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“風の中津川”で生み出された“静かな扇風機”――三菱「SEASONS」滝田勝紀の「白物家電、スゴイ技術」(1/2 ページ)

» 2015年06月15日 17時01分 公開
[滝田勝紀ITmedia]
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 岐阜県中津川市にある三菱電機中津川製作所。戦時中に疎開工場として建てられた工場で、終戦と同時に工場引き揚げの危機に直面したが、地元中津川市民たちからの強い要望もあって戦後に再び息を吹き返す。以来70年に渡って扇風機作りに邁進してきた。

三菱電機の中津川製作所(左)。歴史を感じさせる写真の数々が工場内に展示されていた。力道山が訪問したという(右)

 現在もさまざまな“風製品”の開発に関わり、風の本質を知り尽くすといっても過言ではない中津川製作所は、いつからか“風の中津川”と呼ばれている。その中津川製作所が改めて扇風機を見つめ直し、およそ14年ぶりに投入した新製品がDC扇風機「SEASONS」だ。一体何がスゴイのか、製品開発担当の小野比出晴氏に話を聞いた。

 

三菱電機 中津川製作所 住宅用換気送風機製造部の小野比出晴さん

 「1910年に三菱造船電機製作所で試作品を作ったのが、弊社扇風機の歴史の始まりです。その後、1918年に『初号扇12吋』で国産扇風機の量産を開始しました。スタンドやヨークカバーは全て鋳鉄製で、重量は今の製品の何倍もありました。1960年代には生産の最盛期を迎えました。“若葉色”の扇風機、プラスチック羽根を初採用、さらには自動給油装置、透明羽根、首振り角度調節など、当時としては画期的な独自技術を次々と開発していきました」(小野氏)。

「初号扇12吋」。1918年に国産扇風機の量産を開始した際の記念碑的なモデルだ

 現在は換気扇、ロスナイ(換気空清機)、ジェットタオルといった同社を代表するさまざまな風に関する製品ジャンルの開発製造をしている中津川製作所。ちなみに換気扇は国内シェア約50%弱を占めるほど。つまり、日本国内の換気扇は、2つに1つは三菱電機製ということになる。

 「扇風機の生産は海外に移ったものの、引き続き開発設計だけは国内の中津川で担当しています。また、他の工場で生産される空調製品の“風”の開発にも根幹部分で携わっているので、それが社内で“風の中津川”と呼ばれる理由です」。

扇風機を作っていたころのライン。中津川の風の技術はいつの時代も人が支えている(出典は三菱電機)

こちらは現在の換気扇組立ライン。熟練工が多く、ていねいに組み立てている

最小6.2センチから最大105センチまで換気扇はバリエーション豊富(左)。商業施設のトイレなどで使われるハンドドライヤー。製品名の「ジェットタオル」は、ハンドドライヤーの代名詞といえるほどメジャーな存在になっている(右)

 そんな歴史と蓄積された技術を持つ中津川製作所により、三菱電機は14年ぶりに扇風機の新規ラインアップを追加した。5月1日に発売したDC扇風機「SEASONS」だ。その肝となる羽根の技術が「ウイングレット形状」だ。

DC扇風機「SEASONS」。なるべく小さなエネルギーで風を遠くへ送るために、羽根と同様にファンガードの形状も突き詰めた。小野さんは「多くのパターンを設計図に起こし、試しながら、最終的に現状のロング気流ファンガードが生まれました」と話している

 「扇風機の心臓部である羽根の形状は、各メーカーのこだわりが詰まっています。三菱の『SEASONS』も緻密な設計のもと、開発された羽根『エクストラウイングレットファン』を採用しています。これはウイングレット形状を取り入れた独自の7枚羽根で、DCモーターと組み合わせることで、圧倒的な低騒音化を実現しました」。

 ウイングレット形状とは聞き慣れない言葉だが、どういったものなのだろうか?

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