ITmedia NEWS >

もうフルHDには戻れない、シャープ「LC-60UD1」の“懐の深い”表現力山本浩司の「アレを観るならぜひコレで!」(1/2 ページ)

» 2013年07月25日 15時35分 公開
[山本浩司,ITmedia]
※本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

 この夏話題の4Kテレビについては、本連載でもソニー機東芝機と製品リポートを続けてきたが、今回は8月上旬に60V型が店頭に並び始めるシャープの4K AQUOS(アクオス)「UD1シリーズ」について触れてみたい。

60V型の「LC-60UD1」

 UD1シリーズは、すでに発売されている70V型の「LC-70UD1」と60V型の「LC-60UD1」の2モデル展開で、台数が見込める50インチ台はラインアップされていない。その製品構成から4K高精細の醍醐味(だいごみ)はまずは大画面で……というシャープの強い主張を酌み取ることができる。

 採用されたパネルは、大阪府堺市にあるSDP(Sakai Display Product)製の倍速表示VAパネル。SDPは旧同社堺工場、現在はホンハイ(台湾)と共同運営している液晶パネルの生産拠点で、UD1シリーズに使われる4Kパネルは世界唯一の第10世代の設備で生産されたパネルとなる。ちなみに、シャープのハイエンド4Kテレビ、「ICC PURIOS」(LC-60HQ10)のパネルは同社亀山(三重)工場で生産されたものである。

 60V型、70V型ともに、同社最新技術のモスアイ・パネルが採用されている点にまず注目したい。これは蛾(モス)の目(アイ)の構造を研究して開発されたパネルで、ディスプレイ表面にナノ単位の微細な突起を設けることで、外光や部屋の照明などの反射を大幅に抑え、なおかつ艶のある黒を再現するというもの。実際このクラスの大画面は、小さいサイズのテレビ以上に画面の映り込みが気になるはずで、モスアイ・パネルはまさに4K大画面にうってつけの好提案といっていいだろう。

モスアイパネルは、外光を拡散させて映り込みを防ぐ。自分の顔が画面に映らないのは大きなメリットだ

 もうひとつUD1シリーズで注目すべきポイントとして、70V型、60V型ともに「THX 4Kディスプレイ規格」の認証を得たことが挙げられる。米THXは、ルーカスフィルムを出身母体とするシアター/ホームシアターのための技術認証機関。THX 4Kディスプレイ規格には400を超える厳格なテスト項目があり、それらをすべてクリアーし、その認証を受けた4K液晶テレビは、現在のところ(国内で発売されているモデルでは)シャープ製品のみということになる。

 UD1の開発エンジニアに聞くと、ユニフォミティー、ガンマカーブ、色再現、コントラストなどTHXにはさまざまな項目で厳格な規定があるそうだが、とくに画面のユニフォミティ(均一性)基準がたいへん厳しく、それをクリアーするのはかなりタイヘンなようだ。画面を細分化し、画面中央と周辺部での輝度レベル、ホワイトバランスに偏差がないかどうか徹底的に精査されるのだという。とくにUD1シリーズは、LEDバックライトを画面上下に配したエッジライト型だけに、導光板とのマッチングなど相当なファインチューニングが必要なはずで、その苦労がしのばれる。そうやって仕上げられたテレビだけに、このTHX認証は高級テレビを買う際の1つの安心材料、太鼓判として捉えてもいいだろう。

 入力信号を4K解像度(3840×2160ピクセル)にアップコンバートする映像信号処理回路「AQUOS 4K-Master Engine PRO」は、既存のチップの組合せによって構成されてるようだが、もちろんシャープ開発陣によってきめ細かなチューニングが施されている。例えば超解像処理によって生じるジャギー(斜め線のギザギザ)の発生に対しては、いくつかのフィルター・パターンを用意し、その使いこなしで対処しているようだ。

映像モードは7つ

 映像モードは「高精細」「標準」「映画」「映画THX」「ゲーム」「PC」「フォト」の7つ。店頭での見栄えを考慮した「ダイナミック」ポジションがなくなり、その代わりに4K映像の魅力をアピールしやすい画質にチューニングした「高精細」モードが設けられたのが興味深い。また、映画観賞用映像モードとして、「映画」「映画THX」の2つが用意されていることにも注目したい。後者はTHXの定めるモニター画質を追求したもので、色温度D65 、ガンマ特性2.2、色域はハイビジョン規格のBT.709(sRGB)に準拠している。前者の「映画」モードは、この「映画THX」にシャープ流の味付けを施したものと考えていい。シャープ流という意味で興味深いのが、色温度設定。同社エンジニアによると、D65設定では肌色がどうしても緑がかるため、「映画」モードではそれを嫌って色温度は6500K(ケルビン)の黒体放射ラインに沿った値に定めているという。ガンマカーブについても、基準カーブの2.2をベースにより階調重視の設定が採られているようだ。

 4K大画面高級テレビだけに、音質のケアにも意が尽くされている。画面下にテレビ本体とは別筐体(きょうたい)のスピーカー用ボックスを配置、楕円(だえん)型スコーカーとドームツィーターによる2WayスピーカーをL/Rchそれぞれに前向きにビルトイン、本体背面に内蔵した2基のウーファーを用いた「DuoBass」との組合せによる2.1ch構成が採られている。スピーカー前面は、開口部の大きなパンチングメタル仕様だ。スピーカーのイコライジング等を受け持つ音声回路用には「ヤマハ・オーディオ・エンジン」が採用されている。

テレビ背面にある低振動ウーファー「DuoBass」。ユニットを対向配置して振動を相殺する仕組み。上にある青い水は、振動が少ないことを視覚的に表している(左)。フロントのスピーカーボックスを液晶パネル方向から見た写真。独立したキャビネットは意外と奥行きがある(右)

 チューナーは、地上デジタル3、BS/110度CS2の構成で、外付けのUSB HDDに2番組同時録画しながら別の番組が楽しめる仕様。また、そのUSB HDDに録画した番組を他の部屋のAQUOSに配信して楽しめるDLNAサーバ機能も有している。ちなみに3D表示機能は、アクティブシャッター方式。今回の視聴では実際に試すことはできなかったが、倍速表示パネルだけに、クロストークの発生はかなり気になるのではないかと予想される。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.