まず、一瞬の遠目では同じに見える両者だが、近づくとICC側は映像に深みがあり、引き込まれるような雰囲気がある。具体的には壁紙や舞い散る桜の花びらなど、見れば見るほどディテールが細かく表現されていることが分かり、先ほどの脳内補完が目の前の作られた映像で再現されていることも想像できた。さらに質感もアップしており、ガラスや光の反射する風景など、確かに通常のアップコンバート版よりも、より「〜らしさ」が再現されている。
絵そのものに立体感があるのだ。3D映画として大ヒットした「アバター」が「奥行きのある立体映像」と表現されることが多いが、まさにそれを目の前の2D映像で実現している。シャープ、AVシステム開発本部 A1268プロジェクトチームチーフの大石伴史氏によれば、「これが本当の2Dで再現する立体映像」なのだという。
今回シャープで4K×2K+ICCプロジェクトを率いる同氏は、今後50〜60V型クラスの大型TV向けに4K×2Kが出てきた時、「従来の方法でコンテンツをそのまま流して、果たして本当にいいのか」というのが発端だったと説明する。そうしたなか、ソニーでDRC(Digital Riality Creation)を開発した近藤哲二郎氏が率いるI3(アイキューブド)研究所のチームに出会い、意気投合して共同開発を進めることになった。その成果が、今回のデモというわけだ。
「われわれテレビの開発チームは、もともと光として見られる情報をカメラを通して蓄積し、それを放送なりの形で届けられた映像をいかに“元の映像へと近付けるか”という点に力を入れてやってきた。だが4K×2Kの時代が到来すると、光で実際に認識できる映像とそう大差ないものに近付いていく」。実際の映像とのギャップを埋める技術としてICCを採用したと説明する。
I3研究所の技術企画室室長、安藤一隆氏によれば、ICCは、「見て疲れない自然な映像」にポイントがあるという。本来、ディテールを細かく再現しようとするとシャープでとがった映像へと傾きがちとなるが、これを認知できたうえで、さらに自然な形で目や頭に入ってくる映像を実現したのがICC。普通に全体を見ようと思えば自然と目に絵が入ってくるし、さらに注視すれば細かい部分の表現が分かるようになる。
そして今後の課題として安藤氏は、「こうしたパターンマッチングと変換テーブルの種類を増やし、さらに映像の表現力に幅を持たせていくことだ」と話していた。前述のように、ICCがパターンマッチングでそこにある絵の種類を認識し、変換テーブルで置き換えて補完していく技術だ。パターンマッチングの精度が高ければ映像のクオリティーが向上し、変換テーブルの豊富さで表現力が向上していく。
同社の場合、この技術をICとしてハードウェアで実装した点もポイントだろう。テレビなどに採用される際のハードルを下げることが多いに期待できる。4K×2Kというと、単に高精細化のみに注目してしまいがちだが、実際にはこれを有効に活用するための技術開発も並行して行われている。機会が合ったら、是非一度ご覧頂きたい。
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