や窓があるものの2面がコンクリート直)のためか、天井から大きな梁(はり)が出ているためか、反射音が盛大に鳴り響いている。とくに左側(窓側)からのブーミーな低音が目立ち、おかげでPCオーディオ本来の実力が全くといっていいほど発揮できていない。左側からの低音は、窓側にある梁(はり)の影響もあるようだが、それにしても、かなりの悪環境だ。

 これにACP-2を設置するとどう変化するのだろう?

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