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東芝「65Z8X」が描き出す「ライフ・オブ・パイ」の見事な立体像演出山本浩司の「アレを観るならぜひコレで!」(1/2 ページ)

» 2013年06月26日 17時37分 公開
[山本浩司,ITmedia]
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 6月中旬から東芝の4K液晶テレビ「Z8Xシリーズ」が店頭に並び始め、多くの熱心なAVファンの注目を集めているようだ。前々回の連載で取り上げたソニー「X9200Aシリーズ」とは一味違う面白さを持った4Kテレビで、詳細は後述するが、Blu-ray Discの4Kアップコンバート画質も東芝ならではの個性がうかがえ、とても興味深い。というわけで、今回の主役は東芝“REGZA”(レグザ)の「Z8Xシリーズ」である。

東芝の新型4Kテレビ「Z8Xシリーズ」。58V型、65V型、84V型の3サイズをラインアップ

 考えてみれば、フルHDの4倍の解像度を持つ4Kテレビの先鞭を付けたのは東芝だ。2011年の暮れに裸眼3D対応の世界初の家庭用4Kテレビ「55X3」を登場させ、2012年の夏にはその裸眼3D機能をはずした「55XS5」を発表。今回のZ8Xシリーズは東芝4Kテレビの第3弾ということになる。

 ラインアップは58V型、65V型、84V型の3サイズ。これらを一挙に市場投入してきたところに、4Kテレビで業界をリードしようという東芝の「本気」を強く実感するのは筆者だけではないだろう。

 まずモデルネームに注目していただきたい。型番のアタマに付けられているのは、「X」ではなく「Z」 。つまり、東芝はこの3モデルを、4Kタイプながらレグザの高級主力ラインの「Zシリーズ」として位置付けているわけだ。そんなわけで、使い勝手の面でも昨年のZ7シリーズに採用された「ざんまいプレイ」や「TimeOn」などのクラウド連携の全録タイムマシン機能がすべて採用されており、USB HDDとの連携で、好きなときに好きな番組を的確にピックアップして楽しむことができる東芝レグザらしい機能性に優れたテレビに仕上げられている。

 東芝の主力高級ラインとしての位置づけは、画質設計にも反映されている。高画質Blu-ray Discだけではなく、DVDや地上デジタル放送などをいかにきれいに見せるかに注力して画質設計されているのである。4K放送は始まっておらず、4Kネイティブコンテンツを入手するのがほぼ不可能な今、“万能型画質”を目指すという考え方はきわめて真っ当といっていいだろう。

「レグザエンジン CEVO 4K」(左)とタイムシフトマシン用チューナーボード(右)

 その画質設計の要となるのが4K高画質のための映像信号処理回路を仕込んだ「レグザエンジン CEVO 4K」である。この画質エンジンには東芝が他社に先んじて培ってきた4Kアップコンバート&超解像技術の最新版が盛り込まれており、その内容は多岐に渡る。概念としては、超解像処理を2回に分けて行ない、最初の処理で東芝独自の「再構成型超解像技術」などを用いてDVDや地上デジタル放送をフルHD解像度まで持ち上げ、2回目の超解像回路で4K解像度にアップコンバートし、高画質映像に仕上げるというものだ。

 この後段の処理には「4K微細テクスチャー復元」「4K輝き復元」「絵柄解析再構成型超解像技術」の3つの興味深い手法が新たに加えられている。確かにZ8Xシリーズで観る地デジや衛星放送の画質は、55X3や55XS5を大きく上回る素晴らしさで、これら新しい信号処理技術の成果を確かな手応えとともに実感させるものだった。

「コンテンツモード」には「ビデオ(放送)」や「アニメ(放送)」のようにデジタル放送を念頭に置いたモードが用意されている(画面はイメージ)

 ところで、東芝はこの「レグザエンジンCEVO 4K」と4K液晶パネルの組合せで実現できる大画面高画質を「シネマ4Kシステム」と命名している。企画担当者に聞くと、「大画面を想定して制作された映画のBlu-ray DiscをぜひZ8Xシリーズで観てほしい」という願いがそのネーミングに込められているのだという。

 メジャースタジオ作品を中心に、4K解像度でマスタリングされたBD映画作品が次々に登場しているのはご承知の通りだが、Z8Xは画質調整項目のコンテンツ・モード内に、それら高画質映画作品に照準を合せた「高解像度シネマ」モードが設けられている。このモードにすると、HDMI入力のY/Cb/Cr の色差信号をそれぞれ12ビットでキャプチャーし、クロマフォーマット4:4:4処理が可能となる。つまり、BDプレーヤーやレコーダーの良質なHDMI出力をいちばんいい状態で受けて、Z8X内部で4Kアップコンバート処理が行われるわけだ。

2Dの映画BDでソニー「KD-65X9200A」と比較してみよう

 65V型の「65Z8X」で、コンテンツ・モードをこの「高解像度シネマ」に、映像モードを「映画プロ」に設定して4Kシネカメラで撮影された「ものすごくうるさくてありえないほど近い」(2011年作品)のBDを観てみた。部屋を全暗にし、4Kテレビの推奨視距離とされる1.5H(画面高)にまで近づいての近接試聴だ。

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