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» 2014年03月28日 15時10分 UPDATE

麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」:ハイレゾ再生の新しい潮流(前編)――NASが変わった! プレーヤーも変わる (1/2)

“ハイレゾ”が新世代オーディオのキーワードとなり、対応機器の幅も広がっている。AV評論家・麻倉怜士氏による連載「デジタル閻魔帳」。今回は最新かつ注目のハイレゾ再生デバイスを紹介してもらった。

[芹澤隆徳,ITmedia]

“ハイレゾ”が新世代オーディオのキーワードとなり、音楽ジャンルの幅も広がってきた。また、同時に注目したいのが対応機器の充実ぶり。PCオーディオの登場以来、世代を重ね、参入メーカーも増え、機能や製品の幅が広がりつつある。AV評論家・麻倉怜士氏による連載「デジタル閻魔帳」。今回は新しい切り口の最新ハイレゾ再生機器を紹介してもらおう。

ts_asakura08.jpg AV評論家・麻倉怜士氏。写真のヘッドフォンは後編で登場します

――「ハイレゾ」という言葉もかなり定着してきましたね

麻倉氏: そうですね。先日も、ある出版社の方が新しいムックの打ち合わせに来ましたが、今回は「ハイレゾオーディオ」をタイトルに使って完全ガイド本を作るということしでした。これまでも「PCオーディオ」や「ネットワークオーディオ」というキーワードを使った本は多くありましたが、「ハイレゾオーディオ」を全面に出したガイド本は初めてだそうです。ここにきて「ハイレゾ」という言葉が浸透してきたことを実感しています。

 きっかけは、やはり昨年秋にソニーが行った“ハイレゾ宣言”です。ウォークマンからコンポーネントオーディオ、moraまで一気に対応を進めました。また昨年秋にはアニメソングのハイレゾ配信も始まり、若い人が好むポップス系の配信が増えてきました。

 最新(3月中旬)のe-onkyo musicのダウンロード数ベストテンを見ると面白いですよ。1位が宇多田ヒカルの「First Love」、2位と3位はクラシックですが、4位は、すーぱーそに子の「すぱそにっ」です。昨年まではクラシックやジャズが多くて過去の名演奏が人気だったのに、こんな感じですっかり様変わりしています。

――確かに時代は変わりました。麻倉さんの口から「すーぱーそに子」……

麻倉氏: アニメソングですよね。それはともかく、2000年以降、長期低迷を続けてきオーディオにも、いよいよ新しい時代の幕が開けたといって良いでしょう。ソニーのハイレゾウォークマンも人気ですし、今年は注目すべき製品がたくさん出てきました。そこで今回は、私が注目しているハイレゾ関連製品をピックアップしたいと思います。

一体型とは思えないハイレゾスピーカー、ソニー「SRS-X9」

麻倉氏: ハイレゾの新しい再現形態として、アンプ一体型スピーカーがソニーから登場しました。先日、ワイヤレススピーカーの最上位モデル「SRS-X9」を聴く機会がありましたが、驚くほど高音質でした。もちろん、一体型スピーカーの範疇(はんちゅう)で、という意味ですが。

ts_srs9x01.jpg ソニー「SRS-X9」

 これまでの一体型スピーカーは、iPod用のドックスピーカーなどに見られるように、圧縮音源を派手に聴かせるドンシャリ型の音作りで、それなりに見栄え良く聴かせるケースがほとんどでした。しかし、「SRS-X9」は正当派でかつ本格的。ドンシャリや輪郭強調といった“お化粧”は全くない、言ってみれば「コンポーネントオーディオの音を小さな筐体(きょうたい)で再現する」という音です。

 Rebecca Pidgeon(レベッカ・ピジョン)の「スパニッシュ・ハーレム」という有名な曲のハイレゾ音源(HD Tracksで配信中)を聴きましたが、冒頭のベースの音階感、ボーカルのしなやかさとツヤっぽさ、さらに盛り上がるストリングスの華麗さ。音場が小さいことを除けば、まさに本格的なハイレゾオーディオシステムで聴いている印象です。

ts_srs9x04.jpg 7スピーカーとパッシブラジエーターを搭載

 考えてみると、ソニーのハイレゾの展開では、本格的なネットワークプレーヤーより、ハイレゾウォークマンや一体型スピーカーのほうが音的に“華”があるような気がします。SRS-X9では、コンパクトな筐体には7つのスピーカーユニットを搭載し、このうちスーパーツィーターは正面と天面にそれぞれ設けています。さらに8基のアンプを使ったマルチアンプ駆動というぜいたくな構成で、中身を徹底的にハイレゾ向けにチューニングしています。つまり、ゼネラルオーディオ的なアプローチでなく、音作りをまじめに行った製品ということ。コンパクトでも「ハイレゾを聴かせるぞ」という意気込みが感じられる製品です。

東和電子「NANOCOMPO」からネットワークプレーヤーが登場

麻倉氏: Olasonicの小型コンポ「NANOCOMPO」(ナノコンポ)からネットワークプレーヤー「NANO-NP1」が発売されました。USB-DAC付きのプリメインアンプ「NANO-UA1」から始まり、単体DAC「NANO-D1」やパワーアンプ「NANO-A1」と続くシリーズの最新モデルですが、今回もなかなか音が良くて、サイズを考えるとびっくりするようなHi-Fiオーディオ機器に仕上がっています。ナノコンポ特有の音――明確でしっかりした輪郭感を持ち、切れ味やスピード感が感じられます。

ts_nano1np03.jpgts_nano1np05.jpg 「NANO-NP1」。DLNA 1.5に対応し、ハイレゾ音源を含むWAV、FLAC、ALAC、AAC、WMA、MP3、AIFFの再生が可能。DAC機能は搭載せず、出力端子は同軸デジタルと光デジタルのみとなっている

麻倉氏: 面白いのは、「NANO-NP1」がD/Aコンバーター回路を持たず、いわばネットワークトランスポート(アナログ出力を持たないプレーヤー)になっていることです。DACは前述の「NANO-D1」を利用してもいいですし、ほかのメーカーの製品を使うこともできます。ナノコンポのシリーズはCDプレーヤーもトランスポートスタイルですし、機能の使い方がとても合理的。あの小さいサイズで有機的に各機器が連携します。最初のプリメインアンプが出たときは、意外狙いのデザイン提案なのとも思いましたが、コンポーネントがそろってきたことで発展性を含めた統一的な新しい価値を生み出しています。

 振り返ると、オーディオの世界には単品コンポーネントがあり、次第にシスコンやミニコンへと主流が移ってきました。しかしシスコンやミニコンには発展性がありません。音作りもシステムトータルで行っているため、例えばスピーカーが小さくて低音が出ない場合には信号処理やアンプ側で低域を補強してしまったりしていました。つまり、ほかのスピーカーを接続すると音がおかしくなってしまうのです。

 一方、ナノコンポの有機的な発展は、それぞれの再生方法に対応していくだけで新しいオーディオの形になります。これこそ新しい時代のコンポーネントでしょう。

 1つ提案があります。従来のネットワークオーディオでは、NASをあまり表に出さず、むしろ隠そうという傾向がありました。しかし、よく考えると音源ってすごく大事です。ナノコンポのデザインなら、インテリアとの親和性も高く、表に出すことも可能ではないでしょうか。あのボディーで高音質なNASストレージを出してほしいと思います。

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