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ルンバとはなにもかも違うアプローチ、ネイト ロボティクス「ボットバック」滝田勝紀の「白物家電、スゴイ技術」(1/3 ページ)

» 2014年10月23日 15時39分 公開
[滝田勝紀,ITmedia]

 この秋、国内外の大手メーカーから新しいロボット掃除機が続々と登場している。中でもユニークなのは、丸くないロボット掃除機を投入したネイト・ロボティクス。そのバックグラウンドも少し変わっている。ここでは、同社CEOであるMarini Giacomo(マリーニ・ジャコモ)氏に、ロボット掃除機「ボットバック 75/85」の開発の経緯やその技術について聞いた。

マリーニ・ジャコモCEOと「ボットバック 85」

 ネイト ロボティクスは、シリコンバレーで2009年に創業したばかりのロボットベンチャー。もともとは3人の学生が“家事を行うロボットの開発”を目的にスタンフォード大学の起業家支援制度を利用して創設したという。

 日本での認知度はまだ高くないが、これまでに欧米を中心に累計40万台を販売しており、米国内でのロボット掃除機のシェアは、iRobot(アイロボット)のルンバに次ぐ2位。アジアでも既に8カ国でロボット掃除機を販売している。

特徴的な“Dシェイプ”を採用した「ボットパック」

 アイロボットといえば、世界ナンバー1といっても過言ではないロボットメーカーである。CEOのコリン・アングル氏は、アメリカ東海岸のMIT(マサチューセッツ工科大学)の学生時代に創業し、その後はアメリカ政府などのロボット開発を受注するなど軍事関係のロボットなども作りながらルンバを生み出した。一方、ネイトロボティクスは西海岸の名門スタンフォード大学に端を発し、軍事とは一切無関係のロボットメーカーという意味では対照的な存在といえるかもしれない。

 「とはいえ、アイロボットは米国市場で80%以上のシェアを持っています。われわれは2位ですが12%ほどですから、まだまだこれから。でも、現在は家電のアーキテクチャーが劇的に変わろうとしている時代。従来のエレクトロニクスにソフトウェアがどんどん導入されていく今、われわれはそのマーケットリーダーになることを目標にしています」(ジャコモ氏)。

ネイトロボティクス日本法人のポラード由貴子代表(左)。今後、日本の家庭の意見も開発部門にフィードバックしていきたいと話している

「ボットバック 85/75」のSLAM技術とは?

 日本で販売するロボット掃除機は「ボットバック 85」と「ボットバック 75」の2機種。その特徴は、SLAM(Simultaneous Localization And Mapping)技術を利用した“人工知能”だ。SLAMはスタンフォード大学のロボット工学研究から生まれたオープンソースのマッピング技術で、実はGoogleの無人カーなどでも同じものが開発に利用されている。

 「ボットバックの人工知能“ボットビジョン”を開発するにあたり、SLAMを利用できずにイチから開発をしていたとしたら、これだけの短期間で製品を開発することはできなかったでしょう。しかも、莫大な開発費がかかっていたはず。その点でわれわれは非常に運が良かったのかもしれません」。

 ボットバックのマッピングは、上部にある青い部分「タレット」に設けられたレーザーセンサーで行う。全方向360度を1秒間に5回転し、1度ごとに距離を測定。毎秒1800回ものスキャニングを行い、部屋の形や家具のレイアウトを把握する。しかし、多くのセンシングシステムがある中、なぜレーザーを採用したのだろうか?

レーザーセンサーを内蔵したタレットと呼ばれる部分

 「屋内をしっかりマッピングするために5メートルという距離をしっかりと感知できるものでなければならないと考えました。また、感知するだけではなく、精度が高いことも重要です。こうした条件に適合するのがレーザーでした。もちろんカメラなどで認識する方法もありますが、精度が落ちてしまいます」(ジャコモ氏)。

 ボットバックは、センサーで取得した情報から周囲の地図を作成していく。「部屋のどこに障害物があるか、常に把握しながら、効率良く、部屋の中を掃除していきます」。

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