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「THXディスプレイ」規格、その役割と認定モデルの実力とは?(1/2 ページ)

» 2014年04月14日 02時48分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]

 最近、テレビやプロジェクターのカタログで見かけることが増えた「THXディスプレイ規格」。THXといえば映画館などのサウンドシステムを思い浮かべる人も多いと思うが、実際には映像と音声の両方を対象とした認定作業を行っており、対象も個々のAV機器から映画館、そして個人宅まで場広い。ちなみにTHX認定済みのホームシアターを所有している人には、ジェームズ・キャメロン監督やポール・アレン監督といったハリウッド関係者のほか、あのビル・ゲイツ氏もいる。

米THXのシニアシステムエンジニア、ジョン・シエロ氏(左)。THXの設立経緯(右)

 そもそもTHXとは何か。米THXのシニアシステムエンジニア、ジョン・シエロ氏は、設立経緯をこう話す。「1983年に『ジェダイの復讐』が封切りされた時、ジョージ・ルーカスは劇場で衝撃を受けた。上映された映像と音声が、あまりにも自分の意図したものと異なっていたからだ」。ルーカス氏はその後、ルーカスフィルムのエンジニアリングチームを母体として技術認証機関「THX」を立ち上げ、「映画の制作から上映に至るまで幅広く関わってきた」(シエロ氏)。THXが関わり、その品質が認められた映画や映画館にはTHXの認証マークが与えられる。

 現在ではスタジオや劇場だけでなく、ホームシアター用のAV機器やBlu-ray Disc、カーオーディオ、モバイル機器まで対象を広げ、認証の基準もそれぞれ異なる。しかし、「よりよい品質を実現し、制作者の意図した映像と音声を可能な限り届ける」という目的は同じ。そのために必要な検査項目を自社のテストで導き出している。結果として検査項目は膨大になり、例えばディスプレイ(HDTV、3D、4K)の場合は600以上。さまざまなメーカーから製品が持ち込まれるが、合格率は10%程度だという。

ホームシアター用のAV機器やBlu-ray Disc、カーオーディオ、モバイル機器まで幅広い

量産開始後にもテスト

 ディスプレイの場合、試験の内容は3つに大別される。1つめはパネルパフォーマンスで、「どの場所でも正確に輝度を表現できるユニフォミティー(画面の輝度均一性)。これはなかなかできない」(同氏)。2つめは動画表現。多くのテスト用動画を鮮明かつジャギーを抑えて表示できなければならない。3つめの正確な色。制作者がスタジオ内で見ている色――つまりRec.709として定義されているカラーパレットの色をいかに忠実に再現できるかが問題になる。

ユニフォミティー(画面の輝度均一性)がうまくできていないテレビ(左)と優秀なテレビ(右)

左は動画チェックに使われるテストパターン2つ。左はグラデーションを表示してバンディング(縞模様)が出ないことを確認する。もう1つは左右に動かして鮮明さ(解像度)をチェックする。右は色の検査に使われるグレースケールとカラーパターン。色はRec.709というスタジオカラーを再現できるかが問題になる

 実際の認証プロセスは2段階あり、まず製品のプロトタイプでテストを行い合否を判断する。さらに合格した製品の量産が始まると、量産機でプロトタイプと同じ性能が出ているかをチェックする。もちろん最初のテストを1発で合格することは極めて難しく、指摘された部分を改善して再試験を受けるといったことをメーカーは繰り返すのだ。

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