先週ドイツ・ベルリンで開催された「IFA 2011」では、国内メーカーが進めている次世代の技術開発を垣間見ることができた。東芝は、4K×2Kパネルを採用した「ZL2シリーズ」を披露し、シャープは8K×4Kディスプレイを自社ブースに設置してスーパーハイビジョンの映像を流した。そしてもう1つ、クローズドなスペースでシャープが展示していたのが、“ICC+4K×2K”の技術デモンストレーションだ。
現在のフルHD(1920×1080)に続く4K×2K(3840×2160ピクセル)、そして8K×4Kと、次世代TVへの流れの1つに高精細化がある。精細度が向上すればそれだけ絵のディテールが細かくなり、表現力のアップも期待できる。これは従来のアナログTVからフルHDのデジタルTVへと移行したユーザーにはよくお分かりだろう。紀行ものであれば大自然や海外の街の情景がシャープでくっきりと表現され、サッカー中継では芝生の目や観客の様子までより大迫力で臨場感が伝わってくる。4K×2K、そしてさらに先の8K×4Kの世界が到来するようになれば、映像の世界はさらにリアリティーを増すはずだ。
とはいえ、やはり問題はコンテンツ。フルHDが出始めた初期に制作された作品の多くがSD画質で、フルHD向けにアップコンバートされたものが多かったように、現状では4K2Kのディスプレイがあっても見るものがほとんど存在しない。SD時代のDVD、フルHDにおけるBlu-ray Discのような光学メディアもない。しかし、シャープが公開した4K×2KパネルとICCの組み合わせは、そうした状況における1つの回答になり得る。
ICCは、I3(アイキューブド)研究所が開発したアップコンバート用の超解像技術だ。「Integrated Gongnitie Creation」の略であり、直訳すると統合脳内クリエーション。言葉では説明しにくいが、「〜らしさ」「〜感」といった本来絵が持つべき表現力やディテールを画面上に再現し、人の持つ「〜だったらこうなるだろう」という思考を補完するものだという。
人というのは、目で見た映像をいったん頭の中で再構成し、そのうえで対象物の認識を行う。カメラで写された映像と自分で直接見た映像の感覚が異なるのもそのせいだ。さらに知覚したいものについては、より細かいディテールを得ようとする。こうした脳内の作業を補完し、より自然な形で目から頭に入ってくる映像を作るのがICCといえるだろう。実際にICCで行われる作業は、入ってくる映像のパターンマッチングと、その映像の変換テーブルを用意することで、同じデータソースながらより表現力のアップした映像が出力されるという仕掛けだ。
このICC+4K2Kのすごさは、一目で分かる。今回体験したデモコーナーでは3つのTVが並べられ、右端がプレゼンテーションファイルの表示を兼ねた通常のフルHD TV、左端がそれをアップコンバートした4K2K映像、そして真ん中正面がICC+4K2Kといった構成になっていた。3つのTVに同時に映像が出力され、その画質を比較することができる。通常のコンテンツをアップコンバートした4K×2Kでも十分にきれいなのだが、ICCと4K×2Kの組み合わせと比較するとその差は歴然だ。
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