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» 2013年05月30日 21時18分 UPDATE

麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」:スーパーハイビジョンは2016年に間に合うのか? NHK技研公開 (1/3)

恒例の「技研公開2013」が東京・世田谷のNHK放送技術研究所で始まった。今回は2016年に実用化試験放送が早まったスーパーハイビジョンについて、AV評論家・麻倉怜士氏に解説してもらおう。

[芹澤隆徳,ITmedia]

5月30日から6月2日まで、東京・世田谷にあるNHK放送技術研究所の一般公開「技研公開2013」が開催されている。実用化試験放送を4年前倒しして2016年に開始する方針が打ち出されてから初の技研公開であり、その研究成果にも注目が集まる。最近、名刺の肩書きを「ハイビジョンラバー」から「スーパーハイビジョンラバー」にアップグレードしたAV評論家・麻倉怜士氏に解説してもらおう。

ts_giken021.jpg 東京・世田谷区砧にあるNHK放送技術研究所

――今年も技研公開が始まりました

麻倉氏:ここ数年のNHK放送技術研究所の一般公開(技研公開)では、スーパーハイビジョン(SHV)の関連の展示が中心になっていますが、今年は少し違う印象を受けます。というのも、昨年までは「2020年までの実験放送」を目指していたのに対し、昨年の段階で「2016年に実験放送」を開始する方針が急きょ打ち出されたからです。

ts_giken01.jpg NHK放送技術研究所の藤沢秀一所長

 2016年までもう3年しかありません。その短い期間で準備を進めるために技研も開発のテンポを急ピッチで上げています。5月28日に行われた記者会見では、「3年しかないのに間に合うのか」という質問に対し、技研の藤沢秀一所長が、「2016年に試験放送を行うには、2015年の春までに標準化や運用規定策定などの作業を完了しなければならない。2年あればできないことはないが、これまでのようにシリーズではなく、すべてを並行作業で進める必要がある」と話していました。そのような“切羽詰まった”スケジュールです。

――なぜ4年も早まったのですか?

麻倉氏:4年というのは、オリンピック1回分です。国際的なスポーツイベントが新しい放送技術の認知や普及に貢献することは、前回のロンドンオリンピックなどを見ても明らかでしょう。SHVの試験放送は、もともと2020年の夏季オリンピックをターゲットにしていましたが、放送に関係するインフラや産業の育成と強化、ひいては日本の国際競争力を高めるため、1回早い2016年の「リオデジャネイロ大会」を目指すことになりました。

 これは国としての成長戦略の1つであり、「テレビ王国ニッポン」を復活させようという深謀の結果です。4K×2Kでは確かに世界の最先端として2014年に放送を開始しますが、韓国もすぐに追随するでしょう。しかし、8K放送は世界でもNHK技研が開発したもので、他の追随は難しい。4Kと8K放送で世界を大幅にリードしようという総務省の野望が見えますね。

伝送路の問題を解決する「HEVC」

――しかし、実際に間に合うのでしょうか

麻倉氏:今回の展示を見渡すと、実用化に向けて必須となる機材やシステムが登場してきたという印象です。具体例として、SHVに使われる映像符号化方式「HEVC」(High Efficiency Video Coding、H.265)のリアルタイム・エンコーダーがあります。HEVCは、同じ画質であればMPEG-2比でおよそ4倍、AVC(H.264)比で約2倍の圧縮率を誇る次世代の符号化方式です。これが実用化されないと伝送が大変ですから、大きなブレークスルーといえます。

ts_giken020.jpgts_giken022.jpg HEVCのリアルタイム・ハードウェア・エンコーダー(左)と85Mbpsでエンコード/デコードした8K映像(右)

 展示機は、技研と三菱電機が共同開発したもの。昨年まではソフトウェアコンコードでしたが、今回は世界初のハードウェアエンコーダーが登場し、ほぼリアルタイムに8Kを約85Mbpsにエンコード可能です。これは通信衛星の中継器(トランスポンダー)1つの伝送容量であるTSの91Mbpsに収まるという意味です。

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