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「ICC LED-TV」でサッカーが見たいCEATEC JAPAN 2012(1/2 ページ)

» 2012年10月05日 13時17分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]

 「CEATE JAPAN 2012」の展示で、「これだけは見ておきたいもの」を1つ挙げるなら、シャープの「ICC LED-TV」をお勧めする。昨年に続いての展示になるが、第2世代ICCを使ったデモは国内初。なにより目の肥えたAV評論家やライター各氏が、“魔法のような”と口をそろえる映像は一見の価値がある。

シャープブースのICC LED-TVシアター

 ICCは「Integrated Congnitie Creation」(統合脳内クリエーション)という造語の略であり、「光クリエーション技術」という呼び方もされる。物体が光を受けたときにどう反射するか? という点に着目し、映像を見た人が脳内でその物体を「〜らしい」と認知しやすい形に処理を加える。基本的にはパターンマッチングで映像の種類を認識し、変換テーブル(データベース)で置き換えるという手順のようだが、具体的にどのようなパターン検出を行い、何をもって置き換えるのかといった細かい部分に関しては、いまだ非公表だ。

ICCを開発したアイキューブド(I3)研究所の近藤哲二郎代表

 それでもデモ映像を見れば、従来の映像処理とは次元が異なることが分かる。同サイズのフルHDテレビとの比較デモでは、まさに“ベールをはいだような”という表現がぴったりのクリアな映像を見せてくれる。画面内にあるオブジェクトがすべてリアリティーを持ち、2Dなのに自然な立体感を感じる。

 ICCを開発したアイキューブド(I3)研究所の近藤哲二郎氏によると、ポイントは「自然界の光り方(反射)と同じものを作り出す」ことだという。川や芦ノ湖の映像で水面を見ると、光が水の透明感や質感、立体感などに大きく影響していることが分かる。たしかに元は同じ映像なのに、ICC LED -TVの画面からは湖の広さや空の奥行き、あるいは水や空気の冷たさまで、容易に想像できる。しかも、それが画面の隅々まで行き渡っている印象だ。

 もちろん、自然界と同じ光り方といっても、厳密には同じではない。バックライトの最大輝度を超える明るさのモノも世の中にはたくさんあるからだ。近藤氏によると、「人の脳は絶対輝度ではなく、差分を感じとる。自然界と同じ輝度を求められるかといえば、それは違う」。あくまで脳内での認知が目的のため、目的に沿っていれば相応の単純化も行える手法なのだろう。

 デモ映像の中で個人的にもっとも気になったのは、芦ノ湖ですれ違う2隻の船のシーンだ。フルHD映像ではぶつかりそうに見えるのに、ICC LED-TVでは、ちゃんと余裕のある距離をとって行き違っていることが分かる。理由を尋ねると「それぞれの位置関係が正しく認知できる。(それぞれの船は)その距離の解像度で見えている」。ICCが操るのは光だけではない。2隻の船がしっかりと距離を置いている「らしい」と脳が判断できる材料を、光り方や解像度などによって映像が提供しているのだろう。「ビジョンは脳の中で展開されるもの。(ICCは)脳が、いとも簡単に展開できる映像を作り出す」(近藤氏)。


 普段、テレビを見ているとき、物体の位置関係を見誤るケースは意外と多い。例えばサッカー中継などで、通るように見えたパスがカットされたり、逆に変な方向に飛んだように見えたパスが通ったり。そうしたシーンをみるたびにちょっとしたストレスを感じるのだが、ICC LED-TVで見たら、正しく認知できるのだろうか。

 現時点では、ICC LED-TVのデモンストレーションで視聴できる素材は限られており、ICCが一般的のテレビ視聴に及ぼす効果のほどは想像するしかない。ただ、今回のデモンストレーションでは2つのヒントがもらえた。

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