インタビュー
» 2015年06月08日 06時00分 UPDATE

親子2世代で使える革新的なLED照明――「ジェイク ダイソン ライト」はこうして生まれた (1/2)

LED照明の開発は“熱”との戦いの歴史。そのLED照明を大胆な手法で冷やし、37年間という長寿命を実現したのが「ジェイク ダイソン ライト」の照明器具だ。来日したジェイク・ダイソン氏に製品の詳細、そして家族のことを聞いた。

[芹澤隆徳,ITmedia]

 LED照明の開発は“熱”との戦いの歴史だった。白熱灯や蛍光灯に比べて遥かにエネルギー効率の良いLEDだが、自らが発する熱が周辺回路に悪影響を与え、照明器具としての寿命を短くしてしまう。熱に変わるエネルギーをいかに抑え、発光効率を上げるかが大きな課題だった。そんなLED照明を大胆な手法で冷やし、37年間という長寿命を実現したのが「ジェイク ダイソン ライト」の照明器具だ。

ts_jakedyson04.jpg 「ジェイク ダイソン ライト」のタスクライト「CSYS」(シーシス)と開発者のジェイク・ダイソン氏

 開発者のジェイク・ダイソン氏は、あのジェームズ・ダイソン氏の息子。英Dysonの創業者で現在もチーフエンジニアを務める父は、サイクロン掃除機を製品化する際、破産寸前まで追い込まれながらも試行錯誤を続け、現在の成功の礎を築いた。ジェイク氏は、「子どもの頃は、あまりお金のない、ごく普通の家庭だった」と振り返るが、それはDysonのビジネスが成功した後も同じだという。

 「家族は全く変わっていない。なぜなら(会社が軌道にのるまでに)20年間もかかったから。もしスポーツマンのように一夜にして大金を手にしていたら違ったかもしれない。でも、父は本当に一生懸命働いていたんだ」(ジェイク氏)。

 そんな父親の背中を見て育ったジェイク氏も、「幼い頃からDysonのワークショップで“もの作り”を体験し、実用的な技術のアイデアを膨らませてきた」(ジェームズ・ダイソン氏談)という、根っからのエンジニアだ。1994年にインダストリアルデザインの名門、Central St Martins College of Art and Design(セントラル セント マーティンズ カレッジ オブ アート アンド デザイン)を卒業し、インテリアデザインを経て2004年に自分の工房を立ち上げる。その後、LED技術に着目して2人のデザインエンジニアとLED照明の開発に取りかかり、まずは「市場にあるLED照明器具を片っ端から分解して課題を見つけ出した」(同氏)という。

ts_jakedyson01.jpg 「市場にあるLED照明器具を片っ端から分解した」というジェイク氏

 「LED照明は、熱が原因で時間の経過とともに劣化し、明るさや色を失うという課題を抱えていた。大事なのはLEDの寿命を延ばすこと。そのためにLEDを半導体として捉え、いかに熱を逃がすかを考えた」。LED素子が発する熱を放散させることで、明るさや色、エネルギー効率を長期間にわたって均一に保つ。以前から指摘されていたことではあるが、彼が分解した市販の照明器具でそれを実現していたものは存在せず、寿命も4万時間程度にとどまっている。

人工衛星から着想を得た冷却システム

 「ジェイク ダイソン ライト」には、手元を明るくするタスクライトの「CSYS」(シーシス)と天井につるすペンダントライト「Ariel」(アリエル)をラインアップしているが、LEDの冷却に用いるコア技術は共通だ。人工衛星の冷却システムに用いられる技術から着想を得た、「ヒートパイプテクノロジー」である。

ts_jakedyson05.jpg 「Ariel」(アリエル)のダウンライト。光を上に向けた間接照明タイプのアップライト型も用意する

 熱伝導性に優れた銅のパイプを用い、中を真空に近い状態にして1滴の水を入れる。真空中では水の沸点が下がり、気化しやすい。これを利用して素早くLEDモジュールが発した熱を吸収。気化した水はパイプを通ってアルミニウム製のヒートシンク部へ移動して熱を放出すると水に戻るという仕組みだ。22.5ミリ径のパイプは、水蒸気が“煙突効果”(stack effect)によって中央部を通り、水に戻ると内側を伝って戻ってくるという循環を起こしやすいサイズになっている。

ts_jakedyson08.jpg 製品発表会で行われた熱伝導の早さを体験できるデモ。赤の熱いお湯にヒートパイプを入れると瞬時に手元まで熱くなり、触っていられなくなる

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